りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

キャシーの森 ―全7場―3 完結編

2011年07月17日 23時59分19秒 | 脚本

  
       「わいのこと忘れてへんか~」蜘蛛さん。
       熱演のあまり、髪が乱れております・・・。



  キャシー「・・・いらない・・・」
  大木の精「・・・ん?」
  キャシー「石なんていらないわ!!」
  大木の精「なんだと!?」
  キャシー「・・・いらないって言ってるのよ・・・!!」
  大木の精「石がなければ、家には帰れないんだぞ!!」
  キャシー「家に帰れなくてもいいわ・・・!!」
  大木の精「家族に会いたくないのか!!」
  キャシー「その代わりクルトを助けて!!」
  大木の精「何・・・?」
  キャシー「クルトを返して!!初めてできた友達なの・・・。
        私のことなのに、自分のことのように喜んだり、
        力になってくれたり・・・。そんな友達はクルトが
        初めてなの!!」

      キャシー歌う。

      “初めてなの 友達なの
       心から思える
       そんな出会いは
       返して お願い
       願いを叶える石
       そんなのいらない
       クルトがいつも側にいれば・・・”

      (音楽変わる。) 

  大木の精(長老)「よく言ったキャシー!!おまえがいつ、
             そう言い出すのか、私は待っていたよ
             ・・・。」
  キャシー「え・・・?」
  長老「おまえが思い遣りの心を持たないまま、5つの石
      を集めたところで、おまえの願いが叶うことは
      なかっただろう・・・。」
  キャシー「長老・・・?」
  長老「(頷く。)おまえが本当に大切な心をなくしたまま
      では、いつまでも何の意味も持たないただの
      石ころだったのだ・・・。(キャシーの方へ、石を
      差し出す。)見てごらん・・・」
  キャシー「(全ての石を取り出し見る。)・・・キラキラ輝い
        てるわ・・・さっきまで、ただのその辺に転がって
        いる石ころだったのに・・・今はどんな宝石よりも
        輝いてる!!」
 
      長老歌う。

      “さぁ 今こそ願いを叶える
       何もかも思いは叶うだろう”

  長老「返してやろう・・・クルトの命・・・帰してやろう・・・大切
      な者のところへ・・・!!」
  キャシー「長老・・・」

      長老歌う。

     “今こそ思いは全て叶う”

      クルト起き上がる。

  キャシー「クルト!!」

  ――――― 7 場 ―――――

  クルト「ありがとうキャシー!!」
  キャシー「ううん、私の方こそありがとう!!」
  クルト「何もかもキャシーのお陰だよ・・・。願いを叶える石
      の、意味が分かって良かったね!」
  
  パパの声(エコー)「キャシー・・・」

  キャシー「パパ・・・?」

      音楽流れる。2人歌う。

  クルト「キャシー・・・お別れの時がきたね・・・」
  キャシー「クルト・・・(泣く。)」
  クルト「泣かないでキャシー!僕達は、全て君の心が作り
      出した、君の想像物だ・・・。だから会いたくなったら、
      いつでも会えるよ・・・君の心の中で!!」
  キャシー「(頷く。)さよなら、クルト!!」
  クルト「さよなら、キャシー!!」

      “また会おう 2人で
       思い出溢れる この森の中で”

      
 
            キャシーとクルト。(お別れ。)


            (音楽盛り上がり。)

        ――――― 幕 ―――――




“キャシーの森”




      “キャシーの森”は、それまで大人向けの作品
      ばかり書いてた私が、初めてファミリーミュージカル
      脚本の依頼を受けて書き上げた作品です。
      それ以来、“子ども向け”にどっぷりとハマりこんで
      現在に至ります。
      
      それでは、ここで次回作品の予告を・・・
      次回は、今年の1月に、小学校で初の3回公演に
      挑戦した作品を、掲載予定です。
      2回は経験あったんですけどね~・・・3回は流石
      に腕がパンパンでした。下の写真は、その作品の
      中に登場する“カマキリさん”の、販売用マスコット
      です。

                
                   カマキリのジョー




        (もし、掲載作品を使用したいと言われる方が
         いらっしゃいましたら、連絡だけお願いします。)


                             どら。


          



  ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 
 
   

      
     (前列左より)クルト・キャシー・大地の精
      (後列左より)長老・風の精・泉の精

   春公演時限定で、販売している公演キャラクターの・・・
   マスコット(キーホルダーや、パッチン止め、マグネットなど)
   です。1個ずつ手作りなもので、1つとして同じ表情の
   ものが作れないのは・・・御愛嬌^^;

