働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

テレワーク時の「みなし労働時間制」(労働基準関係法制研究会)

2024年12月24日 | つながらない権利
テレワーク時の「みなし労働時間制」創設を強く懸念
第13回 労働基準関係法制研究会
厚生労働省(労働基準局)有識者会議「労働基準関係法制研究会」の第13回研究会は(2024年)9月11日に開催されましたが、議題は「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇について」。

資料1 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇について(PDF形式)

この第13回研究会資料「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」に「テレワークに特化した形でのみなし制の創設ということが必要ではないか。労働時間を技術的には把握できるが、労働者がそれを望まないときに、みなし制ということを認めるべき」という研究会メンバーの意見が書かれていました。

同時に、その第13回研究会資料には「テレワークによる過重労働の実態が生じているという中で、みなし労働時間制にすると実労働時間規制から外れ、過重労働のリスクが 大きい」「これまで裁量労働制の対象業務を厳密に定めてきた、それは みなし労働時間制の副作用を小さくしようとしてきたということでもあり、 広くテレワークで みなし労働時間制を認めるとなれば、その趣旨を潜脱することになりかねないという懸念はある。テレワークについ ては、実労働時間規制として、フレックスタイムの活用という方向も検討すべきではないか」などといったテレワーク時の「みなし労働時間制」を危惧する反対意見が記載されていました。

第13回研究会議事録にもテレワーク時の「みなし労働時間制」を危惧する反対意見が記載されていますが、まず水町勇一郎教授は「事業場外労働の みなし制を無制限に広げていくのではなくて、現在の実態に合う形できちんと適用とか運用の規制をしていくことのほうがむしろ大切なので、在宅勤務だから、新しく実労働時間管理を外す みなし制を導入するということに対しては強い懸念を感じざるを得ません」と述べています。また、首藤若菜教授も「在宅テレワークで『みなし労働時間』を適用していったときに、この『つながらない権利』がないような状態のままで、長時間労働が本当に抑制できるのだろうかというところは非常に強い懸念を抱いています」と意見しています。

労働基準関係法制研究会(議論のたたき台)
「労働基準関係法制研究会」の第14回研究会は(2024年)11月12日に開催され、議題は「労働基準関係法制について」。

第14回研究会の資料は「労働基準関係法制研究会(議論のたたき台)」となっていますが、実質的には「労働基準関係法制研究会」報告書作成に向けた骨子案と言えると思います。

労働基準関係法制研究会(議論のたたき台)(PDF形式)

この議論のたたき台に「テレワーク時に利用可能な みなし労働時間制度」と題された項目があり、そこに「テレワークの際は、仕事と家庭が近接しており、厳格な労働時間管理はプライベートに踏み込みかねないこと等を踏まえ、テレワークに対応した みなし労働時間制度が考えられる」、また「一方で、みなし労働時間制度については長時間労働のリスクも指摘されており、テレワークにおける労働時間の実態や、労使のニーズ等を把握した上で、中長期的な検討が必要と考えられる」と記載されています。

労働基準関係法制研究会 報告書(案)
「労働基準関係法制研究会」の第15回研究会が(2024年)12月10日に開催されました。議題は「労働基準関係法制について」ですが、資料は「労働基準関係法制研究会 報告書(案)」となっています。

労働基準関係法制研究会 報告書(案)(PDF形式)

「テレワーク時の みなし労働時間制について」との項目には「自宅等でのテレワークを対象とする みなし労働時間制については、上記の実労働時間管理をする場合の課題を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、現実のテレワークにおける一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間が客観的にどういう状況か、企業がどのように労働時間を管理しているのか、みなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情を把握した上で継続的な検討が必要であると考えられる」と記載されていました。

労働基準関係法制研究会 報告書(案)修正版
「労働基準関係法制研究会」の第16回研究会が(2024年)12月24日に開催されましたが、議題は「労働基準関係法制について」ですが、資料は「労働基準関係法制研究会 報告書(案)」(修正版)となっています。

労働基準関係法制研究会 報告書(案)修正版(PDF形式)

修正版の報告書(案)の「テレワーク時の みなし労働時間制について」との項目には「在宅勤務を対象とする新たな みなし労働時間制については、上記の実労働時間管理をする場合の課題やそれに代わる健康管理時間の把握をめぐる課題等を踏まえて、こうした点に関する検討も含め、在宅勤務における労働時間の長さや時間帯、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間の状況等の労働時間の実態や、企業がどのように労働時間を管理しているのか、新たな みなし労働時間制に対する労働者や使用者のニーズが実際にどの程度あるのかということを把握し、また上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情や労使コミュニケーションの実態を把握した上で、みなし労働時間制の下での実効的な健康確保の在り方も含めて継続的な検討が必要であると考えられる」と書かれていました。

テレワーク時の「みなし労働時間制」創設への私的コメント
第16回「労働基準関係法制研究会」で厚生労働省が提示した報告書(案)の修正版をさっそく読みましたが、研究会メンバーの水町勇一郎教授や首藤若菜教授が第13回研究会で強い懸念を示されていた「テレワーク時の『みなし労働時間制』創設」が、最大の問題点だと思います。

この修正された報告書(案)にも「これまで裁量労働制の対象業務を厳密に定めてきた、それは みなし労働時間制の副作用を小さくしようとしてきたということでもあり、広くテレワークでみなし労働時間制を認めるとなれば、その趣旨を潜脱することになりかねないという懸念はある」とまとめられていますが、詳しくは第13回研究会の議事録に記載されています。

そのような研究会メンバーの強い懸念にもかかわらず、「労働基準関係法制研究会」報告書に「テレワーク時の『みなし労働時間制』創設」を盛り込もうとする厚生労働省には落胆しました。

*厚生労働省の有識者会議「労働基準関係法制研究会」の開催案内や資料や議事録は次の厚生労働省サイトに掲載されています。

労働基準関係法制研究会(厚生労働省サイト)


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