少子化、コロナ禍のいま、鉄道は危機に瀕している。
JR九州が8月に公表の「線区別ご利用状況(2021年度)」によると、1キロ当たり1日平均乗客数が2千人を下回った13路線18区間すべてが赤字で、赤字の合計額は51億3000万円。区間別の赤字額は、日豊線の佐伯―延岡の6億5900万円が最大。次いで、久大線の由布院―大分が5億3800万円、指宿枕崎線の指宿―枕崎が4億9400万円と、不採算路線の低迷は続く。
▼JR九州 路線図
こうした状況下にあって、『国鉄ー「日本最大の企業」の栄光と崩壊』 (中公新書)は、国鉄の歴史に何を学ぶべきか、を語っている。
著者の石井幸孝氏は、1987年の分割民営化でJR九州の初代社長に就任。JR九州の経営を軌道に乗せ,1997年,会長就任,2002年退任。 経営環境の悪い三島会社であるJR九州の経営を軌道に乗せた著者の実績に基づく提言は説得力を持つ。
少子化、コロナ禍のいま、鉄道は危機に瀕している。国鉄の歴史に何を学ぶべきか、元JR九州社長が語る。
JR九州の経営改革 (p322-324)
JR九州の経営改革 (p322-324)
●「お客さま第一」 「地域密着」 のスローガン
JR九州ではスローガンを 「お客さま第一」「地域密着」 に決めた。わかりやすく、国鉄時代にはできていなかったことである。まず、失われてきたお客さまを、運賃の値上げをしないで増やすことを最優先にした。列車のスピードアップをおこない、都市間特急も、都市圏快速・普通列車の組み合わせも増発し、利便性を高めた。沿線の大学や企業・自治体などと相談して、新駅を多数設置、しかも民営化の半年前からすぐに実行した。決めたことを即実行することも、重要だ。
国鉄時代の「利用者」という言葉は廃止した。部外、部内を問わず「お客さま」 という言葉しか使わないことにした。部内で 「利用者」なんて言葉を使っていたら、お客さまの前でもついうっかり出てしまう。習慣は恐ろしいものだ。
本書では、JR九州のこれからについて、「終章 JRの誕生と未来」で、次の章立てで、持論を展開している。
1 JR九州の経営改革
①優秀な国鉄職員を駄目にしたのは組織
②「お客さま第二「地域密着」のスローガン
③多角経営による利益構造 鉄道利益率・人口密度相関図 上下分離の 「光」と「影」
2 完全民営化の達成
JR本州3社と私鉄との葛藤 総論的には大成功 本州3社が主眼だった
JR九州は脱鉄道会社で生き残り
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