   私、嘘を吐いてしまいました~!!前列中央はキャシー
   ではありませんでした。一昨年春公演“未来の海へ”の
   優海ちゃんでした。ネームタグがなかったので、勘違い
   してしまいました。キャシーは・・・全部お買い上げ頂き、
   きっと皆さんの元で、可愛がって頂いてることと思います。
   失礼致しました。
   ・・・自分で作っておきながら・・・トホホです・・・。                                     
                                    
                                     
                                どら。

  



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キャシーの森 ―全7場― 2

2011年07月17日 23時20分55秒 | 脚本

   
              キャシーとクルト。         

         

            音楽流れる。

       クルト「行こう!!キャシー!!」
       キャシー「ええ・・・」

            2人歌う。(紗幕閉まる。)                 

            クルト“願いを叶える5人の妖精
                5つの石を揃え願うのさ”

            キャシー“どうしてそんなこと?”

            クルト“何が?”

            キャシー“私の願いごと・・・”

            クルト“それが?
                キャシーの願いは僕のもの”

            キャシー“そんな風に言ってくれる人と
                  初めて出会った
                  今まで私の近く
                  1人もいないわ・・・”

       クルト「キャシー!!こっちだよ!!この小川を超えたら、
           泉の精の洞窟だよ!!」
       キャシー「あ、待って・・・待ってよーっ!!」

            2人、下手へ去る。

       ――――― 第 5 場 ―――――

            音楽流れ、紗幕開く。と、洞窟。中央に泉の精。

            クルト、キャシー、下手より回りを見回しながら、
            ゆっくり登場。

       クルト「泉の精ー・・・!泉の精ー・・・!」
       泉の精「こんにちはクルト・・・」
       クルト「あ、泉の精!」
       泉の精「珍しいですね。あなたがこんな洞窟深く、私に
            会いに来るなんて・・・」
       クルト「はい!キャシーを案内して来ました。」      
       泉の精「(頷く。)こんにちは、キャシー。」
       キャシー「あなたが・・・泉の精・・・?」
       泉の精「私の石を貰いに来たのでしょう?」
       キャシー「そうなの!!私、石を集めて家へ帰るのよ
            !!」
       泉の精「そうねぇ・・・あげてもいいけれど・・・」
       キャシー「何なの?あなたも私に何か質問するつもり
             !?」
       泉の精「あなたが感動したお話しを、聞かせてちょう
            だい。」
       キャシー「・・・感動・・・?」
       泉の精「そう・・・。あなたはいつもお友達に偉そうだっ
            たり、冷たかったり、意地悪だったりするけれど
            ・・・自分の心を揺さぶるような感動に、出会っ
            たことはないのかしら・・・?」
       キャシー「煩いわね!!あるわよ・・・!!あるわよ
             感動したこと・・・。こないだ見た映画が・・・」
       泉の精「(首を振る。)」
       キャシー「100点取ったテストの答案用紙を見た時
             ・・・ずっと探してた手袋の片方が見つかった
             時・・・パパがなんでもない日にケーキを買っ
             て来てくれた時・・・ハンバーガーその
             ピクルスがいつもより1枚多かった時・・・」
       泉の精「(笑う。)所詮、あなたの感動ってその程度・・・
            。そんなのは感動とは言わないわ・・・。
            誰にでもある、ちょっとしたラッキーな出来ごと
            ・・・。そんなことに感動したなんて
            可笑しな話しね。(クスッと笑う。)」
       
            音楽流れる。

       キャシー「あるわ・・・感動いたこと・・・。このあいだの
             夏休みに、家族みんなで行ったキャンプ
             旅行・・・。パパとママと弟達がいて・・・
             みんなで横になって見上げた星空・・・。
             キラキラ輝く、都会で見たことのない夜空に、
             すごく感動したわ!!なんて綺麗な星空・・・
             パパもママも、弟達もいて・・・帰りたい・・・
             私・・・家族のところへ帰りたいの!!
             だから、あなたの石がいるの!!お願い!!
             私にあなたの石をちょうだい!!」

    
             クルト・泉の精・キャシー。



            キャシー歌う。

            “心を震わす そんな感動
            ちっぽけなことでも
            誰にもある筈
            暖かな愛
            胸の中 溢れかえるわ
            家族の温もり包まれ
            思い出す私の居場所
            だから帰るの
            誰でも感じる筈よ
            心が思い満たされ
            思い出す幸せな時
            それが感動・・・”

