3月1日にデミオを引き取り、2日に修理工場へとんぼ返りしてしまったデミオ。
それまでは、保険で代車の手続きをし、しばらく代車スイフトに乗っていた。
ただ、3月中にはデミオの廃車手続きをしないと、税金がかかる。
仕事を早退し、役場に行って印鑑証明を申請し、修理工場に。
ほぼ、書類は工場の方で準備してもらっているので、あとは私の印鑑証明や直筆での記載が必要だった。
「力になれず、申し訳ありませんでした」
奥様が頭を下げられた。
「いえいえ、そんな・・・。こっちもずっと代車を借りっぱなしで・・。申し訳なかったです。お世話になりました」
結局、デミオはいつ止まるのか・・・ということで、渡すのをためらわれたらしい。
修理も不可に近い状態だし、これだけの走行距離なら、仮に走れるようになったとしても、今度は別の個所が壊れるだろう。
もう、老衰という状態なのだ。
誰が悪いわけでもない。
展示車だったデミオは、新古車という扱いになるので、ほぼ新車にも関わらず、お得な値段で購入した。
娘が生まれる前からあるこのデミオは、子育てとともにあった。
人気車種だったので、当時はこのモデルのデミオをたくさん見かけたのだが、もう15年近く走っているとさすがに見かけることも少なくなった。
車内の荷物を引き上げ、そっと車体を撫でた。
19歳の時に車の免許を取ったが、一番長く乗った車がデミオだった。
私が乗る分には本当にぴったりで、よきパートナーだった。
そして、最後まで誰の手にも渡らずに、車としての寿命を全うした。
「ありがとうね。本当にありがとうね・・・」
写真を撮って、工場をあとにした。
デミオを手放したことに悔いはない。
あれだけ乗ったし、もうこれ以上を求めるのは無理だ。
気持ちにけりもついているのだが、涙が止まらなかった。
私は、デミオを手放したことで、免許を取ってから、いや、物心ついてから乗っていた「自分の愛車」を、初めてなくすことになる。
本当に、本当にありがとう。
デミオ、いい車だったよ・・・・。