働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

パワハラ防止指針(パワハラ指針)解説2

2020年02月15日 | パワハラ防止
パワハラ防止指針案の諮問・答申
パワハラ防止指針案の諮問に対する答申(案)をめぐる議論は、2019年12月23日に開催された第24回労働政策審議会雇用環境・均等分科会で行われ、「厚生労働省案は、おおむね妥当と認める」とした。ただし、「労働者代表委員から、『事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組』および『事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組』の促進を図るほか、ILO第190号条約・第 206 号勧告が採択されたことから、ハラスメント対策の充実・強化に向けて行政においてさらなる検討を進めていくべきとの意見があった」旨、森實雇用機会均等課長が説明。その後、奥宮分科会会長が議場に諮り「異議なし」とのことで承認された。(3)

(3) 第24回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(2019年12月23日開催)議事録によると、労働者代表の井上委員が次のように発言し提案した。

「労働側としては、今、御提示、御説明いただいた内容について、改正法に基づく指針としては受け止めたいと思います。ただし、改正法がカバーしていない就活生やフリーランス等に対するハラスメント、また、カスタマーハラスメントの対策については、前回、一定の修正が加えられ、取組が促進されることに期待しつつも、このパブリックコメント1,139件というのは、多分、過去最高の数字ではないかと思います。これだけ多数の意見が寄せられたということであれば、改正法がカバーしていない部分に関しては不十分と言わざるを得ません。
先ほど使用者側から、議論を積み重ねてきた内容であるということ、また、企業の実態からして妥当という御発言も頂きましたが、企業の実態が妥当であれば、パブリックコメントでこれだけの数が出てきただろうかということも指摘をしておきたいと思います。それだけ今回のハラスメント、セクハラに関する改正の課題、パワハラ指針は、世間の関心が非常に高かったということ。
それから、この1か月の間に様々な団体が要請をし、あるいはパブコメの発信をし、それを SNS で共有し、本当にたくさんの取組が行われてまいりました。そして、その内容には、私たちがこの審議会でも発言をしていた内容が含まれていたかと思っています。特に、就活ハラスメントについては、このパブコメ中に東京地裁で性暴力を受けた原告の勝訴がありました。これについては、有識者の皆様からは、正に就活セクハラで、今回、パワハラ指針できちんと望ましい取組ではなく、就職活動中の人も保護するような立法があれば、また企業に措置義務が課せられていたらどうだったのだろうかという御指摘も頂いているところではあります。
その意味では、今回、この1 か月のパブリックコメントも世間に対して大変大きなインパクトを与えたのではないかと思っています。今回、指針に盛り込まれなかった様々な課題、それは属性もありました。あるいは正に就活ハラスメント、就活生の問題、フリーランスの問題、あるいは曖昧な雇用の課題、そして昨今様々な働き方がある中で、様々な職種の皆さんにもハラスメントが横行していることがたくさんの所で出てきたかと思っています。
そもそもハラスメントは人権の問題であって、雇用形態に関係なくあってはならないものですが、まだこの実態では、弱い立場の人たちあるいは企業に雇用されていない人たちが非常にハラスメントを受けていることも、今回、1 年間掛けてやってきた議論の中で明らかになった課題だと思います。その意味では、雇用されている労働者のみならず、企業の責任として、働くという場にいる人たちに対してはしっかりと責任を持ってこのハラスメントの対応をしていただきたいと思っていますし、今回の議論の中でも出てまいりました研修なども適切に行っていただきたいと思っています。
その点で申し上げれば、今年 6 月に採択された ILO の条約・勧告、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約・勧告は、正に仕事の世界での労働者を幅広く対象としておりますし、また、その前提で各加盟国に対してハラスメントの法的な禁止を求めているというのは、皆さん御承知のところかと思っています。この課題についても、国会で、衆参厚生労働委員会では、全会一致で条約成立後は批准に向けて検討を行うこととの附帯決議が確認をされています。ハラスメント対策の充実・強化に向けては、更なる検討を進めるべきであると思いますし、働く全ての人たちがより働きやすい環境で、ハラスメントのない環境の中で働けるようにすることが必要だと思っていますし、ILO 総会で賛成票を投じた日本政府には、その責任の自覚をしっかりと持っていただきたいと思います。
その意味でも、今回、パワーハラスメントの指針の中には、国、事業主、労働者の責務が入っていますので、それもしっかりと、労働者もしっかりと受け止めたいと思いますが、国、事業主としても受け止めた形で対応をお願いしたいと思っています。様々な課題があることについて、是非、この意見を報告答申の所に付すことを、労働側としては、御検討していただきたいことを申し述べて発言とさせていただきます。」

この後、奥宮分科会長が「配布されている指針案に関しては、これでよいということでよろしいでしょうか」と議場に問い、異議なしとのこと。続いて奥宮分科会長は「異議がないということですので、別途、井上委員の御提案について検討させていただきます。労働者代表委員の井上委員から指針案の報告文に意見を付したいという御意見がありましたので、その取扱いについて、労働者代表と公益代表、使用者代表と公益代表の順で、それぞれ調整させていただくことでよろしいでしょうか。いかがでしょうか」と提案。異議なしとのことで分科会を一時中断、別室にて非公開で公労使委員が井上委員提案を話し合った。そして再開後、森實雇用機会均等課長が次のように文案を読み上げた。

「(前略)令和元年12月23日付け厚生労働省発雇均1223第1号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会は、下記のとおり報告する。記。本分科会は、厚生労働省案は、おおむね妥当と認める。なお、労働者代表委員から、『事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組』及び『事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組』の促進を図るほか、ILO第190号条約・第206号勧告が採択されたことから、ハラスメント対策の充実・強化に向けて行政においてさらなる検討を進めていくべきとの意見があった。以上です。」

説明後、奥宮分科会長が「今読み上げていただいた内容で御異議はありませんでしょうか」と問い、異議なしとのことで承認された。なお、藤澤雇用環境・均等局長が次のように挨拶。

「(前略)今後、本分科会での御報告及び労働政策審議会の答申を踏まえまして、政省令や指針の公布に向けた準備を進めてまいりたいと考えております。
これらの公布後には、先ほど労働者代表委員からも御意見がございました項目も含めまして、通達やパンフレットなどによりまして、適切な、丁寧な周知を図っていきますとともに、中小企業も含めて対応を進めていただけるよう、必要な支援を行うことなどによりまして、改正法の円滑な施行に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
また、本日御報告を申し上げましたように、今回は大変多くのパブリックコメントでの御意見を頂きました。指針は本分科会で取りまとめていただいた御結論を踏まえて策定を進めてまいりますが、こちらも施行に向けての周知など今後の取組において参考にしてまいりたいと考えております。(後略)」


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