――――― 第 3 場 ―――――
カーテン前。
上手よりゆっくりボールデン、部下ウォルター、
少し遅れて秘書シンディ登場。
ボールデン「(何やら深刻な顔付きで。)矢張りもっと早い時期
に、手を打っとくのだったな。」
ウォルター「しかし、もう遅すぎたと言う訳でもないのですし、バ
ーナード君が持って来る書類に目を通してから、早
急に対策を立てればまだ大丈夫でしょう。」
ボールデン「ふむ・・・。それで具体的な島の買い付け金額など
が分かれば・・・そうだな、それからでも遅くはない
だろう。全く、前回のリゾート計画ではプリンセスコ
ーポレーションに、まんまとしてやられ、今回のクリ
ア島には私の首がかかっているのだ。何としても
成功させなければ・・・。忌々しい会社だ。」
ウォルター「全くですね・・・。しかし問題なのは、バーナード君
の顔をプリンセスコーポレーションの社員に見られ
たと言うことですね・・・。」
ボールデン「その通りだ。だがそのことに関しては昨夜、バー
ナードから連絡を受けた時に、直ぐ手は打ってあ
る。ただ私としても、こんな手はあまり使いたくは
ないのだが・・・仕方あるまい・・・」
ウォルター「・・・では・・・ジャックを・・・?」
ボールデン「(ウォルターを見る。)」
ウォルター「・・・しかし・・・盗みはまだしも・・・ジャックを使うこ
とは・・・」
ボールデン「(思わずウォルターの襟元を掴む。)相変わらず
甘い奴だ!!私がどうやって今の地位まで上って
きたか知りもしないで、余計な口出しは止めてもら
おう!!」
ウォルター「・・・常務・・・申し訳ありません・・・」
ボールデン「(掴んでいた手を放す。)・・・言った筈だ、必ず成
功させると・・・。(振り返ってシンディを見る。)シン
ディ、ジャックをここへ。」
シンディ「はい。」
シンディ、上手へ一旦去る。
ウォルター、不安気な面持ちでシンディの
背中を見詰める。
ボールデン「(そんなウォルターに気付き。)なぁに・・・そんなに
心配するな。」
ウォルター「常務・・・」
ボールデン「何も今直ぐにその社員を捕まえて来て殺すと言っ
ている訳ではいのだから。時と場所は心得ている
・・・」
上手より再びシンディ登場。
シンディ「常務、呼んで参りました。」
ボールデン、ウォルター上手を見る。
上手よりいかにも怪し気な黒のスーツ
に身を包んだジャック、ゆっくり登場。
ボールデン「(ジャックに近寄りながら。)待っていたぞ。」
ジャック「(かけていたサングラスを外しながら。)今回の獲物
は?」
ウォルター「(驚いたように。)・・・今回・・・?」
ボールデン「(チラッとウォルターに目を遣る。)」
ジャック「この間みたいな爺じゃ、殺る気が起きないぜ。(ふて
ぶてしい態度で。)」
ボールデン「安心しろ。今度は女だ・・・。」
ジャック「女か・・・いいねぇ・・・。で?今直ぐか・・・?」
ボールデン「いや、まだだ。その時が来れば連絡をする。」
ジャック「なぁんだ、お預けか・・・。」
ボールデン「見張りはバーナードに任せてある。おまえは、い
つでも殺れるようにその準備を怠るな・・・。いいな
?」
ジャック「女の名前は・・・?」
ボールデン「プリンセス・コーポレーション社のシェイラ・ハミルト
ン・・・。」
ジャック「・・・シェイラ・・・(不気味に笑い出す。)」
