山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

ねえ だっこして

2025-02-25 07:12:03 | 絵本&幼き心

 

 今回紹介するのは、動物病院で働いていると時々向き合わなければならない、やるせない悲しみがテーマとなっているこの絵本です(以前書いたものを再掲載―この絵本は全国の動物病院に置いておく必要があると思います)。

これもまた難しい問題で、お子さんがしばらくの間生まれなかった夫婦ほど?ワンちゃんやネコちゃんを愛情深く飼っていたりするのです。

 愛情深く飼われていた子ほど、前回(  感情という心のモノサシ )書いた愛情に関する標準感覚ラインは高いレベルに設定されています。

いくら愛情深い夫婦でも、出産すれば人間優先になってしまうでしょう。それは仕方のないことなのですが、今までの愛情が深いものであったならあったほど、突然の変化に心理的落差を感じてしまうのです。

これは弟や妹が生まれた時も同じで、先に生まれ王子様やお姫様のような扱いを受けていた子ほど、その落差を受け入れられず親を困らせる何かを起こしてしまうのでしょう。

 愛情とは難しいですね?しっかりと与えつつも与え過ぎないようにしないと……矛盾してますね? でも…人それぞれの葛藤の中にこそ意味があるのだとしたら?

 

 私の知り合いで幼い頃、毎日お兄さんにいじめられていた人がいました……

その人の話によると、お兄さんは赤ちゃんの時から育てやすい子で、そのお母さんは「子どもを育てるのなんて簡単だから、早く生んじゃった方がいいわよ!」などと楽天的に言っていたそうです。

でも、弟であるその人は生まれた直後から何か様子がおかしく、何か苦しさを訴えかけるような声で泣いていたようなのです。

お母さんの話では、新生児黄疸がひどかったらしく、生まれた産院から別の病院へ運ばれ、輸血して命を取り留めた?とのことでした。

どのくらい重症だったのか?はわかりませんが、生まれたばかりの我が子が死にかけたという思いは、過剰な保護に向かうには十分なのでしょう。

 一方、お兄さんは手がかからない子というレッテルをはられていることもあって、さみしい思いを抱いていても「お兄ちゃんはしっかりしているから大丈夫よね」と思われてしまう傾向があったと考えられます。

こうして幼かったお兄さんの言葉にできない悲しみは、納得できない怒りとなって沸騰し、弟に対する様々ないじめに形を変えていったのでしょう。

 

 動物でも人間でも、甘えたい気持ちが強くても一見そのように見えず、悶々とストレスをため込んでしまう損なキャラの子がいることを覚えておいてほしいのです。

「大丈夫だよ…」と言いつつ、ひそかに?この絵本の表紙に描かれているネコのような悲しい瞳をしている子もいると思います。

これがとてもよく描かれているのです!不思議なことにアマゾンの画像からではイマイチそれが伝わらないので、実物を手に取って見ることをオススメします。

 

 難しい問題ですが、もしかすると?凄惨ないじめ事件などの背後にも、抑制がきかなくなるほど納得できない思い、どこに矛先を向ければいいのかさえわからない混乱から生じる怒りがあり、その前には言葉にできない悲しさを物語る瞳があったのかもしれません。

その方は、お兄さんを強く憎んでいた時期もあったようです。でも、お母さんの過剰傾向な保護のせいか?体も弱かったので、そのままではただのマザコンになっていたかもしれず、毎日ケンカの実戦で鍛えられていたおかげで精神的にも体力的にも強くなり、学校ではいじめっ子にも負けないくらいになれたように思うと言っていました。

このように長い目で見ると──特に相反する刺激のバランスが良ければ──表面的に悪いことが、良いことに変化しうるのでしょう。今ではお兄さんにとても感謝しているそうですよ!

 

 ワンちゃんやネコちゃんの話に戻ります……愛情深く室内で飼われ、毛のツヤも良かったややポッチャリ系のワンちゃんやネコちゃんが、お子さんが生まれた途端、室外に閉め出されパサパサ毛や毛玉だらけとなってガリガリに痩せて来院…というような悲しいケースをこれまで何度か経験しています。

まだまだ、というか?これからもネットやテレビの世界では主流派であろう唯一の正しい真理みたいなものに支配され過ぎている人ほど、このような全か無か!という極端な対応をしてしまうのでしょうか。

突然一つだったものが二つになり、どちらか一つしか選べないように感じられる時が来るのでしょう。

 でもそんな時ほど、わかりやすい白黒だけの世界にとらわれないで、複雑ではあってもどちらか一方だけを極端に排除しない道もあることに気付いてほしいのです(具体的なことは当院にご相談下さい──どうしようもない時は、ストレスを緩和する作用のある漢方薬などもあります)。

より幼い命が優先になるのは当然だとしても、少しでもいいから…しっかりと愛情をそそぐことを忘れないで下さいね。

それには、この絵本で表現されているようにダンナさんなどの協力が必要なのでしょう。

 えっ!そう言うおまえは協力してるのか?ですって!?

