山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

犬のノミアレルギー/ノミ・ダニ対策

2024-03-30 19:57:34 | 診療よもやま

暖冬とか言われて春気分でいたのに最近なぜか寒かったですね。

早く春らしくなってほしいと思うのですが、暖かくなってくると増えてくるのがノミとダニです。

犬に寄生するマダニなどは草むらに潜んでいて、体温、二酸化炭素、振動を感知して肢から這い上がり、口で排除されにくい首回りから上に吸いつくことが多いです。

草むらに行かなければつかないのでしょうが、散歩で草むらをクンクンするのが好きなワンちゃんが多いので難しいですね。

犬の場合、肉眼で明らかに確認できる大きさのダニがついて来院されるケースが多いのですが、上の写真はノミによるアレルギーの写真です。

犬の場合なぜか下半身を中心としたこのような脱毛となり、毛が薄くなっているためノミ――2~3mmの大きさで素早く動く――が見えたりします(猫はもっと複雑な脱毛パターン)。

これは他のワンちゃんのケースですが、同じような下半身脱毛ですね。

上の写真は慢性化したケースで、下の写真は早めに来院されたケースです(上は外で飼育、下は室内で飼育)。

こういうケースは都会ほど少なく地方ほど多い傾向なのでしょうが、地方でもそんなに多くないでしょうね。

なぜなら、その辺の草むらにたくさん潜むマダニなどと違い、ノミは猫を介して犬にも伝播していくことが多い…つまり外に出る猫を一緒に飼ったりしていなければあまりつくことはないのです。

CMなどの影響か?後肢で背中を搔いているとノミがいると勘違いして来院…というケースが多いですが、他の原因の方が多く、時々搔いていても皮膚病変がないのなら治療の必要はありません。

 

さて、ノミはどのようにある動物からある動物へ移っていくのか?

ピョ~ンと飛び移るイメージが強いですが、多くはそれよりもっとしたたかな形で増えていくのです。

例えばノミが100匹ついている犬や猫が来院して、病院で100匹パーフェクトに取れたとします(小さな子猫以外、実際には難しい)。

身体についているノミはいない…それでもお家に帰ってしばらくすると、なぜかまたノミがいるではありませんか!他の個体と全く接触していないのになぜ?

 

ノミ♀は一日最高50個(平均30個)も卵をみます                                         

        ↓

卵は犬や猫がいつもいる場所へ大量に落下

        ↓

卵から幼虫が孵化――ノミ成虫が吸血してできた糞や環境中の有機物を食べて成長

        ↓

サナギとなってその場所で潜伏

(条件によってはサナギのまま半年以上も生存可能、燻煙式の殺虫剤にも強い)

        ↓

犬や猫がその場所に来た時、体温、二酸化炭素、振動を感知するとサナギから羽化して体に寄生

 

…というライフサイクルで、一度ノミが寄生すると、いつも犬や猫がくつろいでいる場所には、肉眼では一見確認しにくい幼虫、サナギがたくさん潜んでいるのです。

特に直射日光や雨が当たらず、ノミの最盛期である夏場涼めるような場所にノミのパラダイスがあったりします。

ガレージや納屋、家の軒下にもぐり込めるような形であると、定期的にノラちゃんが涼みに来てノミ卵を落としている可能性が高いのです。

ノラ猫との直接の接触はなくても、サナギが潜んでいるそのような場所にワンちゃんが涼むために入って寝転がるとノミが寄生してしまうのです。

 

以上のことから、猫はいろんな所にもぐり込むのが得意なので、外に出している限りノミの根絶が難しく、犬の場合、時々でもガレージなどに寝転がるような環境か外猫と同じ部屋にいない限りノミが寄生することは少ないのです。

対策としては、室内であれば、いつも犬や猫がいて直射日光が当たらない場所を中心に掃除して下に潜んでいるノミの卵、幼虫、サナギを物理的に取り除くことです。

丁寧に掃除機をかけ、洗える敷物は洗って天日干しし、カーペットなどは何度もコロコロをかけるかスチームアイロンをかける(35℃以上でサナギ死亡)と良いでしょう。

時にトリミングの後からノミがついてしまったというケースがあったりもするので、トリマーさんはトリミング・ルームの下などを卵、幼虫、サナギをしっかり取る意識を持って掃除して下さい。

掃除が不完全でサナギが残っていればノミがついてしまうので、カットが終わった後などトリミング・ルームの下に犬を放さない方がいいと思います。

 

最後にノミダニの予防薬なのですが、なかなか難しい時代で、新しい予防薬ほどある意味キレは良いが高価で時に予期せぬ副作用があるという傾向なのです。

つい最近も当院では推奨していない予防薬を与えると、活発な大型犬なのに元気がなくなるし、食べるのも嫌がるという方が来院されました。

リスクを説明しても「CMでやってる予防薬を…」と言うので取り寄せたのに、明らかに元気がなくなって当院推奨の予防薬に戻したケースもあります。予防薬を飲ませてから神経症状が出て障害が残ってしまったり、ごくまれなのかもしれませんが、亡くなってしまった例もあります。

医療現場では「様々な論文により有効性や安全性は証明されている」と言われる薬を良かれと思って処方したのに、体を害する、まれではあるが亡くなってしまうケースもあります――それはそもそも老化や重い病によって絶えつつある命だったのか、科学の暴走を防ぐための受け入れがたき不合理なのか?

ある一面では明確な即効性を発揮するが、まれに重い副作用が起こる…また延命はできるけれど驚くほど高価な薬(長いが必読→ゾルゲンスマという薬は一回の投与で日本では1億6700万円!さらに薬価4億円超 世界一高額の新薬、米FDAが承認)…そんな傾向は、医学の進歩と共に強くなってしまうのでしょうか。

医療だけでなく、原発・エコカーなどエネルギー問題、人種や民族紛争などの政治問題もネットのせいで正邪ごちゃまぜとなり、世界的に舵取りが難しい時代だと思います。

メリットがデメリットを上回るのなら正当化される(個体差あり)のでしょうが、ノミダニ予防薬を与えると元気がなくなったりするなどは当院にご相談下さい。


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