       キャシー「私には帰る場所があるの・・・」
       泉の精「あなたの言うことは分かりました・・・。
            人間の気持ちって、よく分からないけれど・・・
            あなたの言う、そんな些細なことでも・・・それが
            感動だと言うのなら、そうなのかも知れないです
            ね・・・。はい・・・。(石を差し出す。)私の石を
            持って行きなさい・・・。」
       キャシー「・・・ありがとう・・・!!」

            キャシー、クルト残して、紗幕閉まる。

       ――――― 第 6 場 ―――――

       クルト「(嬉しそうに。)よかったね、キャシー!!」
       キャシー「クルト・・・」
       クルト「やっと名前を呼んでくれた。」
       キャシー「あ・・・どうしてそんな嬉しそうな顔するの・・・
             ?」
       クルト「え?だって、友達の願いが叶うんだ!!
           嬉しいに決まってるじゃないか!!」
       キャシー「友達・・・?」
       クルト「変なこと聞くんだな、キャシー。さあ、これで4つ
           の石が集まったね!」
       キャシー「ええ!後は1つ・・・もう少しで家へ帰れるの
             ね、私!!」
            クルト「うん!」
       キャシー「・・・それで・・・?」
       クルト「え・・・?」
       キャシー「次の妖精は、どこへ行けば会えるの!?」
       クルト「・・・次・・・?」
       キャシー「そう!」
       クルト「さあ・・・」
       キャシー「さあ・・・?」
       クルト「実は・・・僕も最後の、大木の精にだけは今だ
           かつて・・・お目にかかったことがないんだ!!
           (笑う。)」
       キャシー「お目にかかったことがないですって!?
             あなた、この森のことなら、なんでも知って
             るんだ!!って自慢してたじゃない!!」
       クルト「う・・・うん・・・。だけど大木の精だけは、1度も
           姿を現したことがないから・・・。そうだ!!
           長老なら知ってるかもしれないよ!!長老に
           聞いてみようよ!!長老ー!!長老ー!!」
      
       長老の声「なんだ大きな声で・・・」

           中央、長老後ろ向きにセリ上がる。  

       クルト「(長老を認め、駆け寄る。)あ!!長老!!
           キャシーがとうとう最後の大木の精に会う
           ところまできたんだけれど、僕も大木の精に
           だけは、今まで1度も出会ったことがなくて・・・
           案内係の役目が果たせなくて困ってたんだ!
           ねぇ!長老なら大木の精のことは勿論知って
           るよね!一体どこへ行けば・・・長老・・・?
           長老・・・?」
       長老「全く・・・さっきからギャーギャーと煩い小鳥だ・・・
           。」
       クルト「長老・・・じゃない・・・?誰!?」
       長老(大木の精)「(溜め息を吐く。頭巾を外す。)
                  やれやれ・・・ようやく俺様が相手を
                  する人間が、ここまでやって来たか・・・」
       キャシー「大木の・・・精・・・?」
       クルト「長老は・・・?」
       大木の精「(笑う。)長老・・・?長老なんかおまえ達が
              勝手に考えた、ただの空想の年寄りだ!!
              この森に長老なんか実際にいるものか!!」
       クルト「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ!!長老が本当はいない
           なんて嘘だ!!(大木の精に詰め寄る。)」
       キャシー「クルト!!」
       クルト「嘘だ!!長老が空想だったなんて嘘だ!!」
       大木の精「煩い!!長老だと!?笑わせるな!!」
       クルト「嘘だ!!」
       大木の精「煩くするなら、おまえも黙らせて空想にして
              やる!!(クルトに向かって、手を差し出し
              魔法をかける。)」
       クルト「あっ・・・!!(倒れる。)」
       キャシー「クルト・・・?クルト!!(クルトに駆け寄る。)
             あなた、クルトに何をしたの!?」
       大木の精「(笑う。)俺様に煩く詰め寄るからだ!!
              後、数分もすればその鳥は、2度と目を
              覚まさなくなるだろう。これで静かになるな。
              (笑う。)さぁて・・・おまえは俺様の石が欲しい
              んだろう。俺様は、他の妖精達のように、
              そんな簡単に石はやらんぞ!!一体、
              どんな難題に答えてもらうとするかな。
              (笑う。)」

            音楽流れる。




              
           魔法にかけられてしまったクルト・・・!!  
           このまま息絶えるのでしょうか・・・。
           それでは“キャシーの森”3完結編へ。              

      ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪   

       
                  キャシー・長老・クルト
              長老の頭巾を取ると、その下には・・・。
        

        写真に2種類あるの、分かりますか?
        上下に黒のカット部分があるのが、大きな公演の時に
        持っていく“本舞台”、何もないのがあまり準備に時間
        の取れない公演に持って行く、簡易の舞台になります。  
        本舞台は、組み立てに2時間程かかりますが、紗幕も
        緞帳もある、本格的な作りになっているんですよ。 
        どちらも、下で人形操作をしている我々は・・・
        エライことになっていますが・・・。        

                                   どら。

 

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キャシーの森 ―全7場―

2011年07月17日 23時03分28秒 | 脚本

 
 <主な登場人物>
 
 キャシー・・・本編の主人公。
 クルト・・・不思議な森に住む、青い羽の小鳥。
  
          “キャシーの森”小学校公演より。                     
               キャシーとクルト。                      


 長老・・・不思議な森に昔々から住む。  
                                       
 花の精
 蜘蛛
 大地の精
 風の精
 泉の精

 その他

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 

 パパの声(エコー)「キャシー!!おまえはなんて思い遣りのない
             子なんだ。泣いて帰った友達の気持ちも分から
             ないような悪い子は、しばらく屋根裏部屋で
             反省しなさい!!」
 キャシーの声「パパ・・・」

 ――――― 第 1 場 ―――――
   
    音楽流れ、幕が開く。と、森の様子。
    中央に1人の少女(キャシー)倒れている。
    下手より、青い羽の小鳥(クルト)登場。
    キャシーを認め、嬉しそうにそっと近付く。

 クルト「(キャシーを覗き込む。)キャシー!!キャシー!!」
 キャシー「う・・・ん・・・煩いなぁ・・・もう・・・(起き上がる。)」
 クルト「おはよう!!キャシー!!」
 キャシー「(クルトを認める。)・・・小鳥・・・?」
 クルト「失礼だなぁ・・・。小鳥には違いないけど、僕には“クルト”
     って言う、ちゃんとした名前があるんだ! “クルト”って
     呼んで欲しいな。」
 キャシー「(クルトの話しは興味ないように。回りを見回して驚い
       たように。)ここは・・・どこ?」
 クルト「あ・・・ねぇキャシー・・・」
 キャシー「私はパパにお仕置きをされて屋根裏部屋に閉じ込め
       られたのよ!?ここはどう見たって森の中じゃない!!
       私の家は!?パパやママはどこ!?」

    音楽流れる。

 クルト「キャシー!ここは君の森だよ!!」
 キャシー「・・・私の森・・・?」

    クルト歌う。

    “誰もが知ってる
     キャシーの森だよ
     誰もが住んでる
     心の森だよ
     瞳を閉じれば感じる
     君の思いが溢れているよ
     誰でも来たいと願えば
     キャシーの森の中

     皆が思って
     描いた森だよ
     心に浮かべて
     誰でも行けるさ”

    キャシー歌う。

    “夢の中の出来事が
     目に映る絵なのね
     夢の中にいるきっと・・・”

    クルト歌う。

    “楽しもう”

 キャシー「分かったわ!ここがどこだか分かったけど、私がなぜ
       ここにいるのかが分からない!!あなた・・・私のこと
       知ってるんでしょ?私を家に帰して!!」
 クルト「そんなこと言われたって・・・僕・・・。そうだ!!長老なら
     分かるかも知れないよ!!」
 キャシー「長老・・・?」
 クルト「うん!!この森に昔々から住んでる、この森で1番偉い
     長老さ!!」
 キャシー「ふぅん・・・。じゃあ、あなた!私をその長老のところへ
       案内してちょうだい!!」
 クルト「あ・・・うん。長老ー!!長老ー!!(回りを見回す。)」
 
