砂漠の魔女とカイト。
――――― 第 4 場 ――――― B
上手より、カイト登場。
カイト「毎日雨ばっかり・・・」
下手より、老婆の姿をした砂漠の魔女、ゆっくり登場。
(大きな傘をさしている。)
魔女「坊や・・・」
カイト「え・・・?」
魔女「どうしたんです・・・?そんな憂鬱そうな顔で・・・。」
カイト「お婆さんの傘・・・すごく大きいんだね・・・。」
魔女「ええ・・・絶対・・・雨に濡れたくないんでね・・・」
カイト「僕もさ・・・。もう雨なんかうんざりだ!!」
魔女「ほう・・・雨がいらない・・・と?」
カイト「うん、雨なんかいらない!!」
魔女「・・・それでは・・・この国の雨を・・・私が・・・貰って
あげましょうか・・・?」
カイト「あげられるもんなら雨・・・ううん!!湖も川も・・・
この国の水・・・全部お婆さんにあげるよ!!
あげるよ・・・(繰り返す。)」
魔女、カイト下がる。(紗幕、閉まる。)
――――― 第 5 場 ―――――
音楽流れる。
村人たち、慌てながら登場。歌う。
村人1「大変だーっ!!水が出ないぞーっ!!」
“水がない” “水”
“水”
“水はどこ” “ない”
“ない”
村人2「国中の水が出ない!!」
村人3「どうしたんだ一体!!」
“水がない 水はどこ”
村人4「水が出ないと、赤ん坊のミルクが作れないわ!!」
村人1「年寄りが干上がりそうだ!!」
村人2「一体、この国はどうしたんだ!!」
村人3「川の水もなくなった!!」
“水がない” “水”
“水”
“水はどこ” “ない”
“ない”
村人1「何か大変なことが起こってるんじゃないのか!?」
“水がない 水はどこ”
村人2「誰か水を今直ぐなんとかしろ!!」
村人3「このままじゃ畑の野菜も駄目になっちまう!!」
村人1「太陽の光が焼けるようだ・・・!!」
村人5「(走り登場。)隣の国も・・・その隣の国も水がなくなった
ぞーっ!!」
村人2「何だって!?」
村人3「・・・大変だ・・・」
――――― 第 6 場 ―――――
紗幕、開く。と、城内。
上手よりエリィ、下手より父登場。
父「エリィ・・・」
エリィ「・・・お父様・・・私のせいよ・・・。私が砂漠の魔女に、
良くないお願いをしたから・・・!!」
父「おまえが願わなくても・・・遅かれ早かれこの国も・・・
近隣諸国のように、砂漠の魔女の手にかかっていたよ
・・・。」
エリィ「だって・・・!」
父「そんなに責任を感じなくていいんだ・・・。」
音楽流れる。
下手よりおばあ様、ゆっくり登場。
おばあ様「魔法の杖・・・」
(左より)おばあ様・父・エリィ ※
エリィ「おばあ様・・・」
父「魔法の杖って・・・」
おばあ様「この国はその昔・・・皆が魔法を持つ、魔法使いの国
だったのじゃ・・・。だが・・・皆が己の魔力を競い合い
・・・その力に感謝することを忘れ・・・争いの絶えない
国に変わっていったのじゃ・・・。」
父「私も昔に、そんな話しを聞いたことがあります・・・。」
あばあ様「その為に、我々のご先祖様である昔の国王が、
この国全ての者の魔法を取り上げ、封印してしま
われたのじゃ・・・。」
父「封印・・・」
おばあ様「だが・・・たった1つだけ・・・何百年もの間・・・隠し
守ってきたもの・・・たった1度だけ魔法を使うことが
できる奇跡の杖・・・それが、この魔法の杖じゃ・・・。
(杖を差し出す。)」
エリィ「魔法の杖・・・」
おばあ様「今こそ、この杖を使う時・・・!!」
父「それを使えば、魔法で水が戻るのですね!?では私が・・・
!!」
おばあ様「馬鹿者!!そう焦るでない!!」
父「・・・すみません・・・」
おばあ様「この杖も、今はただの木の枝じゃ・・・。」
父「ただの枝・・・?」
おばあ様「このただの木の枝を、魔法の杖に戻す為には、東の
妖精の森に住む・・・その望みを叶えてくれる妖精に、
魔法の粉を振りかけてもらわねばならん・・・。
そして・・・その妖精を捜し出し・・・出会えるのは・・・
純粋な目を持つ子どもだけ・・・」
エリィ「え・・・?」
父「そんな子どもに・・・!!そんな大変な仕事に子どもを行か
せるなど・・・!!なぜ私では駄目なのです!!」
おばあ様「それが、この国を救うただ1つの道じゃ・・・。」
父「子どもに・・・(エリィをチラッと見る。)」
エリィ「無理よ・・・無理だわ!!私1人でそんなこと・・・!!」
父「分かっているよエリィ・・・。おばあ様・・・妖精に出会って・・・
その次は・・・?」
おばあ様「水を司る湖の妖精に会ったなら・・・杖に水が溢れ
出る魔法をかけてもらうのじゃ・・・。」
父「それでこの国に水が戻るのですね?」
おばあ様「(首を振る。)いいや・・・。その杖を持って、砂漠へ
行くのじゃ・・・。」
父「砂漠へ・・・?」
おばあ様「(頷く。)そして砂漠の魔女と戦うのじゃ。」