いや、それは…その…なんと言いましょうか…最近仕事とブログの更新で忙しくって……スミマセン……反省して妻と協力し、細々と更新することにします。

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60秒のきせき/子ネコがつくったピアノ曲

2019-03-12 07:31:03 | 絵本&幼き心

動物も植物も活発になり、新たな命が続々と誕生する気配を感じますね。

デジタル化した喧噪の中では、そんな気配さえかき消されてしまいそうですが、耳をすませば、どこからか、小さく悲しげな鳴き声が聞こえてくる……(そろそろ多くなりそうな季節になりました)

 

今回紹介する絵本は、そうぞうしい街の中で、耳に聞こえてくる音、心に響く音に耳をかたむけていた作曲家と子猫のお話です。

なんと実話をもとに作られており、モデルとなった猫ちゃんが作った?曲入りCDもあるのです!(→Don't Panic 60 Seconds for Piano

 

piece for paws

Provided to YouTube by The Orchard Enterprisespiece for paws · Guy Livingston · Ketzel CotelDon't Panic! 60 Seconds for Piano℗ 2001 Wergo, a division of Scho...

YouTube

 

ちょっとあやしい雰囲気を漂わせつつ、最後には子猫のかわいらしさを感じますね。

ちなみにモデルとなった猫ちゃんのお気に入りはバッハだそうです(こちらもどうぞ→マチネの終わりに)。

 

ピアノを弾いているときの子猫の反応などが生き生きと描かれていて、ちょっとした仕草や表情も猫好きにはたまらないと思います。

突然、机の上に飛び乗ってきてノートなどをクシャッとされたりもしますが、心が煮詰まってしまったとき、猫はふわふわの温もりで包んでくれたり、思わぬヒントを与えてくれたりする不思議な生き物!…ということですね。

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絵本のひきだし/林明子原画展

2018-07-24 19:26:52 | 絵本&幼き心

 

こんとあき (日本傑作絵本シリーズ)
林明子
福音館書店

昨日知ったのですが、なんと!松屋銀座にて林明子さんの原画展を開催中とのこと!!

→ 絵本のひきだし 林明子原画展

前に紹介したのですが(こねこのみつけたクリスマス)、私は絵本の中で林さんの絵が一番好きなのです!!

 

松屋銀座では時々絵本の原画展をやっているようで、偶然ながら何度か見たことがあります。

中でも『はらぺこあおむし』で有名なエリック・カールさんの原画の鮮やかさには驚きました!!

薄いプラスチックみたいな素材にザッと――作為に走り過ぎない感じで――色を塗り、それを切り貼りして作られた絵なので、パッと見ただけでは魅力がわからない人がいるでしょう。

 

でも、原画はもっとツヤがあって鮮やかで不思議なパワーがあるのです。

 

だんまりこおろぎ―虫の音がきこえる本 (ボードブック)
クリエーター情報なし
偕成社

中でも、この『だんまりこおろぎ』の1ページ目の太陽の鮮やかさは忘れられません(売っている絵本とぜんぜん違う)!!

良さがわからまま偶然行ったので、なおさら驚きました(あまり期待しないで行ったほうがいいのかも?)!

 

残念ながら今回は見に行けないのですが、林さんのタッチや色使いはいつか絶対見てみたいな~!

千葉でもやってくれませんかね?

とん ことり (こどものとも傑作集)
林明子
福音館書店

『とんことり』の最後の方のページの笑顔や『こんとあき』の電車に揺られながら歩くシーンなど、とってもかわいらしいんですよね――まだ見たことのない人もぜひどうぞ(7月29日までです)!!

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もぐらのムックリ

2017-04-16 12:42:03 | 絵本&幼き心
もぐらのムックリ
 
ひさかたチャイルド

今年の春は気温の変化がはげしく、何か変でしたね? 

でも、春らしく頑張っている植物もいるので、春向きの絵本を紹介します(予約受付中になっていたですが、中古のみのようです)

春をつげる植物や生き物たちがいろいろと登場するので、春を学ぶにはもってこいの一冊だと思います。

この絵本には、ムックリが歌いながら穴を掘り進むシーンがあるのですが、水曜日のカンパネラの「ドラキュラ」のサビ部分の曲調にして、最後に「ぼくはムックリ~」と歌い出しのフレーズをたして歌ってみたらピッタリでした(子どもに大ウケでしたが、マジメ過ぎる人向きではない曲?)!