 長老の声(エコー)「なんなんじゃ、クルト。そんな大きな声で・・・」

    長老、中央現れる。

 クルト「(長老を認め、嬉しそうに駆け寄る。)長老!!」
 長老「どうしたんじゃ、クルト。」
 クルト「うん長老!!キャシーが長老に会いたいって!」
 長老「(キャシーを認める。)おお、キャシーじゃなか。」
 キャシー「あなた・・・あなたも私のことを知ってるの?」
 長老「勿論じゃよ、キャシー。」
 キャシー「私はあなたみたいなおじいさん知らないわ!!」
 クルト「キャシー!」
 長老「(笑う。)相変わらず元気がいいのぉ。」
 キャシー「あなた、何でも知ってるんでしょ!?」
 長老「そうじゃなぁ・・・」
 キャシー「私は家に帰りたいの!!家までの帰り方を教えて
       ちょうだい!!」
 長老「・・・ううむ・・・それは・・・わしにも分からんな。」
 キャシー「分からない!?」
 長老「ここは、おまえさんの森じゃろ?おまえさんに分からん
     ものは、わしにも分からんよ。(笑う。)」
 キャシー「なんですって!?私の森ってどう言うことよ!!私は
       こんな森、知らないのよ!?」
 長老「(笑う。)まあ落ち着きなさい、キャシー。」
 キャシー「落ち着いていられないわよ!!」
 長老「まあ聞きなさい。この森には5人の妖精が住んでおる。」
 キャシー「5人の妖精・・・?」
 長老「その妖精達から、それぞれが持っておる“願いを叶える石”
     を1つずつ貰って来るんじゃ・・・。その石が5つ集まった時、
     おまえさんの願いは叶うじゃろう。」

    音楽流れる。

 キャシー「じゃあ帰れるのね!?家へ!!」
 長老「そうじゃなぁ・・・」
 キャシー「私、5人の妖精に会いに行くわ!!」
 クルト「僕もキャシーと一緒に行くよ!!」
 キャシー「え?」
 クルト「僕は、この森のことは何だって知ってるんだ!!
     だから・・・」

    キャシー歌う。

    “私だけで大丈夫よ
     こんな森 怖くないわ1人で
     私だけで探せるわよ
     あなたの力なんて借りないわ”

 クルト「そんなこと言わないで!!僕も一緒に行きたいんだ!!」
 キャシー「(溜め息を吐いて。)いいわ!じゃあお供にしてあげる 
       わ!!さあ行くわよ、ケ・ル・ト!!
       (上手へ走り去る。)」
 クルト「お供・・・お供だって!?それに僕はクルトだよ!!ケルト
     ってなんだよ!!あ・・・!!キャシー!!待ってよ!!
     キャシー!!キャシー!!(キャシーの後を追い掛け、
     上手へ走り去る。)」
 長老「(笑う。)」

    紗幕、閉まる。

 ――――― 第 2 場 ―――――

    音楽流れる。
    紗幕前、一匹の蝶々、下手より登場。
    花の蜜を集めている。
    蝶々歌う。

    “お花が咲くこの場所は
     みんな憩いの場所ね
     暖かな陽 頬を撫でる
     素敵な場所ね”

    紗幕開く。と、森の中。(中央に大きな蜘蛛の巣。)
    音楽変わる。
    上手より蜘蛛、空腹でフラフラしながら登場。

 蜘蛛「はぁ・・・腹減ったでほんま・・・。フラフラするわ・・・。(その時、
     蝶々に気付く。)おおっと!!蝶や!!美味そうやなぁー!!
     久しぶりの獲物や!!わいの食事になってもらおか!!」

    蜘蛛歌う。

    “俺様 目を付けたら
      狙いは外さないぜ”

 蜘蛛「抜き足差し足・・・(そっと蝶々に近付く。)」
 蝶々「(蜘蛛に気付く。)キャーッ!!(飛び去る。)」
 蜘蛛「あ・・・あ!!しもた!!畜生!!逃げられたで!!
     はぁ・・・、もう何日も・・・なぁんも食べてへん・・・。力も出
     えへんわ・・・。腹減ったなぁ・・・(ゴロンと横になる。)」

    その時、上手よりクルト、走り登場。

 クルト「キャシー!!こっちだよ!!こっちこっち!!・・・あ・・・
     (蜘蛛の巣に引っ掛かる。)あっ!!わあーっ!!」
 蜘蛛「(飛び起きて、巣へ駆け寄る。)やった!!かかった!!
     かかりよったで!!」
 クルト「わあーっ!!蜘蛛だ!!キャシー!!キャシー!!」
 蜘蛛「小鳥かぁ・・・。美味そうやなぁ・・・!!」
 クルト「わあーっ!!助けてキャシー!!助けてーっ!!」
 蜘蛛「叫んでも誰も来ーへんで!!」
 クルト「キャシー!!」
 
