山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

犬のニキビダニ症

2021-04-10 20:06:47 | 診療よもやま

この子は、とっても元気で人懐っこいブルテリアちゃん。

病院では、注射などいろいろ嫌なことをされることも多いのに、人を信用している表情ですね!

ある日、この子の首のあたりに、強い炎症を伴う脱毛が起こってしまいました。

かゆみもあり、化膿もしていたので抗菌薬を処方したのですが、あまり効果がありません。

こういうパワフルな犬種は、あっという間にかき壊してしまうことがあるのですが、皮膚の検査をしてみると……

活発に動く犬ニキビダニがたくさんいました!

人間に寄生するニキビダニもおり、顔ダニとも呼ばれ、ほぼ100%の人にいるんだそうです。

人も犬も母親から皮膚の接触によって感染する…ということですが、なんだか不思議な存在ですね。

すべてに存在するのに病変を発症しないケースの方が多いのですから…。

局所的な免疫機能の低下により大発生するらしく、このような病変付近でニキビダニが検出されれば、駆除薬が効くことが多いです。

この子も一週間後には、だいぶ赤みがなくなって乾燥してきました!

しかし、ニキビダニ症は再発するケースもあり、この子も何回か再発しています。

 

昨日フィラリア予防のため久しぶりに来院されましたが、すっかりきれいになっています!

 

さて、この子は保護されたトイ・マンチェスター・テリアなのですが、顔周囲の毛が薄いですね。

活発で気が強い子も多いミニチュア・ピンシャーかと思っていたのですが、よく似た犬種であるトイ・マンで、とてもおだやかでいい子でした。

 

なぜ、こんないい子が捨てられてしまったのでしょう?

体は痩せており、全身的に毛が薄くフケも多い…まあ、みすぼらしい雰囲気でした。

炎症はあまりない感じなのに、毛が薄くなっているパターンは、このような犬種に多いですね。

こういう毛質の犬の皮膚病としてはひどい方だったので、注意深く皮膚の検査をしてみると…

先ほどの子よりも少ないですが、ニキビダニが検出されました。

これは治療して一ヵ月後の写真です。

少し脱毛が改善してきました!

 

これも同じ日の写真です――フケも減って、表情も明るくなってきました!

 

これは二ヵ月後の写真です。

黒い子って写真を撮るのが難しく、この写真ではわかりにくいのですが、さらに改善しています。

これも二ヵ月後の写真ですが、毛のツヤもよくなってきました

その後再発することもなく、ニキビダニも一度しか検出されなかったので…もしかしたら?この子は漠然とステロイドを使い続けたため免疫が低下し発症していたのかも?と思いました(ニキビダニは、医原的に発症してしまうケースもあります)。

ボランティアさんと協力していると、このように慢性の皮膚病などでお金ばかりかかって治らないため捨てられてしまったのでは?と思われるケースが時々あります。

皮膚病に限らず、短期的には速効性があって飼い主受けのいい薬が、長期的には本質からずれ、このような弊害(時に寿命にさえ関わる)を生んでいることが少なくないのです。

ちなみにステロイドに関しては、なるべく使わない方がいい薬ですが、注意深く使うしかないケースもあり、「ステロイドを全肯定する人も全否定する人も信用できない」というのが私の現在の見解です。

(新型コロナにおいても使い方が難しいようで、「デキサメサゾンが効く」というエビデンスがあっても、軽症の段階で安易に使うべき薬ではないのです)

こういったことは、白黒はっきりしないので、なかなか伝わりませんが(速効性の奴隷となっている人には難しい)、ケースバイケースで非合理な事態にも対応するしかないのが臨床現場なのです。

時に誤解され効率が悪いのですが、ワンちゃんやネコちゃんのことを本質的に考えてくれる人たちのために少しでも伝えていきたいと思います。

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Flor

2021-04-05 19:48:17 | 音を楽しむ

フロール

春は風が強い日も多いですが、次々と草木が芽吹き、花が咲き始める季節です。

そんな季節に向けて最近発売されたのが、このアルバム…タイトルのFlor(フロール)とは、ポルトガル語でフラワー=花という意味なんですね。

ポルトガル語が公用語であるブラジルの音楽=ボサノバをテーマにしたジャズということなのでしょう。

ボサノバって、カフェなどでもよく流れているので聴きやすいんですが、デヴィッド・ボウイの曲やバッハの無伴奏チェロ組曲(マチネの終わりにでも触れました)までカヴァーする中で、それだけで終わらない、複雑な思いが込められているように感じます。

何せ、グレッチェン・パーラトが二人のお子さんを生んで、11年ぶりに出したアルバムですからね!

泥沼でもがき苦しむような日には響かないでしょうが、そんな中でも毎年どこかで花は咲いている…そういうことになるべく気づけたらいいのに…。

(この件に関連する以前のブログ記事→ねえ だっこしてリサ・ラーソン ショコラ→この記事のコメント欄をお読みください

 

詳しくは彼女へのインタビューを読んでみてください。 

Interview Gretchen Parlato『Flor』-花というテーマに込めた美しさ、生、死、目覚め、女性としての自分|柳樂光隆 Mitsutaka Nagira|note

以前、グレッチェン・パーラトの編集盤がリリースされたとき、僕は 「グレッチェンの声が聴こえるところに行けば、そこにはいつも新しいジャズが...

note(ノート)

 

フランク・ザッパ バントのベーシストだった父を持つ彼女は、ウェイン・ショーターやカマシ・ワシントンとも共演しているんですね。

話題のドラマ大豆田とわ子と三人の元夫でも彼女がフィーチャーされていたのでビックリしました(『大豆田とわ子と三人の元夫』の豪華すぎる音楽)!

なんと脚本の坂元裕二さんが作詞したAll the sameという意味深なタイトルの曲を歌っています…『カルテット』も面白かったけど、すごい方ですね!(両方とも超オススメです!)

 

さて、ついでに紹介するのは、ボサノバとソウルが絡み合ったこのアルバムです。

スターライト・ラウンジ

(こちら STARLITE-LOUNGE-BRIGETTEの方がジャケはいいのですが、日本盤のみのボーナス・トラックSometimesはレゲエ調でなかなかいい曲です!)

2005年に発売されたアルバムですが、これもブラック・ミュージックのべヴィさをボッサ・テイストがふんわりと包み込んでくれていて、バランスのいい傑作に仕上がっていると思います。

彼女の名前でネット検索しても動画などがヒットしなかったのですが(スペルが微妙に異なる名のミュージシャンがいて混乱!?)、彼女もライオンと格闘中なのか(このアルバムは彼女が結婚したばかりの時に出たんですよね)?何か知っている人がいたら教えてください!

共にしっとりした始まり方をするアルバムですが、暖かくなる、これからの季節のBGMにオススメです!!

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