父「そんな無茶な!!」
おばあ様「そうしなければ、他の国々の水も取り戻すことは
できん・・・。我が国だけ助かったところで、
意味がないじゃろう・・・?のぉ・・・そこの物陰に
隠れておる少年・・・」
エリィ「え?」
上手より、カイト登場。
カイト「・・・ごめんなさい・・・。隠れるつもりはなかったんだ・・・。」
エリィ「あなた・・・」
おばあ様「さぁ、どうすうかの・・・?」
カイト「・・・それが・・・魔法の・・・杖・・・」
おばあ様「これを使わないで、国を救うことはできんのじゃ・・・」
エリィ「・・・私・・・」
カイト「・・・僕じゃ・・・」
おばあ様「ん・・・?」
カイト「僕じゃ駄目かな!?僕にその杖を・・・!!僕の国も、
ここの国と同じで、水がなくなった為に、もう人々が住む
ことができないんだ!!だから、僕が何としてもみんなを
助けるって・・・!!僕の小さな弟たちが・・・喉の渇きに
耐えて、僕のかえりを待ってるんだ!!だから!!」
エリィ「・・・小さな弟・・・」
おばあ様「・・・残念じゃが・・・この木の枝を、魔法の杖に変える
ことができるのは・・・12歳までの子どもだけじゃ・・・」
カイト「12歳まで・・・」
おばあ様「おまえさんは・・・13歳じゃろう・・・?」
カイト「僕・・・昨日、13歳の誕生日だったんだ・・・」
おばあ様「それに王家の血筋がいる・・・」
エリィ「・・・私・・・お父様・・・私が行くわ・・・」
父「エリィ・・・?」
エリィ「私が・・・その木の枝を、魔法の杖に変えて・・・砂漠の
魔女と戦うわ!!そして・・・私の国と・・・あなたの国も・・・
そして水がなくなって困ってる国々を救うわ!!」
父「エリィ・・・」
おばあ様「1つだけ言っておく・・・。魔法の杖の復活は2日間
のみ・・・。2日間のうちに湖の妖精と出会い・・・
砂漠の魔女を倒して戻って来るのじゃ・・・。ここに
2日以内に戻って初めて・・・全ての国が救われる
であろう・・・。」
父「たった・・・2日間・・・」
おばあ様「この国の水がめも・・・2日が限度じゃろう・・・。」
エリィ「分かったわ、おばあ様・・・。私・・・必ず2日のうちに・・・
砂漠の魔女を倒して帰って来るわ!!」
音楽流れ、エリィ歌う。
「私がこの国を救うわ・・・」
“私がこの国を救うのよ
他の誰でもないわ
できるのは私よ
みんなの為 勇気をだすのよ
他の誰でもないわ
できるのは私だけ・・・”
エリィ「怖くないわ・・・。必ず・・・必ずみんなの為に・・・砂漠の
魔女から水を取り返してみせるわ!!きっと・・・!!」
人々の声が聞こえる。
村人たち「わぁーっ!!」
音楽変わり、城のバルコニー、セリ上がる。
(紗幕閉まる。)
――――― 第 7 場 ―――――
バルコニーに父(王様)現れる。
父「静まれーっ!!静まれーっ!!」
父、歌う。
“知っているだろ この国の現状を
砂漠の魔女の呪いを身に受け
国中の水 全て奪われたのだ
だが落ち着いて話しを聞くのだ”
村人たち歌う。
“だけど水がないと
生きることはできないぞ
この国の全ての水が奪われ”
父、歌う。
“だが待て 我れらは
他の国にはない 力ある
魔法の力で 水を取り戻すのだ
我が国に
それをできるは 選ばれし者だけだと
ただの木の枝 魔法を持たせる
妖精に会い 願いを叶えられるは
澄んだ目を持つ 限られた子ども”
村人たち歌う。
“そんな子どもになど 何ができるのか
この国の夜明けはやってくるのか・・・”
父、歌う。
“信じて待つのだ
必ず明日がくると願って
心を合わせて ひとつになって
魔女を倒すのだ
杖を託す
国の明るい未来・・・”
村人たち「わぁーっ!!」
“国の明るい未来~・・・♪”
さて、砂漠の魔女と戦うことを決めたエリィですが・・・
願いを叶えてくれる妖精に、無事出会うことが
できるのでしょうか・・・?
それでは“3”へ参りましょう・・・。
※ おばあ様が手に持ってる“魔法の杖”・・・
万博公園をウロウロしていて拾った、
ただの“木の枝”です^^;
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おまけフォト(^^)v
私はずーっと以前から、脚本の仕上げは、この写真の
ように“手書きの横書き”なのです^^;
(見えにくいですね~・・・すみません<(_ _)>)
どうしてもこのスタイルが好きで、「台本って“縦書き”
が普通ちゃうん?」「今時、手書きって・・・」などと言われ
ながらも、今まで随分沢山のお話しを書いてきて、
色んな場所に散らばっているであろう私の作品達は、
全てこのスタイルの物が“本物”・・・なのです(^^♪
どら。
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227