 花の精の声「蜘蛛さん!!」

    下手より、花の精登場。

 蜘蛛「なんや!!この鳥はわいのエサや!!わいの蜘蛛の巣に
     こいつ自ら引っ掛かってん!!おまえが何言うたかって、
     わいはこの鳥を食べるで!!」
 花の精「蜘蛛さん!!お願いだから、その小鳥さんを助けて
      あげて!」
 蜘蛛「い・や・や!!」
 花の精「蜘蛛さん!!」
 蜘蛛「わいは腹減ってんねん!!」
 花の精「その小鳥さんを助けてくれたら、ここのお花畑の蜜を全部
      あなたに差し上げるわ!!だからお願い!!」
 蜘蛛「花の蜜なんかで、腹一杯になるか!!」
 花の精「なんですって・・・?」
 蜘蛛「花の蜜なんか甘ったるい・・・」
 花の精「(蜘蛛をにらみ付ける。)」
 蜘蛛「あ・・・だから・・・なんぼ花の蜜が一杯あっても・・・」
 花の精「花の精の私が頼んでるのよ・・・?」
 蜘蛛「そやかて・・・」
 花の精「(恐ろしい声で。)私の花畑で乱暴なことをして、
      許されると思っているのか!!(カミナリが落ちる。)」
 蜘蛛「わあーっ!!そう言うあんたかって・・・!!」
 花の精「(恐ろしい声で。)どうなんだ!!(再びカミナリが落ち
      る。)」
 蜘蛛「分かった分かった分かった!!分かったから、もう怒らん
     といて!!」
 花の精「(優しく。)まあーっ!!蜘蛛さんありがとう!!」
 蜘蛛「ほんま花の精だけは、怒ったらこの森で1番恐ろしいわ・・・
     。(ブツブツと。)」
 花の精「何かしら?」
 蜘蛛「あ・・・いや・・・何もあらへん・・・。その代わり、この辺の花の
     蜜・・・全部頼むで!」
 花の精「ええ!!いつでもどうぞ!!」
 蜘蛛「(クルトを巣から外してやる。)ほんま、どんくさい鳥やで・・・。
    (ブツブツ言いながら、下手へ去る。)」
 クルト「ありがとう・・・」
 花の精「よかったわね。」
         
                   花の精・クルト・蜘蛛さん  

   
      蜘蛛と入れ代わるように、上手よりキャシー登場。 

 キャシー「やっととれたの?」   
 クルト「あ、キャシー・・・」
 キャシー「ほんと、カルトのせいで、無駄な時間使っちゃって!」                                                  
 クルト「カ・・・僕はクルトだってば!!」
 花の精「あなた・・・いやに冷たいのね。小鳥さん、もう少しで蜘蛛
      さんに食べられちゃうところだったのよ!」
 キャシー「誰、あなた。」
 花の精「私は花の妖精!」
 キャシー「花の妖精・・・?ねぇ!!あなたの持ってる石を、
       私にちょうだい!!」
 花の精「石・・・?お友達のことは、どうでもいいの?」
 キャシー「(クルトをチラッと見るが、気にとめず。)ねえ!!
       それより私、あなたの石がどうしてもいるの!!」
 花の精「そうねぇ・・・あげてもいいけど・・・。あなたの大切にして
      いるものを教えて!そうすれば、私の石をあなたに差し
      上げるわ。」
 キャシー「大切なもの・・・?そんなの一杯あるわよ!」

      音楽流れる。
      キャシー、花の精歌う。

      キャシー“校庭で偶然拾ったあの子の消しゴム”

      花の精“取ったのよ”

      キャシー“あの子が私の為に買ってくれたリボン”

      花の精“嘘でしょ”

      キャシー“知らずに通った道で貰ったキーホルダー”

      花の精“知ってたわ”

      キャシー“帰りにバス乗り場で見つけた1ドル”

      花の精“嘘吐き”

 花の精「目の前で、1ドル落として困っている人を知ってた筈よ
      !」
 キャシー「知らないわよ、バスに乗ろうとしてたおばあさんのこと
       なんて!!あ・・・」
 花の精「ほら。(笑う。)」
 キャシー「煩いわね!!」
 花の精「あなたの言う大切なものって、形あるものばかりね。
      つまらないわ。」
 キャシー「そんなことないわ!」

      花の精“人なんて頭の中は物欲だらけだわ”

      キャシー“違うわ”

      花の精“私の言う通りよ つまらないものだわ”

      キャシー“違うの”

      花の精“本当のことだわ 特にあなたのこと”

      キャシー“どうして!?”

      花の精“今までしてきたことを思い出してみたら?”

      キャシー“イーッ!!”

