ダークマター探しは本当に興味深いですね。
そうして、「キノコ(松茸)は千人の股をくぐる」と言われます。<--リンク
私には「ダークマターは万人の股をくぐっている」様に見えて仕方がないのであります。
第二章
ホームズさん曰く、「犯人は目の前にいる」と言ったとか、言わなかったとか。
頭の上に持ち上げたメガネはなかなか見つかりません。
えらい人が「そこは探したけれどなかったよ」と言われれば、初学者はなかなか探しには行きません。
ましてや自分が一度探した所をもう一度探す、ということは、、、いや、日常生活であればしょっちゅうやってますが、ダークマター探しではやりませんね、皆さん。
そうしてとうとう「ダークマターなぞは存在しない」と言いだす始末です。
まあそんな事をいうのでしたら「プランクレベルのBHの可能性」を考えた方がよほど生産的の様に思うのですが、さてどうなんでしょうかねえ。
いずれにせよ、いずれは「ホーキング放射で本当にBHは蒸発するの?」という疑問に戻ってくる様に、戻らざるを得ない様に思われます。
第三章
物理学者も人間である、ということ。
人でありますから、思いこみ、先入観、そういうものから逃れる事は出来ない様です。
しかしながら、多くの物理やがいるおかげで、思いこみも千差万別となります。
この多様性が人の場合は強みとなります。
そうして決着は観測でつける、自然に聞くのであります。
いったいどちらが正しいのか、と。
他方でAIが物理をやっても、いくら数多くのAIを投入した所で似たような答えが返ってくる様に思われます。
それが今の所の地球上のAIの実力、というところでしょうか。
そうでありますから、多様性は歓迎すべき事でありましょう。
そうして、決着は「自然に聞く」のであります。
第四章
百家争鳴(ひゃっかそうめい)のダークマター探し
『いろいろな立場にある人が自由に議論をたたかわせること。
多くの学者や専門家が何の遠慮もなく、自由に自説を発表し、活発に論争し合うこと。』
状況はまさしくそうであります。
しかしながら、大きく分けるならば、「ダークマターは幻だ」というグループと、「いや実在する」と言うグループに分けられそうです。
「ダークマターは幻だ」というグループは、地上での直接観測ができないのは、そのような物理的な実在がないからだ、と主張するでありましょう。
そうして、ダークマターの役割を、たとえば修正重力理論、あるいはマイナス質量の粒子の存在などというもので肩代わりさせようとします。<--リンク
ちなみに、「マイナス質量の粒子」が実在しても地球の重力場によって地上からは弾き飛ばされますので、地上での直接観測はできない、ということになります。
そして、実は同じ理由で銀河系内部にはこの粒子は存在できず、したがって宇宙空間にでて観測しても無駄、ということになります。
他方で、「いや実在する」と言うグループでは、「今まで検出できていないのは、探す方法が悪いのだ」と言う事になるのでしょうか。
そうして当方の主張もこのグループに属しますが「探す方法が悪い」のではなく「プランクレベルのBHは原理的、状況的に検出するのは至難の業」という主張となります。
その難易度というのは、重力波の検出と比較した場合、どれぐらいのものになるのでしょう?
重力波の検出はやり方が分かっていました。
あとはノイズとの戦い、SN比をどれだけ高められるか、と言う事でした。
しかしながらプランクレベルのBHの検出ときたら、やり方すら分かっていません。
秒速200Kmで例えば10日に一個、検出器の中を飛んで行く、ほこりゴミほどの質点を、その質点が及ぼす重力の効果だけで検出する、などと言う事は、今の地球上にある技術ではどう考えても無理な事の様に思われます。
さて上記が原理的に難しい事の説明でした。
それでは状況的に難しいというのは何でしょう?
XMASS(ダークマター観測実験)を例として取り上げましょう。<--リンク
『2013年の改修作業後、順調に行われてきた暗黒物質探索用データの取得を完了し、本日XMASS-I検出器から液体キセノンを回収しました。』
液体キセノンが約1トンとの事ですので、比重3.06から検出球の体積が326.8m^3と分かります。
半径が約4.3mで観測断面積(円形)が57m^2。
これですとプランクスケールBHを1日で0.17個の観測が可能。<--リンク
2013年秋から2019年2月までで5.5年の稼働として全観測個数は341個。
1000回に一回のキセノンとの反応があったとしても、発光が観測できた確率は33%程度。
実際は1000回に一回も反応するとは思えず、ラッキーであったとしても10000回に一回程度かと。
これだと5.5年動かして1回の発光を観測できた確率は3.3%。
以上が「状況的に難しい」という事の内容になります。
ちなみに当方の主張は「プランクスケールBHの衝突断面積はゼロ」ですので、XMASSの様な「物質粒子との衝突を検出するというやり方」では原理的に検出不可能と言う事になります。
つまり「どれだけ大きなXMASSを作ってみてもダークマターは観測できない」と言う事であります。
第五章
人類が直接検出できないもの
人類はいままで宇宙から地球に届いている、物理的に実在するものは何であれ検出し観測してきました。
たとえばそれはニュートリノであったり重力波であったりした訳であります。
そうでありますから、ダークマターも地球に届いている物理的な実在ですから、必ず検出できると考えるのは無理からぬ事であります。
しかしながら上記で述べましたように、今回ばかりはそうはいかない可能性があります。
そうであるとすれば「確かに目の前にあるのだがその物理的な実在を観測できない」という、これは人類にとっては初めての経験と言う事になります。
あるいは「初めての敗北」とも言えます。
・ダークマターの分布の謎を「共鳴現象」がひも解く:<--リンク
注目の新理論から見えてきたこと
↓
『もし「重力」がダークマターを引き付ける唯一の力であり、ダークマター粒子に反発し合う特性がないとすると、ダークマターの分布はどのような銀河にとっても中心部が高密度になるはずだ。
しかし、観測データはそうではないことを示している。
ダークマター粒子が「特定の速度」で衝突するときにだけ、ビリヤードのボールのように散乱する「共鳴現象」が起こるなら、粒子がより均等に広がっている矮小楕円銀河の分布を説明することができる。・・・』
さて、真偽の程はどうでしょうか?
