本日から大型連休、
我が家は、予定もあるにはあるが、基本は自宅でのんびり。
図書館から予約していた本も、どっさり借りられた。
その中に、
ローラン・ビネ『文明交錯』(東京創元社)がある。(冒頭画像)
楽しみにしていたくせに、妙に緊張してしまう。
それは、ビネが『HHhH──プラハ、1942年』の著者だから。
「ナチス第三の男」のタイトルで、映画化されているので
ご存知の方も多いだろう。
気軽に読み流せる小説ではないが、
「常に事実とフィクションについて考え続ける」(版元HPより)世界に
すっかり魅了された。
旅の候補地として、夫がプラハを挙げたとき、
この小説の舞台を訪ねることを条件に、賛成したほどだ。
語弊を恐れずに言うなら、わたしはダークツーリズム好きだ。
「
ダークツーリズム」とは戦争や迫害の歴史など「負の遺産」を
旅することをいう。
大病し、思いがけず進んでいたステージや、
辛い治療の末、元気になれたことから、
負の遺産に惹かれるようになった。
サバイバーの勝手な使命感とでも言おうか。
だからといって、平和や人権運動に奔走するわけではない。
ただ旅するだけなのだが・・・
それでも、いつしか、「旅に慣れた」というか、
わたしはダークツーリズムも、きちんと受け止められる、
と言う妙な自負が自分の中に育っていた。
そんな私の自負、自信が、見事に壊されたのが
『『HHhH──プラハ、1942年』の舞台となった場所だ。
歴史好き、旅好き、ダークツーリズム好きを自称する
わたしのターニングポイントのひとつと言って良い。
ローラン・ビネの新刊を読むにあたり、
古い画像を見てみたら、旅をしたのは2016年の大型連休中だった。
まさに今週のこと!
今、画像を見ても、正直、胸が苦しくなる。
歴史に関わる旅をまとめる拙ブログ、
それも最近ではダークツーリズム系が多くなっている。
自戒を込めて、あの日の記憶を、まとめておきたいと思う。
以下、本家ブログの記事に、一部、加筆修正したものを
アップする。
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ダークな歴史も、きちんと受け止めよう・・・
夫と出かける旅行でも、ダークポイントを入れることが増えたのは、
そんなダークツーリズム好き?の自負があったからです・・・
ところがっ!
全然ダメだったんです。
ダークな歴史を受け止められる器量なんて、私にはありませんでした。
それを、プラハの旅で思い知らされました。
聖ツィリル・メトデイ正教大聖堂 ・・・
第二次世界大戦下1942年、ナチスの将校・ラインハルト・ハイドリヒを
暗殺した愛国者が立てこもっていた場所です。
そこへ要人を暗殺され、怒りに狂ったナチスが攻め寄せて・・・
激しい銃撃戦となり、最後は通りからホースで水攻め。
愛国者は自決。
国家の英雄として、今もチェコ国内で讃えられ、
教会には博物館もあります。
(画像にあるように、遠足や修学旅行などで、学生は必ず見学するとか。)
数年前、ここを訪ね、博物館の奥にある礼拝堂、すなわち、
愛国者が自決したその部屋への重い扉を開けた瞬間のこと。
「ここはダメ、イヤイヤ!」
わたしはそう叫んで、ダークツーリズムのなかで、
初めて進むことを拒んでしまいました。
すると、渋々ながら、私に付き合ってくれていた夫が、
「ぴあ野のために来たんだろ!」と一喝。
泣く泣く見学したものの・・・
あの衝撃は、今思い出しても、心臓がバクバクします。
地下の礼拝堂は、閉じられた空間で、
あのときの空気がよどんでいる・・
当時のままのような気がしたのです。
(ローラン・ビネ『HHhHープラハ1942年 』<東京創元社>に詳しいです)
このとき、目が覚めました。
ーー全然、ダメじゃん、自分。
歴史のダークな部分を、しっかり受け止める?鎮魂?
何をうぬぼれていたんだろう???
おちこみました。
でも、その後は
・・・だからこそ、いっそう謙虚に、負の遺産と向き合わなければ・・・
と、考えるようになっています。
その一方で、なぜ、こんなに辛いのに、ムキになるんだろう?と
呆れる気持ちもあるのです。
(実際、気分が悪くなることも、しょっちゅう)
勝手に、サバイバーの使命感を抱いちゃっている感じ?
う~ん。
ーーー後略ーー
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本日・追記
今も「なんで来ちゃったかなぁ」と後悔することも、しばしば。
それでも、ダークツーリズムも含め、歴史にまつわる旅は止められない。
やっぱり、知らないことを知るのは、楽しいからです。
たぶん、これからも、自問自答を繰り返しながら、ダークツーリズムも
続けていくのでしょう。
旅できる健康と幸せをかみしめながら。
なお、本日の画像は、プラハの聖ツィリル・メトデイ正教大聖堂 と、
その界隈で2016年春に撮影しました。
また歴史には素人のことゆえ、間違いや勘違いはお許し下さいませ。
おつきあいいただき、どうもありがとうございました。