ウォルター「何が可笑しいんだ!!」
ジャック「(笑いを止めて。)なんだかワクワクしてきたねぇ・・・」
ジャック、サングラスをかけて去る。
ウォルター「(溜め息を吐いて。)常務が彼と長い付き合いだと
は知っていましたが・・・。まさか・・・本当に・・・」
ボールデン「どうした・・・?」
ウォルター「・・・いえ・・・なんでも・・・」
ボールデン「あまり深く考え込むのは、おまえの為にもよくない
ぞ・・・(意味あり気にウォルターを見る。)」
ウォルター「はい・・・」
暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
カーテン開く。絵紗前。(社内の廊下。)
バーナード、ジェーン、お互いそ知らぬ顔で、
立ち止まりながら。
バーナード「彼女のことは分かったか?」
ジェーン「はい。シェイラ・ハミルトン・・・プリンセス・コーポレー
ションに入社して5年・・・以来、ずっと庶務課に勤務し
ています。父と母、姉の4人家族・・・現在はニューヨー
クシティのアパートに一人住まいをしています。社内で
の勤務態度は至って真面目・・・業務内容は事務一般
・・・と言っても、主に他の社員の雑用係で、何故か同
僚達からはあまり好かれていないようで、行動も単独
であることが多いようです。」
バーナード「・・・好かれていない・・・?(思わずジェーンの顔を
見る。)」
ジェーン「はい・・・。多分、彼女の見た目からだと思われますけ
ど・・・。」
バーナード「そりゃ可哀想だ。見た目と言っても、それは彼女の
せいでもないだろうに。」
ジェーン「・・・あなたはどう思われました?」
バーナード「いや・・・あの時は、自分の顔を隠すことで、精一杯
だったからな・・・。まぁいい、後は俺が自分で考える
。ありがとう。」
ジェーン「今、丁度向こうから書類の山を抱えて来るのが彼女
です。」
ジェーン、上手へ去る。
擦れ違うように、シェイラ、上手より登場。
バーナード振り返り、思わず可笑しそうに
シェイラに近寄る。
バーナード「やぁ・・・!」
シェイラ「こんにちは。(そのまま行こうとする。)」
バーナード「(慌てて。)重そうだね。半分持とうか?」
シェイラ「ありがとうございます。でも、これは私の仕事ですから
・・・」
バーナード「どこへ持って行くんだい?」
シェイラ「第1会議室です・・・」
バーナード「よし!(シェイラの持っている書類を、半ば強引に
取る。)持って行ってやるよ!」
シェイラ「(驚いて。)でも!」
バーナード「来いよ!(先に歩き出す。)」
シェイラ「(慌てて後を追いながら。)あの・・・でも・・・叱られます
から・・・!」
バーナード「俺が勝手にしたって言えばいいさ!」
2人、上手へ去る。
暗転。
――――― 第 5 場 ―――――
舞台上は第1会議室。
ジェイムス、会議用の机の上に、書類を
配って置いている。と、そこへ慌てて
ロベール、駆け込んで来る。
ロベール「ジェイムスさん!!大変です!!」
ジェイムス「(手を止めてロベールを認める。)どうした?慌てて
。」
ロベール「我々の“クリア島開発計画”の精細が書き込まれた
重要書類が、何者かによって盗み出されました!!」
ジェイムス「(思わず声を荒げて。)何だと!?それでどうした!
