いま,九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の手続きがは大詰めを迎えつつある。地元同意の手続きがも進んでおり,川内原発の再稼働は,既定の事実になりつつある。
報道によると,九州電力は24日,川内原発1,2号機の再稼働に向けた認可手続きで,未提出だった書類を原子力規制委員会に提出した。規制委はこれらをもとに詳細な設計などを審査する。審査を通れば,現地での設備の検査に移る。それぞれ1~2カ月かかる見通しで,再稼働が可能になるのは年明け以降の見通しという。
川内原発の再稼働をめぐっては,規制委が9月に安全対策の主要部分を許可。地元の同意手続きが焦点になっていた。この点に関しては,薩摩川内市の市議会原発対策調査特別委員会(10人)が同原発の再稼働に同意していることもあって,28日に開かれる薩摩川内市の臨時市議会で賛成の陳情が採択される見通しという。
また,宮沢洋一経済産業相が23日,経済産業省内で薩摩川内市の岩切秀雄市長と会談した際に,「大臣が代わったからといって、方針に一切変更はない」と述べ,再稼働手続きを進めることを強調している。
>>>「原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指そう。」 との提言
日本における原発再稼働,さらには原発容認論の根底は,概ね経済成長を前提にしている。だが,成長路線は行き詰まっているし,「縮小社会の到来を予測し」,経済成長を前提とした発想からの脱却を主張し,その観点から原発再稼働,さらには原発容認論に異を唱える考え方もある。
その論者は,経済成長への執着を捨てない限り、社会の破滅は免れない。縮小社会という理念を、社会システムおよび経済活動のスタイルとして確立し,原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指そう。」 と訴えている。
◆経済成長を前提とした発想からの脱却
仮に2%の成長を実現していけば、35年で経済規模は2倍になる。2倍の経済規模を実現するには、資源もエネルギーもざっと倍近くの量が必要となる。それだけの資源やエネルギーはどこから調達するのでしょうか。ましてや世界中の国々が同じように成長を競えば、必然的に資源の面から行き詰るのは明らかである。つまり,成長路線は破たんすることが避けられないのである。
出典:松久寛 『縮小社会への道―原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指して 』日刊工業新聞社 2012年4月 220p
●松久/寛
1947年大阪府生まれ。工学博士。京都大学名誉教授。1970年京都大学工学部卒業、1972年米国ジョージア州立工科大学修士卒、1976年京都大学工学研究科大学院博士課程単位取得退学。同年より京都大学で機械工学、とくに振動工学の研究に従事。2012年3月京都大学を定年退職。また、1973年より京都大学安全センターを設立し、公害や労働災害の支援活動に従事。2008年に縮小社会研究会を設立
縮小社会への道―原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指して (B&Tブックス)
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<一般社団法人 縮小社会研究会 設立趣意書 >
http://shukusho.org/data/prospectus.pdf
成長路線はすでに行き詰まっている。化石燃料の枯渇、環境の悪化は警告されて久しいが、その対策は将来の科学技術の進歩に期待するとして、経済成長路線を走ってきた。毎年何パーセントという指数関数的成長を続けるには、資源も土地も毎年何パーセントずつ増えねばならない。たとえ2%の成長でも、100年後には7.2倍、200年後には52倍になる。それは不可能であり、破滅に至る。しかし、その前に世界は弱肉強食の資源争奪戦争に陥る。すでに石油をめぐる戦争は始まっている。そこで、脱成長や持続可能性が議論されるようになりできた。「持続」と言っても、今の経済成長率の持続、今の生活の持続、環境や資源の持続など、何を持続するかに上りで方向性は異なる。要は、こどもたちが将来困らない上うに資源や環境を持続させることである。
そのためには、資源の使用量を縮小小するしかない。たとえば、現在100年分の化石燃料があるとすると、毎年1%ずつ使用量を減らしていけば、永遠にあと100年分の資源が残りでいる。それ以上に使用量を減らせば、資源の残存年数は増加していく。これが、資源争奪戦争を回避する有力な方線である。環境に関しては、地下に眠る化石燃料を使用する限り空気中の二酸化炭素は増加し続ける。化石燃料使用の縮小で二酸化炭素の増加を軽減することはできる。もちろん、新たな資源や技術が見つかれば、そこで細小プランを修正すれば上い。しかし、見つかるだろうと想定して成長を続けることは、破滅への道に他ならない。
現代社会における経済様式は、成長とグローバルな競争を前提とした大量生産・大量消費である。その結果、我々の生活はものにあふれ、ものに依存し、ものに振り回されている。成長路線はすでに幸福より社会の歪み拡大を招いている。一方、縮小社会は、地産地消で省エネルギー・、エコロジカルかつ丈夫で長持ちのものを生産する社会である.我々はものの呪縛から解放され、各々が創意工夫して生活を作ることになる。福島の原発事故後に電力使用量は1割削減されたが、これは縮小社会への道が不可能ではないことを示唆している。幸福はものの豊富さだけではなく、他者との共生や創造的な仕事から得られる。さらに、縮小することに上り次の世代への責任を果たすことになる。
以上のように、従来の成長路線はすでに行き詰まりでいるが、この先の破局を回避するには、現代社会の物質的規模を縮小することが必要である。そこには、資源、技術、環境、食糧、人口、国際的・国内的な格差、経済不況、国際紛争など多くの問題が横たわっている。各分野の人たちが知恵を出しありで、これらの問題の解決港を見出していくために本研究会を設立する。
2013年1月22日
設立時代表理事 松久 寛
出典: http://shukusho.org/data/prospectus.pdf