 キャシー「あなたが何を知ってるって言うの!?」
 花の精「さあ・・・(とぼけたように。)こないだ私の石を貰いに
      来た人は、車が大切だって言ってたわ!その次の人は
      家が大切だって言ってた。そうそう、お金が大切だって
      言ってた人もいたわね・・・。ね、皆見えるものばかり。」

      キャシー“そんなことない
            形があっても
            大切にしてる”

 花の精「まあ。でも、そんなに言うなら・・・私にはつまらないもの
      ばかりだけれど・・・あなたには本当に大切なものなの
      かも知れないわね・・・。はい・・・(石を差し出す。)
      約束だから、私の石を差し上げるわ。」

      キャシー、石を受け取る。
      キャシー、クルト残して紗幕閉まる。

――――― 第 3 場 ―――――

 クルト「よかったね、キャシー!!」
 キャシー「でも・・・こんな何でもないただの石・・・どうやって私の
       願いを叶えてくれるのかしら・・・」
 クルト「5つの石が集まったら分かるんだよ、きっと!」

      音楽流れる。

 クルト「行こう、キャシー!!」

      2人歌う。

      クルト“行くんだ次の 行くんだ森へ
          願いを叶えてくれる石を探しに”

      キャシー“行くわ私の 願いの為に
            この森に住む妖精に会いに行くわ”

      クルト“どんな冒険が待ち構えても”

      キャシー“5つの石を集めるの!”

      クルト“行くんだ次の 行くんだ森へ
          願いを叶えてくれる妖精達さ”

      2人“行こう すぐ行こう
         次の妖精が待つ場所へ
        
         行くんだ次の 行くんだ森へ
         願いを叶えてくれる石を見つけに
         願いを叶えてくれる5つの石を!”

 クルト「キャシー!こっちだよ!」
 キャシー「ええ!」

      2人、上手へ走り去る。

――――― 第 4 場 ―――――

      音楽流れ、紗幕開く。
      と、風の精、大地の精、2人で力自慢をしている。

 風の精「はっ!!(大風の音。)」
 大地の精「やあっ!!(地鳴りの音。)」
 風の精「私の方が強いんですからね!!」
 大地の精「俺様の方が力があるに決まっている!!」
 風の精「なんですってー!!」
 大地の精「なにをー!!」

      そこへ上手より、クルトとキャシー登場。
      嵐のような、その場の様子にヨロヨロ、フラフラする。

 クルト「わあーっ!!」
 キャシー「キャーッ!!」
 クルト「わ・・・わあーっ!!やめて・・・やめてーっ!!風の精!
     大地の精!」
 キャシー「キャーッ!!なんなのよ、ここは!!キャーッ!!」
 クルト「キャシー!!しっかり・・・」
 キャシー「キャーッ!!」
 風の精「えいっ!!」
 大地の精「はあっ!!」
 キャシー「キャーッ!!(木に掴まる。)」

      風の精、大地の精、顔を見合わせ笑う。

 クルト「やめろーっ!!」
 風の精「なんですか!?」
 大地の精「なんだ!?」
 クルト「あ・・・だから・・・そんな風に力比べをしていると・・・危な
     いから・・・」
 風の精「だったら、あなたが私の相手をするって言うのかしら
      !?」
 大地の精「そうだ!!おまえが俺様の相手になってもらおうか
       !!」
 風の精「やあっ!!(強風の音。笑う。)」
 大地の精「はっ!!(地鳴りの音。笑う。)」
 クルト「わあーっ!!(風の精と大地の精の間でヨロヨロする。)
     や・・・やめてくれよ・・・!!」
 風の精「よっ!!」
 大地の精「はっ!!」
 キャシー「いい加減にして!!(風の精と大地の精の間に、
       割って入る。)」
 風の精「なんですの!?」
 大地の精「誰だ、おまえ!?」
 キャシー「2人で寄ってたかってミルトを苛めるなんて!!」
 クルト「ミ・・・だから僕はクルトだってば!!ク・ル・ト!!」
 風の精「偉そうに!!」
 大地の精「全くだ!!」
 キャシー「弱い者苛めは、やめなさいって言ってるのよ!!」
 クルト「キャシー・・・」
 風の精「弱い者苛め・・・?」
 大地の精「(笑う。)おまえの口から、弱い者苛めなんて言葉
        を聞くとは・・・」
 風の精・大地の精「お笑いだな。(笑う。)」
 キャシー「なによ!!」
 風の精「弱い者苛めは、おまえが得意なことだろ!!」
 キャシー「煩いわね!!兎に角、大の大人が2人がかりで、
       1羽の小鳥を苛めるなんて良くないわ!!」
 大地の精「じゃあ、おまえが相手になるのか!?」
 風の精「何で勝負する!?」
 大地の精「相撲か!?」
 風の精「砂嵐でも起こすか!?」
 風の精・大地の精「さぁ、どうする!!」
 クルト「キャシー!!」
 キャシー「・・・私は・・・これで戦うわ!!(棒を拾って構える。)
       さあ・・・どっからでもかかって
       きなさい!!」
 風の精・大地の精「(2人、顔を見合わせて棒を拾い構える。)
             よーし・・・!!」
 クルト「キャシー!!」

