あの東日本大震災の当日。
私は、対面朗読の仕事のため、高田馬場にある点字図書館へ行こうと、西武新宿線に乗っていた。
昼間の2時ころは、車内もまばらの乗客だった。
突然、立っていられないほどの揺れを感じた。
電車は駅でない場所で停車した。
何が起こったのか、アナウンスもなく、皆、心配そうな顔。
スマホを持った学生さんが、何事が起ったのか、車中の人々に教えてくれた。
なんでも、東北あたりで地震があった模様…だと。
その後、電車の先頭車両が近くのホームまでノロノロと移行。
皆は、車内を先頭車両まで歩き、落合駅で、やっとホームに出れた。
その後、皆と一緒に歩いて高田馬場へ。
不思議なことに、妙な連帯感が芽生え、皆、高揚してる気分だ。
結局、その日は家に帰れず、図書館に泊めていただいた。
公の都の図書館ということもあって、行きずりの方々も、避難してこられた。
炊き出しの暖かな珈琲やおにぎりが、有難かった。
図書館にあるピンクの電話の前は大行列。
携帯も通じなくなり、公衆電話だけが唯一の連絡網だった。
皆、簡単に連絡を取ると、次の人へ席を譲る。
次から次へと、テレフォンカードが回っていく。
あの時くらい、人の優しさを感じたことは無い。
今でも、誰が下さったのか存じ上げないが、私の手元には、テレフォンカードが1枚残っている。