〈主な登場人物〉
チュー吉 ・・・ 子ネズミ。本編の主人公。
チュー五郎 ・・・ 風来坊の物売りネズミ。
チュー太 ・・・ チュー吉の兄。
トビ ・・・ オオタカの子分。
オオタカの親分。
チュー吉の母。
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「小さな扉・・・小さな煙突・・・小さなレンガを積み上げた
可愛い可愛い小さなお家・・・。そこは小さな小さなネズミ
さん達が住む、ネズミさん達の家だったのです。
その家の小さな窓から覗いているのは・・・この物語の
主人公、小さなネズミのチュー吉くんです。」
音楽流れ、幕が開く。
――――― 第 1 場 ―――――
チュー吉「あの高い高い場所に、キラキラ輝いている、あの綺麗
な・・・何だろう・・・あのキラキラ光っているもの・・・。晴
れた日の夜・・・辺りが暗くなると、決まって現われるん
だ・・・。」
チュー吉歌う。
“何だろう・・・
あの綺麗な輝き・・・
すぐそこに見えているけれど
手を伸ばすと離れて行く・・・
決して掴めそうで掴めない・・・
キラキラ輝く
あの不思議な光・・・”
チュー吉「そうだ!!今度の日曜日の母さんの誕生日に、あの
キラキラしたものを取りに行って、母さんにプレゼント
しよう!!母さん、喜ぶぞー!!飛びっきりの誕生日
プレゼントだ!!」
そこへ上手より、のんびりしたチュー吉の兄
(チュー太)登場。
チュー太「チュー吉!何を見てるんだい?」
チュー吉「兄さん!うん!ほら見て!あそこにキラキラ光る綺麗
な石が、沢山見えるだろ?あれを僕と兄さんで、取り
に行こうよ!」
チュー太「えーっ!?」
チュー吉「今度の日曜日の母さんの誕生日に、2人で(窓の外
の高いところを指差し。)キラキラ光る、あの宝石を取
りに行って、それをプレゼントしようよ!!」
チュー太「・・・光る・・・宝石・・・?」
チュー吉「そうさ!それを僕と兄さんで一つずつ取って来て、母
さんの右の耳と左の耳に付ける、綺麗な耳飾りを作っ
て、プレゼントしようよ!!」
チュー太「でも・・・そんな・・・あんなに高いところ(窓の外の高い
ところを指差す。)・・・だろ?そんなとこにどうやって取
りに行くのさ・・・。」
チュー吉「高いところと言えば・・・森の先にある“たかいさん”だ
よ!!あの山の一番高い場所に登れば、屹度手が届
く筈だよ!!」
チュー太「えー・・・“たかいさん”に登るのかい・・・?」
チュー吉「うん!!」
チュー太「僕・・・あんな高いところまで、屹度登れないよ・・・。」
チュー吉「大丈夫さ!!兄さんが疲れたら、僕が兄さんの背中
を押してあげるよ!!だから行こうよ、2人で!!あ
の“たかいさん”へ!!」
チュー太「でも・・・そんなに長いこと、留守にしたら屹度みんな
が心配するよ。」
チュー吉「ちょっと行って、さっと取って、直ぐに戻ってくれば、誰
も気付かないうちに帰って来れるよ!!」
チュー太「・・・そうかなぁ・・・」
チュー吉「そうさ!!だから行こう、“たかいさん”へ!!」
音楽流れ、チュー吉歌う。
“行こう行こう
あの山目指して
さぁ行こう
キラキラ光った宝物
探しに行くんだ
あの場所へ”
チュー太「でも・・・僕怖いよ、チュー吉・・・」
チュー吉歌う。
“大丈夫さ
僕と兄さん2人なら
力を合わせて
屹度行けるさ
あの場所へ”
チュー吉「さぁ、行くぞ!!」
チュー太「う・・・うん・・・」
2人、下手へ去る。
紗幕閉まる。
――――― 第 2 場 ―――――
紗幕前。(音楽変わる。)
上手より、大きな袋を担いだ大人なネズミ
(チュー五郎)ぶらっと登場。歌う。
“俺は宿なし
色んなものを売り歩き
その日暮らしの風来坊
俺はただのはぐれ者
一人きりで生きている
誰にも頼らず自分の力で
何をしようが俺の好き好き”
チュー五郎「さぁて・・・今日はどんな薬を頂戴するとするかな。
(笑う。)」
チュー五郎、下手へ去る。
――――― 第 3 場 ―――――
紗幕開く。と、森の中。
一軒の小屋が建っている。
そこへ上手より、チュー吉登場。その後に
続いて、疲れたようにチュー太登場。
チュー太「チュー吉!待って・・・待ってよ・・・」
チュー吉「早く来なよ、兄さん!」
チュー太「もう僕歩けないよ・・・(座り込む。)」
チュー吉「仕様がないなぁ、兄さんは・・・。ほら僕が背中を押し
てやるよ。」
チュー吉、チュー太の背中を押してみるが、
びくともしない。
チュー吉「う~ん・・・っと!!・・・よっ!!はっ!!駄目だ・・・!