第六章
ダークマター代替え理論
ネットで少し探した結果、3つ見つかりました。
(まだほかにもあるやもしれませんので、ご注意願います。)
・宇宙は「暗黒流体」に満ちている? 新説を巡る科学者とメディアの責任を考える(WIRED 2019.01.21)<--リンク
ジェイミー・ファーンズ
『宇宙がどのように機能しているかを説明するために、大半の研究者は一般相対論の方程式を利用すると同時に、暗黒物質と暗黒エネルギーの存在を認めている。
だがファーンズはその代わりに、負の質量をもつ暗黒流体が存在する可能性があると主張する。
ファーンズの論文は、多数の仮定を立てている。例えば、宇宙は方向によって異なる膨張率をもつこと、負の質量が存在すること、自然発生的に自己を生む何かがあるという見解などだ。
ファーンズは暗黒物質と暗黒エネルギーを排除し、それらの代わりに「負の質量をもつ流体」が宇宙に充満しているとする。』
↑
ダークエネルギーの正体がマイナス質量を持つ粒子である、というならばその部分については同意いたします。
・「暗黒物質」は存在しない? 大胆な仮説を提唱した物理学者の長き闘い(WIRED 2017.04.02)<--リンク
エリック・ ヴァーリンデ
『重力は「見かけの力」にすぎないという衝撃的な論文を2010年に発表した、理論物理学者のエリック・ ヴァーリンデ。
昨年末、彼は暗黒物質(ダークマター)は存在しないという論文を新たに発表した。
さらにオランダでは、宇宙における重力分布の測定データが、彼の理論と一致するという研究結果も発表されている。・・・』
・ダークマター存在せず? - 「エントロピック重力理論」と観測データが一致(マイナビ 2016/12/22 )<--リンク
マーゴット・ブラウワー、
『ライデン天文台(オランダ)の天文学者マーゴット・ブラウワー氏らの研究チームは、宇宙における重力分布の測定データを分析し、「エントロピック重力理論(ヴァーリンデ理論)」と一致する結果を得たと報告した。
エントロピック重力理論は、2010年にアムステルダム大学の理論物理学者エリック・ヴァーリンデ教授が発表した重力についての新理論。
重力とは「電磁気力」「強い力」「弱い力」と並ぶ自然の基本的な力ではなく、実は「見かけの現象」に過ぎないとする理論であり、・・・』
↑
人はしばしばデータの中に「自分がみたいもの」を見てしまう、そういう存在であります。
・本当は存在しない?暗黒物質/ 日経サイエンス 2002年11月号<--リンク
M.ミルグロム(ワイツマン研究所)
『 ・・・「力は加速度に比例する」という有名なニュートンの第2法則を,極めて小さな加速度の下では「加速度の2乗に比例する」とした修正ニュートン力学を提唱したのだ。
不思議なことにこのように修正を施すと,暗黒物質の存在を想定しなくても驚くほど矛盾なくさまざまな観測結果を説明できる。
そのうえ修正ニュートン力学が予想したいくつもの現象も,その後の観測で確認された。
・・・
修正ニュートン力学は暗黒物質論の代替論として最も優れており,長く支持されている。』
↑
記事にある様に「本当に不思議」ですねえ。
第七章
ダークマターをさがせ!
・ダークマター」検出へ、欧州の原子核研究機関が新たな実験計画(AFPBB News 2019/03/06)
『【AFP=時事】欧州合同原子核研究機関(CERN)は5日、暗黒物質(ダークマター)に関連する素粒子を探すための新たな実験を計画中であることを明らかにした。
・・・
今回の実験の目的は、いわゆる暗黒光子(ダークフォトン)やニュートラリーノなどの仮説上の粒子を探すことだ。
これらの粒子もまた、ダークマターに関連するとされる。
実験は2021年から2023年までの間に始まる見込みとなっている。』
↑
CERNがようやくダークマター探しに本腰をいれる事になった模様です。
・ダークマターの超巨大嵐、太陽系を覆いながら地球を通過中(GIZMODO 2018.11.22)<--リンク
さて、XMASSはこの嵐を観測できたでしょうか?
PS
残念ですが日本国内での直接観測は今回で一応終了した模様です。
・液体キセノンを用いた暗黒物質直接探索実験の新たな展開の提案<--リンク
『XMASS 実験が現在の 1 相式をそのまま延長する形で XMASS-1.5 を実現しても、世界の研究に追いつけないことは委員の共通の認識となった。
研究グループが研究計画の変更を提案するのは妥当である。
また、海外で進展中の G2 実験、具体的には XENONnT への参加は、有力な計画である。・・・』
・宇宙の謎「消えたバリオン」問題が新たな観測手法によって解明へ(Gigazine) 2018年09月25日<--リンク
↑
宇宙はなぞに満ちています。
・ダークマターの3次元地図の作成に成功 - すばる望遠鏡・HSCの初期成果が発表(マイナビ2018/02/27)<--リンク
すばるもがんばっております。
第八章
ダークエネルギーはどうなのか?
・宇宙、あと1400億年は「安泰」 すばる望遠鏡で調査(2018年9月27日 asahi)<--リンク
ここでもすばるが活躍しています。
http://archive.fo/L6EG0
http://archive.fo/clBF0