〈主な登場人物〉
シェークスピア ・・・ 飼い犬。本編の主人公。
ノラ ・・・ 野良犬。
サイコロ ・・・ 狼。
牛1
牛2
ジェシー ・・・シェークスピアの飼い主。
ジュリエット ・・・ ジェシーの新しい飼い犬。
その他
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――――― 第 1 場 ―――――
音楽流れる中、コーラスの美しい響き。
コーラス“ワンダフル!!ワンダフル!!ワンダフル!!”
ノラの声「な、冒険!!」
照明が点く。と、中央に一匹の野良犬(ノラ)、
嬉しそうにポーズをとって立っている。
ノラを挟むようにして、4匹の犬達。
犬達、楽しそうに歌い踊る。
“考えるだけでワクワクするような
これから待ち受ける出来事に
胸踊らせて 心逸る
見たことも聞いたこともないような
今まで空想した出来事を
この目で見て感動して
旅に出るんだ 今直ぐに!
慣れ親しんだ町ともおさらば
喧嘩友達 愛しい彼女
俺は今から旅に出る!
ジャストモーメント!
ワンダフルモーメント!”
ノラ犬1「おい、ノラ!おまえ本当にこの町から出て行くのか?」
ノラ「ああ!」
ノラ犬2「それでどうするのさ!!」
ノラ「・・・どうするって?」
ノラ犬3「アメリカ中歩き回って、何になるんだよ。」
ノラ犬4「私との仲はどうなっちゃうの?」
ノラ「ローラ(ノラ犬4の肩に手を置く。)、俺のことはきっぱり忘れ
てくれ。」
ノラ犬4「冗談でしょ!?」
ノラ犬2「何しようってんだ。」
ノラ「何もするつもりはないさ!」
ノラ犬1「じゃあ!」
ノラ「ただ、この目で色んな世界を見てみたいんだ!!おまえら
このままここで、爺さんになってっていいのか?俺は嫌だね
!だから旅に出る!!先ずニューヨークだ!!自由の女神
を、見てかないとな!!」
ノラ犬達口々に「ニューヨーク!?」
ノラ「あばよ!!」
ノラ犬達「ノラ!!」
ノラ、手を上げて下手へ走りながら去る。
ノラ犬達、溜め息を吐きながら、諦めたように
上手へ去る。入れ代るように、手に持った紙切れに
目を遣りながら、眼鏡をかけた真面目そうな一匹の
犬(シェークスピア)登場。ブツブツ言いながら、
ゆっくり下手方へ。そこへノラ、照れたように頭を掻き
ながら登場。
ノラ「大事な鞄、忘れちまった・・・。(中央後方に置いてあった、
鞄を見つけて駆け寄る。)あった、あった。」
ノラ、しゃがみ込んで鞄を広げ、中を見ている。
紙に見入っていたシェークスピア、ノラに気付かずに
ぶつかる。
シェークスピア「あっ!!(思わず転ぶ。)」
ノラ「いって・・・!!馬鹿野郎!!何処見て歩いてんだ!!