     その時、長老の笑い声が聞こえる。
 
 クルト「長老・・・?(回りを見回す。)」

 長老の声(エコー)「そんな物騒なものを振り回しとらんで、手を
              離さんか・・・。」

     中央、長老セリ上がり登場。

 風の精・大地の精「長老!!(手に持っていた棒を放す。)」
 長老「風の精、大地の精、おまえ達はまだ力比べだなどと、そんな
     くだらないことをしておるのか。」
 風の精「えっと・・・」
 大地の精「あ・・・いや・・・」
 長老「力など比べんでも、風の精には風の精の・・・大地の精には
     大地の精の良いところがあるのじゃ・・・。そんなことをする
     暇があったら、もっと他にやることがあるじゃろう。」
 風の精「(大地の精と目を合わす。)やーめた・・・。」
 大地の精「俺も・・・」
 キャシー「え?やめちゃうの!?」
 風の精・大地の精「帰る!!(それぞれ上手、下手へ行こうとする
              。)」
 キャシー「あ・・・ちょ・・・ちょっと!!(溜め息を吐き、棒を捨てる。)
       なーんだ・・・つまんない・・・。あ・・・!私こんなことをする
       為に、ここに来たんじゃないんだわ!!ちょっと!!
       風の精!!大地の精!!」
 風の精「あ?」
 大地の精「なんだ?」
 キャシー「あなた達の持ってる石を、私にちょうだい!!」
 風の精「石・・・?」
 キャシー「石を持ってるんでしょ!?願いを叶える石よ!!」
 大地の精「願いを・・・」
 風の精「ああ・・・」
 大地の精「おお・・・」

     風の精、大地の精、下に落ちていた石を拾って、
     キャシーに差し出す。

 風の精・大地の精「はい。」
 キャシー「・・・何よこれ・・・」
 風の精「石だろ?」

 キャシー「こんなその辺に落ちてる石じゃなくて・・・!!」
 大地の精「俺達、石なんてこれしか持ってないぜ。」
 風の精「ああ。」
 キャシー「だって・・・!!」

     風の精、大地の精、上手下手へそれぞれ去る。

 長老「なんじゃキャシー・・・おまえさんはまだ、ただの石を集めて
     おるのか?」
 キャシー「え・・・?」
 長老「花の精に貰った石は、まだその時のままの、ただの石かの
     ?」
 キャシー「(花の精から貰った石を、取り出して見る。)そう言えば
       ・・・この石・・・花の精に貰った時に比べると・・・なんだか
       少しキラキラしたように見えるけど・・・」
 長老「ホッホッホ・・・これで3つの石が集まったのぉ・・・。」
 キャシー「この石が、ほんとに願いなんて叶えてくれるの?」
 長老「さあのぉ・・・。(笑いながら去る。)」
 キャシー「さあ・・・?なんなのよ皆して!!あ!!ちょっと
       おじいさん!!」
 クルト「きっと5つの石が集まった時に分かるんだよ!!」

 

  

     残りの2つの石は、一体どんな妖精が持っているの
    でしょう・・・。
    キャシーは無事にその2つの石を手に入れることが
    できるのでしょうか。
    それは“2”でのお話です・・・。

   

              ― “キャシーの森 2”につづく ―

  ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪                                                       

           
    2011年春公演“いのちの水”より
          お父様とエリィ 

      “キャシーの森”は、以前、人形劇ではない舞台の
     脚本として書いたものですが、その時の公演が好評で
     あったので、今回、もっと身近な子ども達に観てもらい
     たいと思い、リトルパインの作品として、手直しを入れ
     書き直したものです。
     私にとっては1番思い入れのある、大好きな作品です。

                                 
                            どら。
     

 

 

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