――――― 第 12 場 ―――――
カーテン開く。(絵紗前。)
NYインターナショナル、ボールデン常務室。
ボールデン、煙草を燻らせ、窓辺に立ち下を
見ている。
シンディ、自分のデスクについて仕事をして
いる。
ボールデン「(外を向いたまま。)シンディ・・・」
シンディ「はい。(立ち上がる。)」
ボールデン「君は私の遣り方をどう思う?(振り返る。)私はただ
我武者羅に今まで突き進んで来た。たとえ、その遣り
方が法に触れることであっても、私にはそんなことは
どうでもいいことなのだ・・・。君は・・・いつも何も言わ
ないな・・・」
シンディ「私は常務の秘書ですから・・・。常務の為さることは私
には絶対です。」
ボールデン「・・・そうだったな・・・」
その時ジャック、行き成り扉を開け、
図々しい態度で入って来る。
ボールデン、シンディ、ジャックの方へ
振り向く。
ボールデン「ジャックか・・・」
シンディ、再びデスクについて仕事を
始める。
ジャック「(ボールデンのデスクへ行き、椅子に深々と腰を下ろし
机の上へ両足を投げ出す。)一体、いつまでお預けだ!」
ボールデン「まぁ、待て。もう直ぐバーナードが来る。」
ジャック「バーナード・・・?ああ・・・あの俺の獲物に惚れた男か・・・
」
ボールデン「惚れた・・・?一体、何の話しだね。」
ジャック「あいつは、あの女に本気で惚れちまったんだ。あんたに
ちゃんと協力するかどうか、怪しいぜ。」
ボールデン「(笑う。)何を言ってるんだ。あいつは私の右腕だ。
太陽が西から昇ることがあっても、あいつは私を裏切
りはしない・・・。」
ジャック「(ニヤリと笑って。)たいした信頼だ。まぁ、精々飼い犬に
手を噛まれないように、気をつけるんだな・・・。」
その時、ノックしてウォルター入る。
バーナード、続く。
ウォルター「常務、バーナードくんです。」
ボールデン「おお、来たか。待っていたぞ。」
バーナード「遅くなりました。」
ジャック「(椅子に座ったまま、片手を上げて。)よぉ・・・」
バーナード「(ジャックにチラッと目を遣るが、顔色を変えずに。)
今日はまた何か・・・?」
ボールデン「どうだ?プリンセスコーポレーションでも君は、優秀
な社員で通ってるそうじゃないか。」
バーナード「・・・まぁ・・・」
ボールデン「奴らもそんな君が、まさかライバル社の少壮重役だ
とは思ってもいまい・・・。(笑う。)ところで2人に今日
来てもらったのは・・・」
ジャック「(立ち上がってボールデンに近寄る。)いつ殺る・・・?」
ボールデン「・・・次の休日に・・・」
ウォルター「次の休みと言えば・・・カーニバルの日ですか・・・?」
ボールデン「・・・そう・・・」
ジャック「その騒ぎに紛れて・・・か・・・場所は・・・?」
ボールデン「・・・港の倉庫・・・バーナード、君はそこまで彼女を連
れて来るんだ・・・。」
ジャック、目を輝かせてバーナードの方を
見詰める。
バーナード「・・・分かりました・・・」
ジャック、バーナードのその返事に、一瞬
意外な面持ちをする。
バーナードとジャック残して、カーテン閉まる。
ジャック「案外、あっさり返事しましたねぇ・・・私はまた、少しくらい
は駄々を捏ねるのかと思いましたよ。」
バーナード「・・・安心したか?おまえの邪魔をするようなことを口
走らないで・・・」
ジャック「まぁ・・・ね・・・(ニヤリとして。)しかし・・・あの時あれ程、
向きになって私を止めようとしていたあなたが、どう言った
心境の変化ですか?」
バーナード「・・・心境の変化・・・?さぁ・・・俺は最初から・・・俺が
常務を裏切るなど有り得ない・・・。」
ジャック「ほう・・・もう飽きたと言う訳ですか・・・。あなた程の人だ、
女なんか放っておいても向こうから寄って来るでしょう・・・。
なのにまた、なんて真剣で純粋な恋をしたものだと、少々
驚いてもいたのですが・・・。矢張り・・・あなたにとって、恋
など道楽の一つであった訳だ・・・」
バーナード「・・・何が言いたい・・・」
ジャック「しかし彼女の方は、そう言う訳にはいかないでしょう・・・
?何せ初めての恋だ・・・。屹度あなたに振られて、落ち
込んでいるでしょうねぇ・・・」
バーナード「違う!!彼女の方が!!・・・彼女が俺を裏切ったん
だ・・・」
ジャック「(驚いたような面持ちで、肩を窄める。)おやまぁ・・・」