?」
ロベール「はい・・・それが・・・」
ジェイムス「何だ!!ハッキリ言え!!」
ロベール「NYインターナショナルに流れた模様です・・・!!」
ジェイムス「NYインターナショナルに流れたたど・・・!?それは
本当か!!」
ロベール「残念ですが・・・間違いありません。ある重要筋から
極秘に入手した情報です。それに金庫の中からは
確かに書類がなくなっているのです・・・。」
2人、暫く深刻な顔付きで考え込む。
その時、アルバート専務入って来る。
ジェイムス、アルバートを認め駆け寄る。
ロベール、続く。
ジェイムス「専務・・・申し上げ難いのですが、大変なことになり
ました・・・」
アルバート「どうした?」
ジェイムス「我々の計画が、何者かによってNYインターナショ
ナルに流されたのです。精細書類と共に・・・」
アルバート「(顔色が変わる。)何だと・・・!?何時だ!!」
ロベール「はい・・・3日前の極秘会議の後から、今日までの間
だと思われます・・・」
アルバート「何故もっと早くに気が付かなかったのだ!!馬鹿
者!!」
ロベール「(項垂れながら。)申し訳ありません・・・。まさかあの
金庫が破られるなどとは思いもしなく・・・」
ジェイムス「・・・だが、一体誰が・・・」
アルバート「兎に角、今日の会議は中止だ!!私の部屋で、
対策を立て直すぞ!!」
ジェイムス「はい。ロベール!メンバー達に今日の中止の連絡
を頼む・・・。」
ロベール「分かりました。」
アルベール「考えたくはないが・・・我々の社内に、奴らのスパ
イが紛れ込んでいる可能性があるな・・・。」
3人、出て行く。
一時置いて、書類を持ったバーナード
入って来る。シェイラ続く。
バーナード「どこに置く?」
シェイラ「あ・・・机の上に・・・。後は私がやりますから・・・。」
バーナード「OK!(机の上に書類を置く。)」
シェイラ「本当にどうもありがとうございました。重かったでしょう
?」
バーナード「(楽しそうに。)君はいつもこんな重い書類の山を
運んでるんだろ?」
シェイラ「あの・・・慣れましたから・・・」
バーナード「男共にやらせればいいのに。」
シェイラ「そんな!・・・あ・・・男子社員の方は、皆さんお忙しい
から・・・。それに私、暇ですし・・・」
バーナード「お礼してくれる?」
シェイラ「あ・・・今、私お金は・・・(困ったように。)」
バーナード「(微笑んで。)お金なんかいらないさ。今夜、僕とデ
ートしてくれれば、それでいい!」
シェイラ「(呆然と。)でも・・・私なんかと・・・」
バーナード「何?」
シェイラ「(下を向いて。)私なんかと・・・一緒にいると、あなた
が恥ずかしい思いをするだけです・・・。あなた、営業
課のバーナードさんでしょ?先月、入社した・・・」
バーナード「どうして僕のことを知ってるんだい?」
シェイラ「だって・・・うちの課の女子社員の間でも、あなたのこ
とはいつも噂になってます。私はただ聞いているだけ
ですけど・・・一目見て分かりましたわ・・・。だって、皆
が言うようにとても素敵な方・・・(小声になる。)だから
私なんかと・・・」
バーナード「(微笑んで。)僕も君のこと、知ってるよ。庶務課の
シェイラ・ハミルトン・・・入社して5年目・・・」
シェイラ「どうして・・・?」
バーナード「気になったから、ちょっとね・・・。黙って調べたりし
てごめん。」
シェイラ「・・・気になった・・・?」
バーナード「ああ・・・。一生懸命に働く君を見てるうち・・・君の
ことが好きになったのかも知れない・・・」
シェイラ「嘘でしょ・・・」
バーナード「どうして?」
シェイラ「だって・・・私・・・(下を向く。)」
バーナード「(シェイラの手を取り。)僕と付き合ってくれるかい
・・・?」
シェイラ「(驚いたように一時バーナードを見詰める。クスッと笑
って。)」
バーナード「可笑しい?」
シェイラ「ええ・・・。だって、今までそんな風に言われたこと、一
度だってないんですもの・・・。」
バーナード「・・・今夜、デートしてくれるかな?」
シェイラ「・・・バーナードさん・・・」
バーナード「バーナードでいいよ。」
シェイラ「・・・バーナード・・・本当に・・・?」
バーナード「ああ・・・」
シェイラ「(黙って頷く。)」
バーナード「よかった!じゃあ僕は行くよ!今からまた営業だ。
終業後に下のフロントで待ってるよ!」
バーナード、手を上げて出て行く。
シェイラ、答えるように手を上げて、
呆然とバーナードの背中を見詰める。
シェイラ「(呟くように。)夢を見ているのかしら・・・」
――――― “バーナード”3へつづく ―――――
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