全く・・・。」
シェークスピア「(立ち上がって。)ご・・・ごめんなさい・・・。(頭
を下げる。少し考えるように、間を置いて。)
あ・・・あの・・・」
ノラ「あ?(面倒臭そうに振り返る。)」
シェークスピア「・・・あの・・・ここへ行くには、どうすればいいん
でしょうか・・・?(恐る恐る、紙をノラの方へ差し
出す。)」
ノラ「(鞄のファスナーを閉めて立ち上がり、鞄を肩に掛ける。
シェークスピアから紙を取り見る。)・・・サンフランシスコ・・・
?人間と一緒か・・・?」
シェークスピア「(下を向いて、首を振る。)」
ノラ「おまえ・・・サンフランシスコって、こっからどれだけ離れて
るのか分かってるのか?歩いて行こうなんて、到底無理
だぜ!途中にはだだっ広い平原や、おっそろしく高い山脈
が立ちはだかってんだ。やめとけ、やめとけ。(紙をシェー
クスピアの手の中に、無理矢理返す。)
ノラ、下手へ行こうとする。
シェークスピア「それでも!!」
ノラ立ち止まって、ゆっくり振り返る。
シェークスピア「それでも・・・行かなきゃならないんです・・・。
昨日まで一緒に暮らしてたんです!!昨日まで
あんなに仲良く公園を駆け回ってたのに・・・。
今朝、何時ものように起きたら皆はいなくて・・・。
代わりに引越し屋さんが、バタバタと慌ただしく
行き来してたんです・・・。今考えると、そう言え
ば一カ月程前から、皆片付けに追われてたっけ
・・・。僕、気が付かなくって!!屹度、皆忙しくて
僕のことを忘れて行ったんだ!!いないことに
気付いて、今頃、慌ててるに違いないんです!!
だから、僕の方から皆の所に・・・!!」
ノラ「(溜め息を吐いて。)馬っ鹿だなぁ・・・。おまえ、捨てられた
んだよ。」
シェークスピア「・・・捨てられた・・・?」
ノラ「よくあることさ。新しい土地に新しい家・・・。そこに古いペット
は用なしってことさ。」
シェークスピア「嘘だ・・・嘘だ!!嘘だ!!嘘だ!!ジェシーが
僕のことを捨てて行くなんて嘘だ!!」
ノラ「なら勝手に確かめに行けよ!」
シェークスピア「今まであんなに仲良しだったのに・・・。」
ノラ「人間なんて勝手な生き物なんだ。何時だって俺達のことを、
都合のいい、動く縫いぐるみか何かと勘違いしてやがる。」
シェークスピア「・・・嘘だ・・・少なくとも、僕が今まで出会った人
達は、一人だってそんな風に思ってると感じた
ことはありません!」
ノラ「それはそれは、今まで幸せな生活をしてきたお犬様だった
って訳だ。(笑う。)ま、好きにするといいさ!俺には関係な
い。じゃあな!(手を上げて、下手方へ行きかける。)」
シェークスピア「・・・あなたは何処へ行くんですか?」
ノラ「俺・・・?(振り返る。)」
シェークスピア「旅にでも行くんでしょう?そんな大きな荷物、
担いで・・・。」
ノラ「何処だっていいだろ!おまえには関係のない所なんだか
ら。」
ノラ、下手へ行こうとすると、シェークスピア、ノラの
服を握って付いて来る。
ノラ「(シェークスピアに気付いて。)放せよ!!」
シェークスピア「だって・・・」
ノラ「俺は先ず、ニューヨークに行くんだ!!おまえとは正反対
なんだよ!!」
シェークスピア「だって・・・」
ノラ「一人旅もできない癖に、何がサンフランシスコなんだよ!
