山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

猫の咬傷~膿瘍

2022-02-08 19:30:32 | 診療よもやま

この猫ちゃん…外にも出ている子なのですが、何か元気がなく歩き方がおかしいので来院しました。

痛みがあるようで、触診すると場所によってはシャーと怒ったりします。

痛そうな所を注意深くチェックすると…毛が小さく固まった所をいくつか発見!

その周辺の毛をバリカンで刈ってみると……

咬まれた傷が出てきました!

咬まれたり引っかかれたりした傷の多くは、点のように小さいのです。

しかし、小さくても深い傷であると、口腔内や爪に潜む細菌を皮下に注射されたのと同じようになってしまい……

膿(細菌と戦って崩壊した白血球)が皮膚の下に溜まって、このように腫れてしまうのです。

猫は毛が細く柔らかいため、傷ができると、すぐにそこから出た血や漿液をまとった毛のカサブタができて蓋をされ、細菌が密閉されやすいんですよね。

この状態であると発熱するので、たいていの子は食欲がなくなります。

こういう場合、穴をあけて膿を出す処置をしないと熱は下がりません。

排膿処置をしないと、どんどん増える膿の圧力によって皮下の血流が失われ、壊死していきます。

上の写真の皮膚が黒くなっている所は、壊死してしまっています。

これをさらに放置すると、壊死した皮膚はとうとう破裂し、膿が流れ出てきます。

場所によっては腫れていることがわかりにくく、かなり壊死していても表面的に生えた毛によって一見わからないことが多いので気をつけてください(この写真は毛を刈ってあります)!

これを防ぐためには、小さな毛のかたまりの下にあったりする点のような傷を見つけ、なるべく早く消毒&抗菌薬を投与する必要があります。

年末から2月上旬は発情している猫が多く、春に向けて恋を巡るバトルも増えます。

外猫ちゃんのバトルの声が響いた後などに、歩き方が何かおかしいとか、熱っぽく食欲が落ちている時は、なるべく早く信頼できる動物病院へ行きましょう!

早ければ早いほど皮膚の壊死は防げるので、小さい傷だからと放置しないでください(壊死が広範囲であるほど、高額の治療費がかかります)!!

(追記)

…と書いていたら、室内のみでも複数飼育で咬まれてしまった子が来院しました。

こういうことは外猫よりかなり少ないのですが、これはけっこうひどく、膿が出ています。

毛を剃ってみると、こんな感じです。

大きな傷だったおかげで早めに排膿され(一部壊死)、あまり発熱せず食欲もありました。

室内のみでも、複数飼育の時は同様に気をつけてください!!


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