全く動かない・・・。兄さんもちょっとくらい歩く努力して
よ・・・。」
チュー太「僕、お腹が空いたんだ・・・。」
チュー吉「お腹が・・・って・・・まだ家を出て、ほんの少ししか経っ
てないじゃないか・・・。朝ご飯、食べたばっかり・・・あ
れ・・・?兄さん、朝ごはん食べてないの?」
チュー太「だって、母さん達が起きる前に出発するんだって、
チュー吉にたたき起こされたから、そんなの食べる暇
なんてなかったよ・・・。」
チュー吉「何だ・・・そうか・・・。仕方ないなぁ・・・ほら、僕のビス
ケットを半分あげるよ。」
チュー太「ビスケット!?(嬉しそうに。)」
チュー吉「ほら・・・(ポケットからビスケットを取り出し、半分に割
りチュー太に差し出す。)」
チュー吉、残りの半分のビスケットを食べる。
チュー太「わぁーっ!!ビスケットなんて珍しいなぁ。こんな人間
の食べ物・・・人間の・・・?チュー吉・・・このビスケット、
どうしたんだい・・・?」
チュー吉「・・・え?貰ったのさ。」
チュー太「・・・貰った?誰に・・・?」
チュー吉「知らない。」
チュー太「知らないって・・・」 ※
チュー吉「だって毎日、扉の陰に知らない誰かが、ビスケットを
半分置いてくれてるんだ。」
チュー太「そんな!毒でも入ってたらどうするんだよ!!」
チュー吉「大丈夫さ!もうずっと長いこと食べてるけど、ほら、こ
の通り!ピンピンしてるだろ?(笑う。)」
チュー太「でも父さんがいつも言ってるじゃないか!人間が置い
た食べ物は、絶対に食べちゃ駄目だって!!どんな
恐ろしい毒が入ってて、あっと言う間に天国へ行っちゃ
うようなことになるかも知れないからって・・・」
チュー吉「心配性だなぁ、兄さんは・・・(笑う。)」
チュー太「だって・・・(手に持つビスケットを見る。)」
チュー吉「それ、食べないなら返してもらうよ。」
チュー太「あ・・・た・・・食べるよ!!食べるさ!!(手に持って
いたビスケットを、口に放り込む。)」
チュー吉「ね?美味しいだろ?」
チュー太「う・・・うん・・・」
チュー吉「でも一体・・・どんな人間が毎日、僕にビスケットを分
けてくれるんだろう・・・。」
音楽流れ、語るようにチュー吉歌う。
“屹度 君にとっても
大切な食べ物・・・
誰とも分からない僕の為に
毎日欠かさず置いてくれる
優しい・・・誰か・・・”
チュー太「そんなこと、どうでもいいだろ?あんまり人間なんて
ものに拘っちゃ、碌なことにならない。父さんの言い付
けは守った方がいいよ、チュー吉。」
チュー吉「分かってるさ!」
チュー太「(後方の小屋に気付いて。)あ、チュー吉!こんな森
の奥深くに家があるよ!」
チュー吉「え・・・?本当だ。誰が住んでるんだろう、こんな薄暗
い森の中に・・・」
チュー吉、小屋の方へ。
チュー太「あ!!待って・・・待ってよ・・・!!」
2人、小屋の窓から中を覗く。
その時、下手より鼻歌を歌いながら、
ぶらっとチュー五郎登場。
チュー五郎「俺は宿なし~・・・その日暮らしの風来坊~・・・」
チュー五郎、チュー吉とチュー太を認め、
その方へ。
チュー五郎「よおっ!」
チュー吉、チュー太「わあっ!!」
チュー五郎「何て声出すんだ。何見てんだよ、そんなとこで。」
チュー太「あー・・・ビックリした・・・。」
チュー五郎「ここは、人間の薬やだぜ?覗いたって何もいいもん
は出てこねぇ。」
チュー太「薬や・・・?」
チュー五郎「ああ・・・。どんな薬でも作ってくれるのさ。病気や
