この子は、とっても元気で人懐っこいブルテリアちゃん。
病院では、注射などいろいろ嫌なことをされることも多いのに、人を信用している表情ですね!
ある日、この子の首のあたりに、強い炎症を伴う脱毛が起こってしまいました。
かゆみもあり、化膿もしていたので抗菌薬を処方したのですが、あまり効果がありません。
こういうパワフルな犬種は、あっという間にかき壊してしまうことがあるのですが、皮膚の検査をしてみると……
活発に動く犬ニキビダニがたくさんいました!
人間に寄生するニキビダニもおり、顔ダニとも呼ばれ、ほぼ100%の人にいるんだそうです。
人も犬も母親から皮膚の接触によって感染する…ということですが、なんだか不思議な存在ですね。
すべてに存在するのに病変を発症しないケースの方が多いのですから…。
局所的な免疫機能の低下により大発生するらしく、このような病変付近でニキビダニが検出されれば、駆除薬が効くことが多いです。
この子も一週間後には、だいぶ赤みがなくなって乾燥してきました!
しかし、ニキビダニ症は再発するケースもあり、この子も何回か再発しています。
昨日フィラリア予防のため久しぶりに来院されましたが、すっかりきれいになっています!
さて、この子は保護されたトイ・マンチェスター・テリアなのですが、顔周囲の毛が薄いですね。
活発で気が強い子も多いミニチュア・ピンシャーかと思っていたのですが、よく似た犬種であるトイ・マンで、とてもおだやかでいい子でした。
なぜ、こんないい子が捨てられてしまったのでしょう?
体は痩せており、全身的に毛が薄くフケも多い…まあ、みすぼらしい雰囲気でした。
炎症はあまりない感じなのに、毛が薄くなっているパターンは、このような犬種に多いですね。
こういう毛質の犬の皮膚病としてはひどい方だったので、注意深く皮膚の検査をしてみると…
先ほどの子よりも少ないですが、ニキビダニが検出されました。
これは治療して一ヵ月後の写真です。
少し脱毛が改善してきました!
これも同じ日の写真です――フケも減って、表情も明るくなってきました!
これは二ヵ月後の写真です。
黒い子って写真を撮るのが難しく、この写真ではわかりにくいのですが、さらに改善しています。
これも二ヵ月後の写真ですが、毛のツヤもよくなってきました!
その後再発することもなく、ニキビダニも一度しか検出されなかったので…もしかしたら?この子は漠然とステロイドを使い続けたため免疫が低下し発症していたのかも?と思いました(ニキビダニは、医原的に発症してしまうケースもあります)。
ボランティアさんと協力していると、このように慢性の皮膚病などでお金ばかりかかって治らないため捨てられてしまったのでは?と思われるケースが時々あります。
皮膚病に限らず、短期的には速効性があって飼い主受けのいい薬が、長期的には本質からずれ、このような弊害(時に寿命にさえ関わる)を生んでいることが少なくないのです。
ちなみにステロイドに関しては、なるべく使わない方がいい薬ですが、注意深く使うしかないケースもあり、「ステロイドを全肯定する人も全否定する人も信用できない」というのが私の現在の見解です。
(新型コロナにおいても使い方が難しいようで、「デキサメサゾンが効く」というエビデンスがあっても、軽症の段階で安易に使うべき薬ではないのです)
こういったことは、白黒はっきりしないので、なかなか伝わりませんが(速効性の奴隷となっている人には難しい)、ケースバイケースで非合理な事態にも対応するしかないのが臨床現場なのです。
時に誤解され効率が悪いのですが、ワンちゃんやネコちゃんのことを本質的に考えてくれる人たちのために少しでも伝えていきたいと思います。