(2014-05-17 15:01:12を更新 第3稿)
鹿児島県を地盤とし,売上高では九州・沖縄のスーパーで4位のタイヨーとセブン&アイ・ホールディングスが「資本業務提携か」,こんな憶測が業界筋で流れた。
タイヨーは昨年7月、経営陣による株式買収、いわゆるMBOで大証二部及び福証の上場を廃止した。その理由の一つに,セブン-イレブンの鹿児島進出があげられる。2011年3月に霧島市に初出店,2014年3月末には152店を展開している。これによりタイヨーも少なからぬ影響を受け、それが上場廃止に踏み切った一因とされる。
タイヨーの公式発表によると,同社が上場廃止に踏み切ったのは、長年の不採算店を閉鎖、既存店の強化を図り、減収増益の経営モデルを作り出すことにある,とする。こうした経緯から,清川和彦社長は「同業大手との資本提携や保有株式の売却は有り得ない」と断言しているという。三井住友銀行から155億円の融資を受け、上場廃止に踏み切ったことからも、直ちに身売りは考えにくい話ではある。
では、なぜセブン&アイなのか。その根拠は、鈴木敏文会長が打ち出したオムニチャネル戦略構想にある。オムニチャネルの概念は,実店舗(リアル)とネット通販(ネット)の融合で、顧客はいつどこにいても、欲しい商品を買い,受け取ることができる,という仕組みである。
そんな購買行動の変革を,国内に17,000店以上の店舗網を持つセブン&アイグループがリードする。そして構想実現に欠かせないのが、ネット通販に融合する実店舗の全国展開である。M&Aに慎重であったセブン&アイが、このところ,相次ぐ資本業務提携に動く理由・動機もこの点にある。
ネットを使ってのオムニチャネルの実証実験は、今年4月から九州で開始された。セブンイレブンをベース基地として,御用聞きに出向き,その場でタブレット端末を使い注文を受け,配達するという,実験である。配達は,ヤマト運輸や日本郵便といった物流機関に委託(外注)するのではなく,セブンイレブンが自ら行うという点が,オムニチャネルの核心である。
セブン&アイのこうした動きは,高齢化や過疎化が進行する鹿児島県を地盤とするタイヨーにとっては,ボクシングのボディーブローにも似て中長期的なダメージ(影響)が懸念される。
「数年後の再起を期す」,タイヨーではあるが,その業績いかんでは,融資先の金融機関が、テコ入れに入るのは当然のことであろう。三井住友銀行がセブン&アイのメインバンクであることも,なにやら伏線めいている。
参考:「激流」 2014-June p61~p62
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┃★┃ オムニチャネル
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オムニチャネルとは,文字通り「すべてのチャネル」という意味で,あらゆるチャネルを連携させて顧客にアプローチする概念・手法である。2011年に米国の百貨店,メーシーズの「オムニチャネル企業を目指す」との宣言から,注目を集めるようになった。セブン&アイ・ホールディングスでは,傘下のネット通販会社,実店舗(リアル店舗)としては,ヨークマート,ヨークベニマルといった食品スーパー ,専門店の赤ちゃん本舗やロフト,百貨店のそごうや西武百貨店,さらには総合スーパーのイトーヨーカ堂,そして全国に17,000店展開するセブン-イレブンのネットワーク化による,オムニチャネルを形成を目指している。
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>>>タイヨーのMBO
スーパーのタイヨーは、MBO(経営陣が参加する買収)を実施した。同社の清川和彦社長の資産管理会社、清和産興(鹿児島市)が、全株式の取得を目指しTOB(株式公開買い付け)を実施した。大手スーパーとの競争が厳しさを増すなか、MBOにより迅速に意思決定ができる体制を構築し、改装などを通した既存店の収益力改善を狙う。
TOB価格は30日終値より28%高い1株1100円で、取得総額は最大155億円。株式取得資金は銀行から借り入れた。
⇒⇒ 鹿児島の食品スーパー タイヨー 「経営陣のMBO成立」・3 2013-11-03
鹿児島の食品スーパー タイヨー 「経営陣がMBO」・2 2013-10-22
鹿児島の食品スーパー タイヨー 「経営陣がMBO」・1 2013-10-20
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>>> セブン&アイ・ホールディングス 2491億円と過去最高の営業利益
セブン&アイ・ホールディングスは、2013年3~11月期の連結営業利益が前年同期比で15.1%アップの2491億円だった。これは過去最高益であり、5年ぶりの更新となった。こうして営業利益が伸びたことには、国内や国外のコンビニエンスストア事業がけん引役をはたしたほか、金融関連も大きく寄与している。
コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンは国内での新規出店に加え、既存店売上高に関しても前年同期比で1.8%のアップ。その伸長は止まらない。こうした順調な伸長の主因としては,コンビニの店頭で淹れたてのコーヒー「セブンカフェ」や、高価格帯の「セブンゴールド」を中心とする、プライベートブランド(PB)商品の好調な売れ行きなどがあげられる。
国内でのコンビニエンスストアの数は2013年11月末で1万5992店舗、前期末と比べると920店舗増加している。そしてセブン-イレブン・ジャパンは2014年2月期には1500店舗、2015年の2月期には1600店舗との新規出店を計画しており、その積極出店を緩める気配はない。
⇒⇒ 鹿児島のタイヨーにセブン&アイが触手? その2
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・ 丸和運輸機関 物流改善メニューでスーパーが抱える七つの課題を解決
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・ セブン&アイ・ホールディングス 現場を知り尽くすオムニチャネルの実証実験
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【第1特殊】 進化する「近くて便利」
■セブンの進撃 <二つの競争力> セブンが向かう所に敵はあるのか
<スーパー侵食> 「普段の食事」をセブンが攻める
<視点>セブンプレミアムに見える生産重視の姿勢
<オムニ戦略> 鍵を握るセブンの「拠点化」
<視点> 物流の構築がオムニチャネルのポイント
<外食バトル> コーヒー激突「セブンvsマック」
<視点> セブンカフェの「先」に何があるのか?
<出店の脅威> 「質の高い大量出店」で独走
<商品戦略>
「近くて便利」の完成度高める
<差別化MD> 拡大するチルド「即食ライン」
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【第2特集】 大手3社の寡占化、「個店格差」広がる
■13年度コンビニ総決算
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【第3特集】景気浮揚で強まる採用競争を乗り切るポイント