怪我だって忽ち治っちまう秘薬だぜ。但し・・・金さ
え払えば・・・だけどな・・・。」
チュー太「じゃあ僕達には関係ないね。」
チュー吉「おじさん・・・誰?」
チュー五郎「俺?俺か・・・俺様は・・・チュー五郎ってんだ。色ん
なものを売り歩いて生活している、ただの気紛れな
物売りよ。」
チュー太「・・・物売り・・・?」
チュー吉「物売りって、何を売ってるの?」
チュー五郎「何でもさ!その薬売りのばあさんが作った薬も売っ
てるんだぜ。」
チュー吉「ふうん・・・」
チュー五郎「そうだ!おまえさん達にピッタシの物を持ってるぜ。
」
チュー太「え!?何々?」
チュー五郎「(担いでいた袋の中を探すように。)えっと・・・どこ
へやったかなぁ・・・。おお、あったあった、これこれ!
(袋の中から、1本のハブラシを取り出す。)見てみ
ろ!!いいだろう!!」
チュー太「(ハブラシをマジマジと見て。)・・・何に使うの・・・?」
チュー五郎「これ?これはだなぁ・・・(ハブラシを反対にしてみた
りして、考えているように見入る。)えっと・・・そうそ
う、これは・・・こうするんだ!!(ハブラシで、背中
をゴシゴシ掻いてみる。)ほら!!こうやって背中が
痒くて堪らない時に、こいつでこうやって・・・掻くん
だ!!」
チュー太「へぇ~・・・っ!!」
チュー五郎「なぁ、便利だろう!!」
チュー太「いいなぁー・・・。」
チュー五郎「どうだ!!買わねぇか!?こんな森の奥深く知り合
ったよしみだ!安くしとくぜ!!」
チュー太「本当!?」
チュー吉「僕達そんな物いらないよ。もう行こう、兄さん。」
チュー五郎「おいおい、冷たいなぁ。これは気に入らねぇか?じゃ
あ他にも・・・」
チュー太「へぇ・・・今度は何が出て・・・」
チュー吉「兄さん!僕達は母さんの誕生日プレゼントを取りに行
くところなんだ。お金なんて持ってないし、急いでるんだ
。邪魔しないで。」
チュー五郎「誕生日プレゼント・・・?」
チュー吉「そうさ。」
チュー五郎「それなら・・・これはどうだ!飛びっきりの宝石だぜ。
」
チュー太「わぁーっ!!チュー吉!!見てご覧よ!!僕達が取
りに行こうとしてる、キラキラした石だ!!」
チュー五郎「これは“ダイヤモンド”ってんだ!!」
チュー太「ダイヤ・・・?」
チュー五郎「こいつは人間の世界でも、飛びっきり上等な石なん
だぜ!ちょっとやそっとじゃ手に入らねぇ。」
チュー吉「じゃあ、どうやって手に入れたの?」
チュー五郎「それは・・・まぁ、いいじゃねぇか。どうだ!こいつを
母さんの誕生日プレゼントにすればいいじゃないか
。」
――――― “チュー吉くんの星に願いを・・・”
2へつづく ―――――
※ 皆さんはご存じですよね^^;
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(どら余談^^;)
久しぶりに、人形劇用・・・とは言いつつ、あまりそう言った
制約に拘らず、“書くのが楽しい♥”と感じながら書き上げた
作品です(^^♪
だって、もし人形劇の舞台に仕上げようと思ったら、とって
も大変かも知れません(^_^;)
途中、人形劇でない舞台を頭で思い浮かべながら書いて
いたら、そりゃ人形劇舞台には・・・し難いですよね^^;
http://www.geocities.jp/littlepine2005/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227