働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

フリーランス問題ガイドライン策定を政府検討会が提言

2020年06月27日 | 雇用類似の働き方
全世代型社会保障検討会議・第2次中間報告(案)議論
少子高齢化時代に対応する社会保障制度の改革を検討するとして、政府は安倍晋三首相が議長を務める「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げ、初会合は2019年9月20日に首相官邸で開かれた。

2020年6月25日、首相官邸で第9回全世代型社会保障検討会議を開催。会議では、全世代型社会保障検討会議第2次中間報告(案)について議論が行われた。

25日の会合でまとめた中間報告では、フリーランスについて、多様な働き方や高齢者雇用を広げるためにも、適正に拡大することが不可欠だと指摘し、労働環境の改善に向けたガイドラインを今年度中に策定するとしています。

ガイドラインでは、事業者との取り引きで不利な扱いを受けないよう契約書面を交わすことを定めるほか、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて働いていると判断される場合などは、労働関係法令が適用されることを明記するとしています。(NHKニュース電子版、2020年6月25日配信)


フリーランスは雇用関係になく契約上は労働者とみなされていないので、「労働環境の改善」というよりは「働く環境の改善」が正確だと思う。また、首相官邸ホームページでも第2次中間報告でフリーランス問題を取り上げたことにふれて、次のように記載。

本日の第2回目の中間報告では、第一に、フリーランスの適正な拡大を図るための保護ルールの整備を決めました。これまでは、働き方に関して、独占禁止法の適用に慎重だった姿勢が変更される中で、独占禁止法や下請代金法の適用について明確にするとともに、雇用に該当する場合に労働関係法令を適用する、一覧性のあるガイドラインを政府一体で整備します。併せて、下請代金法の改正を含め、立法的対応についても、検討を図ります。(首相官邸ホームページ)

フリーランス問題に関する提言については、資料「全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告(案)に詳細に記述されている。フリーランス問題にかかわる箇所だけ抜粋して紹介させていただく。また、フリーランス問題については、現在、厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」で議論中だが、昨年(2019年)夏に「中間整理」を公表。比較されることをおすすめする。

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 中間整理(ブログ働き方改革関連法ノート)

フリーランス問題について(「全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告案」抜粋)
フリーランスについては、内閣官房において、関係省庁と連携し、本年(2020年)2月から3月にかけて、一元的に実態を把握するための調査を実施し、別添の当該調査結果に基づき、政策の方向性について検討し、以下の結論を得た。

フリーランスは、多様な働き方の拡大、ギグエコノミーの拡大による高齢者雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などの観点からも、その適正な拡大が不可欠である。 さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、フリーランスの方に大きな影響が生じており、発注のキャンセル等が発生する中、契約書面が交付されていないため、仕事がキャンセルになったことを証明できない、といった声もある。こうした状況も踏まえ、政府として一体的に、フリーランスの適正な拡大を図るため、以下のルール整備を行う。

(1)実効性のあるガイドラインの策定
(基本的考え方)
独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用される。また、下請代金支払遅延等防止法は、取引の発注者が資本金1000万円超の法人の事業者であれば、 相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用される。このように、事業者とフリーランス全般との取引には独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法を広く適用することが可能である。

他方で、これまでは、働き方に関して、特に独占禁止法については、その適用には慎重であった。 この点、公正取引委員会がこのような従来の姿勢を変更していることも踏まえ、フリーランスとの取引について、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法の適用に関する考え方を整理し、ガイドライン等により明確にする必要がある。

他方、これらの法律の適用に加えて、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用される。こうした法令の適用関係を明らかにするとともに、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインを内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省連名で年度内に策定する。

(ガイドラインの方向性)
連名のガイドラインの具体的な内容として、以下の点を検討する。
①契約書面の交付 フリーランスと取引を行う事業者が、フリーランスに対し、契約書面を交付 しない又は記載が不十分な契約書面を交付することは、独占禁止法(優越的地位の濫用)上不適切であることを明確化する。なお、下請代金支払遅延等防止法の書面の交付にあたっては、受け手側が事前に承諾し、保存する前提であれば、現在オンラインでの交付も認められており、オンラインでの契約書面向けのひな形を示す。
②発注事業者による取引条件の一方的変更、支払遅延・減額
フリーランスと取引を行う事業者が、フリーランスに対し、不当に取引条件 の一方的変更や報酬の支払遅延・減額を行うことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたることや下請代金支払遅延等防止法上の禁止行為にあたることを明確化する。
③仲介事業者との取引に対する独占禁止法の適用
仲介事業者が取引条件の一方的変更を行う場合もあることから、仲介事業者とフリーランスの取引についても独占禁止法が適用されることを明確化する。
④現行法上「雇用」に該当する場合
フリーランスとして業務を行っていても、①実質的に発注事業者の指揮監督下で仕事に従事しているか、②報酬の労務対償性があるか、③機械、器具の負 担関係や報酬の額の観点からみて事業者性がないか、④専属性があるか、などを総合的に勘案して、現行法上「雇用」に該当する場合には、契約形態にかかわらず、独占禁止法等に加え、労働関係法令が適用されることを明確化する。

(2)立法的対応の検討
取引条件を明記した書面の交付は下請代金支払遅延等防止法上で義務付けられて いるものの、資本金1000万円以下の企業からの発注などフリーランスの保護を図る上で必要な課題について、下請代金支払遅延等防止法の改正を含め立法的対応の検討を行う。

(3)執行の強化
発注事業者とフリーランスとの取引におけるトラブルに迅速に対応できるよう、中小企業庁の取引調査員(下請Gメン)や公正取引委員会の職員の増員の検討を行うなど、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法に基づく執行を強化する。
また、ガイドラインの内容を下請振興法に基づく下請振興基準にも反映の上、業所管省庁が業種別の下請ガイドラインを改定し、これに基づいて執行を強化する。

(4)労働者災害補償保険等の更なる活用
フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険の更なる活用を図るための特別加入制度の対象拡大等について検討する。また、フリーランスとして働く人も加入できる共済制度(小規模企業共済等)の更なる活用促進を図る。あわせて、フリーランスとして働く人のリモートワーク環境の整備を支援する。(「全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告案」抜粋)


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