Fantôme | |
宇多田ヒカル | |
Universal Music =music= |
いいですね~このアルバム…いろんな意味ですばらしいサウンド!!
参加ミュージシャンは誰だろう?とチェックしてみたら…この中の5曲でドラムを叩いているのは何と!ミシェル・ンデゲオチェロの『Comet,Come To Me』に参加していたシルヴェスター・アール・ハーヴィンではないですか!!
宇多田さんは、マックスウェルも好きだったはずなので、勝手にシンパシーを感じてはいたのですが…いや~いいドラマー使いますね!
この驚きを深く強くしてくれる、ちょっとした思い出が私にはあるのです。
ずいぶん前の話ですが…R&B系ミュージシャンであるジョーのライブに行った時、ライブ途中でなぜかジョーが「あの曲いい曲だよね~俺も大好きなんだよね~!どういうフレーズだったけ?」みたいな感じで語り始めたのです。
そして、宇多田さんの名曲First Loveのサビを歌い出し、観客にも歌うように促しました。
「なんのこっちゃ??」と私を含めた観客は最初、戸惑っていました。
私たちは歌いながら「まさか…?」という期待を抱き始め、しだいそれが大きくなっていきました…しかし出てきたのは別の女性…その女性が歌った後もみんなで歌い続け、さらにしばらくすると……
とうとう宇多田ヒカルさんがステージに登場し、ほんの少しだけ歌ってくれたのです!!──場内は大興奮!この夜一番ホットになった瞬間でした!!
正直言ってジョーのライブ自体は、連れてきたバンドもあれれ?な感じで…別の日に行った知り合いなんて途中退場してしまったくらいだったんですけどね。
宇多田さん自身は、風呂上がりにサンダルで来たみたいな格好だったことをお父上にからかわれたそうなので、かなりの想定外のムチャ振りだったようです(当時のHikki'sブログ)。
でも当時はHikki発と言える空前のR&Bブームだったので、そこにいた私たちには今でも胸を熱くしてくれる素敵な思い出となっています!
(見ないと思うけど)宇多田ヒカルさん、ありがとうございます!!
ちなみにジョーのオススメなアルバムは、スキンヘッドで日本人受けが悪そうなのでジャケット写真が下のものに差し替えられた?この出世作ですかね(ニューアルバムが出たばかりのようですが、近年のアルバムは未聴)。
All That I Am | |
Joe | |
Jive |
オール・ザット・アイ・アム | |
ジョー | |
エイベックス・トラックス |
ラブ・バラード中心のR&Bですが、ゴスペルをルーツに持ったいい声してます!
見た目だけで却下しないで、聴いてみて下さい!!
宇多田さんの『Fantôme』に話を戻しますが、まず私の心を捉えたのは、男と女の狭間で混乱している人の気持ちを歌った「ともだち」という曲……NHKの番組にて、意表を突く感じでリズミカルに入ってくるホーンセクションを耳にし、思わず「おおっ!」と声が出てしまいました。
リズム・ギターやその他のリズム楽器の使い方もカッコイイですね!
タンバリンやマラカスなどのリズム楽器ってシンプルだけど…いくらリズムを複雑にしても平面的になりがちなプログラム音みたいなものに比べ、なんだか曲を生き生きさせてくれる感じがします(Atoms For Peaceもそうでしたね)。
この曲のコーラスで参加している小袋成彬さんは、水曜日のカンパネラに楽曲提供もしているんですね──これからのさらなる活躍が楽しみです(小袋さんのサイト)!!
そう言えば、マジメにアホなことをやってる水曜日のカンパネラのコムアイさんは(ウチの子が「ドラキュラ」にハマっている!?)、ディアンジェロとか聴くんですね。
ちなみに宇多田さんも1歳のお子さんと一緒にディアンジェロやクラシック音楽など(すごい組み合わせ!)を聴いてるそうです──おそらくマックスウェルも聴いてますよ!
グラミーを受賞したディアンジェロの近作などは、慣れない方にはちとヘヴィーかと思われますので…最初に聴くオススメは、このデビュー・アルバムですかね?
ブラウン・シュガー | |
ディアンジェロ | |
ユニバーサル ミュージック |
ディアンジェロのルーツもゴスペルで(共に親が牧師)、HipHop的感覚もあるサウンドですが、いわゆるラップではなく、それっぽい所も歌とのビミョーなラインを行き来する感じがします
憂いを感じさせる歌声は、ファルセットも含めてとても魅力的です!!
マッチョで危険な気配も漂うアーティストですが、肝っ玉母さん系のアンジー・ストーンに食べられちゃったくらいですから…けっこうオキシトシン・プアで、繊細かつ真面目なのでは?
期待されればこそ!とも言えるのでしょうが、出来上がってしまった虚像に苦悩しているアーティストも多い気がします。
ジャズ・ギタリストのマーク・ホイットフィールドやフュージョン系?ベーシストのウィル・リーなどが参加していて、Jazzyな曲もあるのですが、そういったお洒落な雰囲気だけで終わらないブラック・ミュージックの深みが感じられるアルバムだと思います。
またまた話しを戻しますが、幅広い世代に響きそうなトーンで歌われる「花束を君に」は、親しい人を亡くした身に沁み入る名曲ですね。
「道」や「真夏の通り雨」、よく聴いてみると…波打つような2つのドラムにハープの調べがきらめく「人魚」もお母さんへの思いなくして生まれ得なかったように感じます。
これらの曲を聴いていると…亡きものとの思い出がオートマティックに浮かび上がり、ふとした瞬間…そこにいつもいることを気づかせてくれる……そんな気がしました。
なるべくなら回避したいけれど、いつかは必ず訪れてしまう親しいものの死……私も今年は、いくつかの悲しい別れがあったので…そのただ中にいる人への気安い言葉など浮かびません。
宇多田さんのお母さんレベルとなると、一般的な感覚では計り知れぬ所なのですが…くっついたり、はなれたり…誰の母も父も他人には語り得ぬ混乱を抱えている……だからこそ、そんな不完全なものたちの暗がりに、光の音が強く差し込んでゆくのでしょう。
このアルバム…勝手ながら歌詞も当ブロク向きで、他にもいい曲ばかり!!
いろいろと引用したい所なのですが、最後に一カ所だけ……
毎日の人知れぬ苦労や淋しみもなく
ただ楽しいことばかりだったなら
愛なんて知らずに済んだのにな
「花束を君に」より