!」
シェークスピア「だって・・・」
ノラ「だってだって煩いんだよ!」
シェークスピア「だって!!(声を上げて泣く。泣きながら捲し
立てるように。)僕は生れてからずっと飼い犬
で、今まで家の外に出たのは散歩の時位で、
サンフランシスコの方角さえ分からなくて・・・
!!それに比べてあなたはアメリカ中の場所
を知ってて、今までたった一人で生きてきて、
その上、今、自分の楽しみの為に旅しようと
してる!!僕とは大違いなんだ!!僕なんて
・・・僕なんて、あなたに見放されたら、直ぐに
飢え死にだ!!」
ノラ「・・・分かった・・・分かったから泣くのは止めろ!!」
シェークスピア「(泣き止んで。)・・・本当に・・・?」
ノラ「・・・ああ・・・」
シェークスピア「ありがとうございます!!(ノラの手を握る。)」
ノラ「なんでサンフランシスコなんだよ・・・。」
シェークスピア「さあ!!そうと決まれば、善は急げ・・・ですよ
ね!!早く行きましょう!!」
ノラ「(独り言のように。)偉いことになったな・・・。」
シェークスピア、嬉しそうにノラの腕を掴んで、
上手方へ行こうとする。
ノラ「おい馬鹿、こっちだ!!(下手方を指差す。)」
シェークスピア「だって・・・あなたが行こうとしてた方とは正反
対だって・・・。それから僕・・・今あなたが言った
ような名前じゃありません。“シェークスピア”っ
て言うんです!」
ノラ「(笑う。)ご大層な名前だな。」
シェークスピア「はい!僕、気に入ってます!・・・あなたは?」
ノラ「・・・ノラ・・・野良犬のノラさ。」
シェークスピア「それでノラさん!これからどうやって、サンフラ
ンシスコを目指すんですか?」
ノラ「“さん”付けは止めろ・・・。シカゴまで出て、そっから鉄道
に潜り込むんだよ。」 ※
シェークスピア「そっか!!鉄道に潜り込むんですね!!鉄道
・・・?鉄道って・・・?」
ノラ「鉄道も知らねぇのかよ・・・。行けば分かるさ!」
シェークスピア「はい!!分かりました、ノラさん!!」
ノラ「だから“さん”は・・・!おい・・・」
シェークスピア、ノラを引っ張るように、下手へ
走り去る。
――――― 第 2 場 ―――――
楽しそうな音楽流れると、上手下手より、其々
都会風の格好をした男女登場。
踊りながら去る。
入れ代るように、客席下手より、ノラ登場。
続いて、キョロキョロしながらシェークスピア
登場。話しながら上手方へ。
シェークスピア「(回りを見回して。)わあ・・・大きな町ですね、
ノラさん!!高いビルが一杯並んでる!!
丸で、アメリカ中の人間が集まってるみたい
だ!!」
ノラ「馬鹿!呑気なこと言ってる場合じゃないぜ。こっからが
大変なんだから。」
シェークスピア「そうですよね。僕達、お金持ってないし・・・。」
ノラ「金持ってたって、人間様の乗り物に、俺達だけで乗れる
訳ないだろ!」
シェークスピア「・・・どうして?」
ノラ「どうしてもこうしても・・・。おまえは今まで、人間と同じよ
うに扱われて生活してきたから、分からないんだよ。俺
達は人間とは違うってことを・・・。」
シェークスピア「違う?そりゃ、見た目は確かに違うけど・・・。
(自分のなりを見る。)・・・何が違うんですか
・・・?」
ノラ「何がって・・・。もういいよ!兎に角、俺達が鉄道に乗る
には、人間に見つからないように紛れ込むしかないん
だから!さぁ、行くぞ!!」
ノラ、上手へ去る。シェークスピア、慌てて続く。
一時置いて、上手より目つきの悪い、髪を逆立て
た一匹の狼(サイコロ)、後ろを気にするように
登場。誰もこないのを確認すると、ホッとしたように
溜め息を吐き、下手後方へ横になる。
そこへ上手より、身を屈めながらノラ、シェークスピア
忍び足でゆっくり登場。
その時、人間の足音が近付き、声が聞こえる。
ノラ、慌ててボウっと突っ立っているシェークスピアを
押さえ付け伏せる。
人間1の声「今、この辺りに野良犬が2匹、ウロチョロしてるのが
見えたんだが・・・」
人間2の声「本当か?」
人間1の声「早いとこ見つけ出して、線路から追い出さないと。」
人間3の声「間もなくサンフランシスコ行き、発車します。ご乗車
のお客様はお急ぎ下さい。」
―――――“わんダフル!!MOMENT
―君と僕との素敵な出会い―”2へつづく―――――
※ シカゴまで出て・・・う~ん・・・一体この二人はどこら辺
で出会ったんでしょうね~・・・^^;多分、書いている時
には、その辺りの細かい設定も、自分の中では決まって
たんでしょうが、今は全く思い出せません(^_^;)
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http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
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