バーナード「もう・・・放っておいてくれ!!」
バーナード、遣る瀬無い表情で上手へ出て行く。
ジャック「(バーナードの背中を見詰めたまま。)・・・燃え上がって
いる2人を引き離すのは・・・最高の快感ですよ・・・(笑い
ながら、下手へ出て行く。)」
暗転。
――――― 第 13 場 ―――――
カーテン開く。舞台上はプリンセス・コーポレーション社
フロント。(正面に受付。下手に出入り口。上手は社内。)
就業後、社員たちが帰宅の途についている。
フランク、受付嬢ミリーと話している。
フランク「ねぇ、ミリー!今度一回俺とデートしない?美味い日本
料理の店、見つけたんだ!それでその後、夕暮れの港
を散歩するんだ。どう?ロマンチックだろ?」
ミリー「(机の上を片付けながら。)いやあよ。フランクったら、一体
何人の女子社員にそんなこと言って、デートに誘ってるの
?ジュディが知ったら怒るわよ。(笑う。)」
フランク「白けるなぁ・・・彼女とは付き合ってるけど、まだ結婚する
って決めた訳じゃないし、若いうちはどんどん遊ばなきゃ
!!そうだろ?」
ミリー「そうねぇ・・・あなたの言うことも分からなくはないけど・・・」
フランク「だろ!?」
ミリー「でも、もし私がジュディの立場だったら、矢っ張り怒るけど
なぁ。」
フランク「ははぁん・・・さては誰か好きな奴がいるんだな!?」
ミリー「さぁ・・・(恍けたように。)」
フランク「誰だよ!!俺の知ってる奴か!?あー!!ひょっとして
おまえもバーナードさんじゃないだろうな!?」
ミリー「おまえも・・・って何よ!!私の他にも誰か彼のこと狙って
る女いるの!?あ・・・(仕舞ったと言った表情で。)」
フランク「矢っ張り・・・。バーナードさんは駄目だよ!!いくらおま
えが熱を上げたところで、高嶺の花って言うもんさ!!
バーナードさんには彼女がいるんだぜ。」
ミリー「庶務課のシェイラでしょ?」
フランク「なんだ、知ってるんだったら・・・」
ミリー「あら、だって2人はこの間、別れたって言う噂よ。」
フランク「えー!!本当に!?」
ミリー「何よ、フランクったら、バーナードさんの腰巾着やってるくせ
に、知らなかったの?」
フランク「どうりで最近、機嫌が悪かった筈だよ・・・って言うことは
・・・待てよ!!シェイラは今、フリーって言うことか!!
やったね!!バーナードさんと付き合ってるんなら、見込
みないと思ってたけど、フリーとなりゃ・・・」
ミリー「よくやるわね・・・」
ジュディ出て、フランクを認め歩み寄る。
ジュディ「フランク!!また女、口説いてる!!」
フランク「(振り向いてジュディを認め、驚く。)ジュディ!!いや・・・
そんなんじゃないんだ・・・!!ちょっと彼女が暇そうにし
てたんで、話し相手になってやってたんだ!な!!ミリー
!!」
ミリー「まぁ!!調子いいわね!!ジュディ!!彼は首に縄付け
といた方がいいわよ!!お先です!!」
ミリー、足早に出て行く。
フランク「(気不味そうに。)君を待ってたんだよ!!ジュディ!!」
ダイアナ、ジャッキー、フィービー、ハッティ出る。
ジャッキー「あああ・・・折角、明日は休みだって言うのに・・・誰も
誘ってくれないなんて、淋しいわよね。」
フィービー「うちの課の男子社員ときたら、シェイラ!!シェイラ!!
って・・・」
ハッティ「もう、頭にきちゃうわ!!」
ダイアナ「今までh足蹴にしてたくせに・・・スティーヴもスティーヴよ
!!折角のカーニバルは一体誰と行けって言うの!?」
ジャッキー「私たちは淋しく女同士で楽しみましょう。」
ハッティ「でも、バーナードさんとシェイラが別れたって噂、本当か
しら!?」
フィービー「そうそう!!理由は分からないけど、つかつかと歩み
寄ったバーナードさんが、シェイラに平手打ちを食わせ
たんだって!!」
ジャッキー「本当!?」
フィービー「例によって、シェイラに取り巻いてたうちの男子社員
たちが、見たって騒いでたもの!」
ハッティ「何があったのかしら!?ダイアナ、知ってる!?」
ダイアナ「・・・ど・・・どうして私が知ってるのよ!!知ってる訳な
いじゃない!!(焦る。)」
ハッティ「そっか・・・そうよねぇ・・・」
――――― “バーナード”9へつづく ―――――
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