「ユダヤ人の歴史」を読んでいる。子供の頃ワケも分からず覚えた名前だとか、音楽関係で耳にした名前がいくつか登場して、あー、そうだったのかの連続である。例えば、
ユダヤの物語にときどき「ペリシテ人」が登場するが、「パレスチナ」の語源はこの「ペリシテ」だという。
ダヴィデ王のとき隆盛を誇ったユダヤ王国は後に北部のイスラエル王国と南部のユダ王国に分裂したのだが、そのうちのイスラエル王国に現れたアハブ王の妻のイゼベルがフェニキア出身で、偶像崇拝(ユダヤ教では御法度)のバール教を導入し、それに預言者エリアが強く反発した話は、メンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」を歌った際にお勉強したが、そのイゼベルが宦官によって城門からほっぽり投げられて死んだ話は知らなかった。メンデルスゾーンのオラトリオがそこまで描いてないもんで。旧約聖書を全部読んでる人はご存じなのだろう。なお、旧約聖書では、イゼベルの死体は馬に踏まれ、犬に食われたとある。私は、そのオラトリオの中のイゼベルの役を歌った者である。
中学のときの世界史の参考書に「チグラトピレセル」という王様の名前が出てきて、私はどうにもこの名前が覚えられなかったが、意地になってがんばってようやく覚えたら、半世紀経った今でも記憶に残っている。苦労した覚えたことは忘れないものとみえる。だが、そのチグラトピレセル(現在、一般には「ティグラト……」と表記される)が、前記のイスラエル王国を滅ぼしたアッシリアの王様であることは初めて知った。
こないだレーザーディスクで見たヴェルディのオペラ「ナブッコ」では、ナブッコがヘブライ人(ユダヤ人)を征服するが、その後ヘブライの神を賛美する側に回って「真の王様」になる。だが、史実では、ナブッコは新バビロニアの王ネブカドネザルのイタリア語読みであり、イスラエル王国滅亡後もかろうじて続いていたユダ王国を滅ぼし(オペラはこの事件を扱ったものである)、バビロンの捕囚(ユダヤの民を新バビロニアの首都バビロンに強制連行したこと)の張本人であった(この結末はオペラとはまるっきり異なる)。
スポーツ大会の表彰式でよく流れる音楽(♪ソーミーファソードー、レミファソファーミーレー)は、ヘンデルのオラトリオ「マカベウスのユダ(ユダス・マカベウス)」の音楽だってことは知っていた。その「マカベウスのユダ」は歴史書では「マカベアのユダ」と呼ばれていて、ユダ王国の滅亡(前記)によって消滅したユダヤ人の国家を一時的に再興した人だって話は初耳だった(そもそも、ユダヤ人の国家が一時的に再興したことを知らなかった)。あれ?そう言えば、そのオラトリオを近年歌ったぞ。♪ ソーミーファソードーも歌ったぞ。じゃ、あの音楽って、ユダヤ国家再興を喜ぶ音楽だったの?どうやらそうらしい。どうやら……って、そんなことも知らずに歌ってたの?はい、そーでげす。