薩摩藩“留学生”派遣から151年 -
幕末の1865年に,当時の薩摩藩から森有礼(初代文部大臣),五代友厚(初代大阪商高会議所会頭) ら19人の若者がイギリスに派遣されてから,ことしで151年。薩摩藩は,西洋の文化や技術を学ばせようと,若者たち19人をイギリスに派遣した。留学先の英国でサツマ・スチューデントと呼ばれたという。このうち14人が留学したロンドン大学には,薩摩藩に先立って留学した長州藩の5人の名前も共に刻まれた記念碑が建てられており,薩摩の留学生の学籍簿も残されているという。
彼らは,西欧の学問や技術を習得し日本の各分野で偉大な業績を残した。
・新納 久修(留学生連の団長格、家老となる。)
・寺島 宗則(博物館創立者、元老院議員)
・五代 友厚(紡績桟桟の買い付け、初代大阪商工会議所会頭)
・堀 孝之(英語通訳)
・町田 久成(海軍測量学を学ぶ)
・村橋 久成(陸軍学術を学ぶ、洋式農業の技術導入、サッポロビール創設)
・畠山 義成(陸軍学術を学ぶ、初代東京開成学校長〈現東京大学〉)
・名越 時成(陸軍学術を学ぶ)
・放鳥 尚信(法律・政治を学び、日本発の外交官として仏に駐在)
・朝倉 盛明(科学を学ぶ、兵庫県生野高山局長)
・中村 博愛(医学を学ぶ、語学教授の後外交官となる)
・森 有礼(海軍測量学を学ぶ、初代文部大臣)
・書田 清成(海軍測量学を学ぶ、中米行使、農商務官を勤める)
・市来 和彦(海軍測量学を学ぶ、海軍兵学校長)
・高見 弥一(海軍測量学を学ぶ、鹿児島で中等学校教諭となる)
・東郷 愛之進(海軍機械術を学ぶ)
・町田 申四郎(海軍機械術を学ぶ)
・町田 清蔵
・長澤 鼎(アメリカへ移り、ぶどう園を経営しぶどう王といわれる)
◆薩摩スチューデント若き薩摩の群像
※ 鹿児島中央駅東口前に建つ 「若き薩摩の群像」 2010年4月撮影
路面電車が行き交う鹿児島中央駅の東口に,「若き薩摩の群像」という銘がつけられた銅像が建つ。群像は鎖国が続いていた幕末英国に留学させた19人の若者を讃えて建てられたものである。空を抱くように両手を広げる像,本を片手に思索にふける像は,それぞれの人生をモチーフとしたものであろう。
いちき串木野市 「薩摩藩英国留学生記念館」
薩摩藩がイギリスに送り出した,19人の若者に思いを馳せ,その偉業を、後世に引き継ごうと,若者たちが旅立ったいちき串木野市羽島に「薩摩藩英国留学生記念館」が建てられ,公開されている。
記念館の建物は西洋式の建築構造とレンガや漆喰などの薩摩藩由来の素材や技術を組み合わせて作られ,留学生たちの功績などを記したおよそ400点の資料が展示されている。
記念館は鉄筋コンクリート2階建てで,外観は明治初期の鹿児島城下でも見られた赤れんがの壁面と, 和瓦の屋根を組み合わせた「薩摩式洋館」をイメージしている。
1階では、羽島で薩摩藩や藩士らが出発の準備を進める時のことを紹介。2階には,英国での写真や日記などを展示しているほか、何を学んだかや,その後の人生を知ることができる。
収蔵史料数は約400点。密航を幕府に隠すため、甑島と奄美を視察しているかのように装った偽の辞令書、出発前に詠んだ和歌などが展示されている。
1階にはカフェ、グッズ販売所、図書コーナーを備えています。 開館時間は午前10時~午後5時。火曜休館。入館料は高校生以上300円。小中学生200円。問い合わせは同館(0996・35・1865)へ
【名 称】:薩摩藩英国留学生記念館
【所在地】:いちき串木野市羽島4930番地 羽島浦黎明公園内(羽島漁協前)
【構 造】:鉄筋コンクリート構造・地上2階建
【延床面積】:675平方メートル(1階400平方メートル、2階275平方メートル)
◆羽島
羽島は,東シナ海に突き出た岬方向に位置する港町。ちりめんじゃこの産地で知られる。この地が,薩摩藩の英国留学生が船出をした場所でもあり,外洋へのロマンが味わえる。