幸手の桜がすごいことを数年前にテレビで知って、見に行って、なるほど噂に違わぬ見事なものじゃ、と感嘆したのだが、このたび、人が押し寄せる権現堂堤(中川の堤防)だけではなく、行幸堤(中川に合流する権現堂川(行幸湖)の川沿い)の桜も良い、しかも人が少ないという話を聞いて、時期も関東の桜は散り際であるし、川の成り立ちシリーズの取材のため権現堂川沿いを歩いてみたいと思っていたところであるから行ってきた。本筋の「川の成り立ち」と副産物の「山の話」については別の回に記すとして、時期も時期だからとりいそぎ「桜」を中心としたレポートである。
幸手駅から権現堂堤までは歩いて4,50分かかる。私にとってはなんてことはない距離だが、この日は権現堂川を利根川まで歩く予定だから体力を温存するため権現堂堤までバスがあるなら乗ろうかと思っていたところ、幸手駅を出たところにある観光客向けのテントで「バスがあるのだけど渋滞で動かない。徒歩をお奨めしている」と説明している声が聞こえたので、それなら、と躊躇なく徒歩を選択。
権現堂堤には1キロに渡って桜並木が続いていて、東端、真ん中、西端から入れるが、今回は、東端を選択。私の早足でもここまで30分以上はかかっている。人々は桜の下を歩くために堤の上に上っていくが、私は、第一の目的は川なので、堤の上には上らずすぐに堤下の中川沿いに出る。すると、桜はもちらんだが、見事な菜の花畑である。
もしかして、私、桜のピンクよりも菜の花の黄色の方が好きかもしれない。これだけ密集すると菜の花の匂いも強烈である。
しばらく権現堂堤下(中川沿い)を歩いてまだ桜と菜の花が続いているなか、権現堂川沿い(行幸堤)を歩くために行幸橋で中川を渡る。そのルートも花見ルートとして確立されているようで、案内標識が出ていた。
なるほど、噂通り見事な桜並木である。人出もある。
だが、この川(正式には行幸湖という名の調整池)の長さは5キロ以上あるから、さすがに全部歩こうなどという物好きは滅多にいないらしく、途中から人影が途絶えた。
そして、利根川が近づくと、いよいよ桜並木もおしまいとなり(右端の樹が最後の1本)、
川自体も川妻給排水機場で打ち止めとなる(樋管で利根川とつながってはいるのだが)。
だが、排水機場裏の公園(利根川の土手下)で、人っ子一人いない中で再び桜と菜の花を見たときは、
なんだかこの日一番感動した気がした。
この後は利根川の土手に上がったのだが、そのときの話だとか、権現堂堤下の中川の様子だとか、権現堂川(行幸湖)に関する蘊蓄だとか、この小旅の中で拝んだ筑波山、日光連山、赤城山の話などは「川の成り立ち」「山の話」の回に譲ることにして、ここで幸手市内の話に戻る。駅から堤までの間、旧日光街道を歩くことが多かったのだが、
なるほど、たしかに道路は渋滞していた。
だから、案内の人の話通り、徒歩で行かざるを得ないわけだが、それだけの価値はあるというものである。往復で1時間半くらいだからカロリー消費にちょうどいい。私などは、この日合計で4時間歩いたから、さすがに帰るときはボロボロであった。