・今日の花言葉
12日 |
カザグルマ |
心の美しさ 高潔 |
島尾敏雄の小説『死の棘』(1977年)は,日本文学大賞、読売文学賞、芸術選奨を受賞の私小説です。1990年には,松坂慶子,岸部一徳主演で映画化もされています。この小説は,"夫婦の絆とは何か,愛とは何かを追求した凄絶な人間記録”と高く評価されてきました。このうたい文句につられ,いささか危なっかし我が身を律すべく,『死の棘』(1977年),『「死の棘」日記』を読み始めました。
それが,昨年秋,梯(かけはし)久美子著が,『狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ』で,実は死の棘のストーリーは,”本を売るための夫婦間での作り事だった”,作家の島尾敏雄は,精神に異常をきたしていた,さらには仮面夫婦であったとの衝撃的な事実を綿密な資料分析と当事者へのインタビューに基づき,その内幕を推察して(暴いて)います。
さび付き気味の我が頭では,『狂うひと「死の棘」の妻・島尾ミホ』に書かれている事の真相とその意味するところを容易には理解出来ず,3冊を読み返しているところです。
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夏の終わりのある日,小説家の私(トシオ) が外泊から家に帰ってくると,木戸にも玄関にも鍵がかかっていた。
胸騒ぎがして,仕事部屋にしている四畳半のガラス窓の破れ目から中を見ると,机の上にインキ壷がひっくりかえっ
ている。
台所のガラス窓を叩き割り流しに食器が投げ出されているのを見た私は,遂にその日が来たのだと思う。仕事部屋
に入ると,机と畳と壁にインキが浴びせかけられ,その中に私の日記帳が捨てられていた。 ‥『群像』昭和三十五年四月号)
▼ 夫婦とは、愛とは何かを問いかけてやまない・・・・・
結婚八年目,妻(ミホ)が,新進作家として世に出た夫(島尾敏雄)の日記を読んだとき。そこには他の女性との関係が書かれていた。それを読んでミホは精神の均衡を失ない,狂の人となった。
その後の島尾夫婦の修羅は敏雄の『死の棘』によってよく知られている。「狂うひと」と看病につくす夫。二人は「戦後文学史に残る伝説的なカップルとなった」。
ミホが日記を見て狂乱したときから二度目の入院の直前までの日々を島尾がのちに綴った長篇小説 『死の棟』(昭和35年から51年まで順次発表,単行本は52年刊行)は,単行本の発行部数は30万部を超え,純文学では異例のベストセラーとなった。
刊行当初,『死の棘』は,自身の浮気によって妻を狂気に追い込んだ作家の私小説として話題を呼び、読者を増やした。
小説『死の棘』は,純文学の名作と評価されて読売文学賞,日本文学大賞を受賞。純粋,稀有な夫婦愛を描いた作品として評価を高めていく。そして妻ミホは,無垢で激しい愛ゆえに狂気に至った女性として,聖女ともたとえられるようになった。
こうして島尾とミホ夫婦は,戦後文学史に残る伝説的なカップルとなる。そして,「私小説の極北」とも絶賛された小説『死の棟』は,戦後文学の傑作とも評価されてきた。なお,平成2(1990)年には小栗康平監督によって映画化され,カンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞している。
だが,事の真実は,・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
(出典:『狂うひと』p1,p32~p34)
>>> 「狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ」(梯 久美子/新潮社)
ノンフィクション作家・梯(かけはし)久美子著,『狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ』で,綿密な資料分析と当事者へのインタビューに基づき,実は「死の棘」のストーリーは,”本を売るための夫婦間での作り事だった”,作家の島尾敏雄は,精神に異常をきたしていたのでは,さらには仮面夫婦であったと,その内幕を推察している。
・長男で写真家の島尾伸三によれば敏雄には裏日記と呼ぶべき、もうひとつの日記があり、それを隠していたという。
・長男の伸三氏の言。 「あの人(※父・島尾敏雄)は死ぬ順番を間違えた。母(ミホ)より先に死ぬべきじゃなかったんです。そうしたら,何だって自由に書けたのに」。
・梯氏は関係者の話から,愛人が誰かをつきとめる(本書では仮名にされている)。彼女は,自殺したらしい。
・「狂乱する妻」とされたミホは,実は精神は正常で才能豊かな作家であった。
・ミホは島尾の死後三十年間,喪に服していたと言う。そこに夫婦の愛憎の深遠さ,女性の怖さが垣間見える。
>>> こんな推論も ...........................
・『死の棘』に描かれていた日々のきっかけは,たまたま浮気がバレたのではなく,敏雄がバレるように仕向けたのではないか。
・本を売るための夫婦間での作り事だったのでは
・島尾敏雄は,ミホがわざと日記を読むように仕向けたのではないか
・島尾敏雄は,精神に異常をきたしていた
・仮面夫婦であった
・妻のミホの方が,敏雄より文才に優れていた
(この稿,続く-次回掲載は5/26)
>>>夫婦とは,愛とは-『死の棘』島尾敏雄からの問いかけ 掲載記事一覧
・夫婦とは,愛とは何か-『死の棘』島尾敏雄からの問いかけ・2 (2017-5-12)
・夫婦とは,愛とは-『死の棘』島尾敏雄からの問いかけ・1 (2017-5-8)
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>>>尾敏雄没後30年,「幻の日記」初公開 かごしま近代文学館
2016年11月に没後30年を迎えた作家・島尾敏雄(1917〜86年)の“幻の日記”を紹介する企画展が,2016年11月14日まで鹿児島市のかごしま近代文学館で開かれた。2年かけて修復を終えた7冊を初公開。代表作「死の棘」で描いた,敏雄の女性問題など夫婦の葛藤へ至るまでの日々が記されている。
記録魔だった島尾は生涯日記をつけ,小説の題材にした。7冊は52(昭和27)〜54年,神戸から上京し執筆に励んでいた頃のもの。妻ミホさん(故人)が廃棄したとされていたが,2010年に奄美市の自宅で遺族らが見つけたという。
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◆かごしま近代文学館・メルヘン館
梅崎春生,海音寺潮五郎,林芙美子,椋鳩十,島尾敏雄,向田邦子など,鹿児島にゆかりのある28人の作家を紹介する近代文学館と童話の主人公の人形を展示するメルヘン館を併設する。
住所:〒892-0853 鹿児島市城山町5-1 TEL.099-226-7771 FAX.099-227-2653
◆開館時間 9:30~18:00(入館は17:30まで) ◆休館日:火曜日(祝日の場合は翌日),12月29日~翌年1月1日
◆入館料 2館共通券 大人500円,小・中学生250円/単独券 大人300円
◆アクセス-鹿児島中央駅から
・市電:2系統鹿児島駅行き(約7分)→「朝日通」下車、徒歩7分
・東口バス乗り場 東4~6番より天文館、市役所方面行き(約9分)
→「金生町」下車、徒歩7分
・東口乗り場 東9番よりカゴシマシティビュー(約11分)
→「西郷銅像前」下車、徒歩3分
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