字もあまり多くないので、小さいお子さんにもオススメですよ!

 

そういえば、以前子どもと散歩中、側溝に落下してしまったもぐらを見つけたことがあるのです。

もぐらは右往左往しながら、必死に上に登ろうとしていました。

でも、手も足も短いのでジャンプ力もなく、ほとんど登れないのです。

私は虫取り網を持っていたので、苦労の末、逃げ回るもぐらをすくい上げました。

よしつかまえた!写真を撮ったら逃がしてやろう…と思いながら、網の中をのぞき込むと……

 

あれ!?もぐらがいない?どこへいったんだ??

 

もぐらは瞬く間に網に穴をあけ、側溝と道路の間の地面へ――そこはゴツゴツとした石が多く、スコップでも容易には掘れないような場所でした。

しかし、もぐらは楽々とその硬い地面にもぐっていき、5秒くらいで土の中へ消えていったのです!

 

これにはかなりびっくりしました!もぐらの穴掘りパワーって実際に見ると驚異的ですよ!!

 

ちなみにウチのスタッフも、畑でもぐらを見つけ、網を上からかぶせたことがあるそうです。

その時も「つかまえたぞ!」と思ってのぞき込んでみたら……何もいない?あれ?

 

当然、下が畑なので…私が目撃した時よりも速く土の中へ消えていったそうです。

 

ついでに、春らしい写真を!――この桜はスザクと書いてありました。 

 

今年は、ツクシたちも出てきていいのか困惑気味のようでした。

タケノコも不作みたいですね。

 

スミレはたくさん生えていました! かわいらしいですね!

 

この桜はマツマエハヤザキだったと思います――ムックリに出てくる桜に似てるような?

天気はビミョーでしたが、見方を変えると、今年は長く桜を見れたような気もしますね。

桜ついでに、こんなネコちゃんたちもいました! 

楽しそうに散歩しているワンちゃんにも、たくさん出会いました! 

私がもぐらをすくい上げたのは、この写真に似た場所でしたが、幅は半分以下で、もっとゴツゴツした石が多く、植物もほとんど生えていませんでした。

夕日を浴びたタンポポは、とってもきれいですね!

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こねこのみつけたクリスマス

2016-12-17 19:37:15 | 絵本&幼き心
こねこのみつけたクリスマス
 
ほるぷ出版

もうすぐクリスマスなので、プレゼントにちょうどいい絵本を紹介します。

まずは動物病院らしく、ネコちゃんが主人公のこの絵本です――昔飼っていたネコがこの主人公の子と同じような毛色だったので本屋さんで見つけ即購入しました!

絵がすばらしく、表紙の絵なんて毛の一本一本から瞳の輝き、鼻の表面まで驚くほどリアルに描かれています。

「するする!こういう顔!こういうしぐさ!」とネコちゃんを飼っている人なら思わず微笑んでしまう絵がたくさん描かれており、絵を描いたアン・モーティマーさんもかなりのネコ好きであることに間違いなさそうです。

字がやや多めなのであまり小さな子向きではないかもしれませんが、ネコ好きにはとってもオススメですよ!!

 

小さい子へのオススメは、ご存じの方も多いと思われるこの小さな3冊セット!

クリスマスの三つのおくりもの 全3冊 (日本傑作絵本シリーズ)
林明子

福音館書店

一冊の中でウサギちゃんが出てきます。それなりにたくさんの絵本を読んだと思いますが、中でも林明子さんの絵は最高峰レベルで好きなのです。

顔の表情もかわいらしいし、子どもならではの動きもユーモアたっぷりに表現されています。男には描けないふんわりした優しさと温もりを感じる絵だと思います!!

林さんは『こねこのみつけたクリスマス』の原作者マーガレット・ワイズ・ブラウン作の絵本『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』の絵も描いているんですね。

この組み合わせでブログに書いてみようと調べていたら、その事実を発見!――うれしい偶然でした(未読)!

クリスマスの絵本は他にもいくつか持っているのですが、林さんのこの3冊はストーリー的にも一番好きですね。

けっこう定番なのかもしれませんが、大きく派手な本ばかりに目がいき、小さくて気づかない人もいたりして?

小さな3冊セットなので見つけにくいかもしれませんが、この季節なら本屋さんでも売っていると思います!

まだ読んだことのない方は、ぜひ読んでみて下さい!

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