働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

トヨタ自動車パワハラ(パワーハラスメント)とパワハラ防止法

2021年06月10日 | パワハラ防止
トヨタ自動車で直属上司によるパワハラ(パワーハラスメント)
トヨタ自働車の男性社員は2016年に直属上司から日常的に暴言を受け、2017年に社員寮で自殺(当時28歳)。

その後、2019年に豊田労働基準監督署が上司のパワハラ(パワーハラスメント)を認め労災認定(精神疾患等労災認定)。また、2021年4月にはトヨタ自動車はパワハラ(パワーハラスメント)行為をした上司の監督責任を怠るなど、労働契約法に規定する「安全配慮義務違反」を認めて、遺族と和解。

そして今週(2021年6月7日)、トヨタ自動車は公式サイトでパワハラ(パワーハラスメント)行為があったこと、遺族と和解したこと、再発防止策を公表。

上司のパワハラで自殺 トヨタ自動車が遺族と和解 社長が面会して謝罪(CBCニュース)


トヨタ自動車の男性社員が自殺したのは、上司のパワハラが原因として労災認定された問題で、トヨタがパワハラと自殺の因果関係を認め、遺族と和解していたことがわかりました。

当時28歳だったトヨタ自動車の男性社員は2017年、社員寮で自殺しました。  

男性社員は、その前年に直属の上司から「あほ、ばか、死んだ方がいい」などと日常的に暴言を受けていて、おととし豊田労働基準監督署が上司のパワハラを認めて労災認定しています。  

トヨタはことし4月、上司の監督責任を怠るなど、安全配慮義務違反があったことを認め、解決金を支払うことで遺族側と和解していたことがわかりました。  

豊田章男社長が遺族と面会して謝罪したということで、トヨタは「体制の見直しを含め、再発防止に向け取り組みを進めている」とコメントしています。(CBCテレビ「上司のパワハラで自殺 トヨタ自動車が遺族と和解 社長が面会して謝罪」2021年6月7日配信)


トヨタ自動車が公式サイトで公表したパワハラ再発防止策
トヨタ自動車は2021年6月7日、公式サイトで「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」と題した文章を公表した。

だが、トヨタ自動車の対応で不信に思うことは、トヨタ公式サイトのページ・タイトルが「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」となっていること。

「パワーハラスメント(パワハラ)問題の再発防止に向けた取り組みについて」か「いじめ・嫌がらせ問題の再発防止に向けた取り組みについて」とすべきではなかったのか。「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」では曖昧。

実は三菱電機でもトヨタ自動車と同様の深刻なパワハラ(パワーハラスメント)事件を引き起こしていたが、三菱電機は昨年(2020年)1月10日にパワハラ問題としないで「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」という文書を公表している。トヨタ自動車公式サイトの「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」は三菱電機の文書タイトルを安易に真似たものと言い得る。

労務問題の再発防止に向けた取り組みについて(三菱電機、PDFファイル)

なお、再発防止に向けたトヨタ自動車の取り組みは、次の5項目になる。
1  声を出しやすい職場づくりに向けた取り組み
2 パワーハラスメントに対する厳格な姿勢を就業規則に反映
3 異動時における評価情報の引継ぎの強化
4 マネジメントに対するパワーハラスメントの意識啓発
5 休務者の職場復職プロセスの見直し

労務問題の再発防止に向けた取り組みについて
2017年に若手社員が亡くなるという痛ましい事案が発生しました。亡くなられた故人に対し改めてご冥福をお祈り申し上げ、衷心より哀悼の意を表します。

その後、2019年に豊田労働基準監督署による労働災害であるとの判断の中で、当時の上司によるパワーハラスメントを伴う行き過ぎた指導があったことが認められました。

当社としましては、大切な社員の尊い命が失われた事実を真摯に受け止め、このような痛ましい事案を再び起こさないよう、再発防止に向けた取り組みを検討、実施してまいりました。

当社は、今回お知らせする再発防止策を推進し、パワーハラスメントを断固として許さないという姿勢のもと、社員一人ひとりが周囲に関心を持ち、自分以外の誰かのために行動できる「YOUの視点」を持った人財づくりを進め、一人ひとりの社員が安心して働ける、風通しの良い職場風土を築くよう、努力を続けてまいります。

再発防止に向けた取り組み
「風通しのよい職場風土づくり」、「パワーハラスメント行為を行わないマネジメント」、「メンタルヘルス不調者に対する適切な対応」等の施策について取り組みを進め、社内から、パワーハラスメント行為の撲滅を目指します。

1. 声を出しやすい職場づくりに向けた取り組み
令和2年4月に、これまでの相談窓口を「スピークアップ相談窓口」に統合し、匿名での通報、職場の同僚や家族など第三者からの相談も受け付けているほか、若手社員に対する毎月のアンケートの実施、職場の身近な相談先として、職場相談員の設置を進めております。こうした施策を通じ、従業員の困り事や、職場の課題を早期に発見・解決してまいります。

2. パワーハラスメントに対する厳格な姿勢を就業規則に反映
令和2年4月に就業規則を改定し、パワーハラスメントの禁止、およびパワーハラスメントを行った際の懲罰規定について、より明確に記載いたしました。

3. 異動時における評価情報の引継ぎの強化
令和2年10月に、従業員の評価や、ポスト長の職場マネジメントに関するアンケート結果などの個人情報を一元管理するシステムを導入しております。これによって、過去の評価や人事情報を確認することが可能となり、今まで以上に本人の適性を踏まえた業務アサインを行い、過去から一貫性のある育成を実施してまいります。

4. マネジメントに対するパワーハラスメントの意識啓発
令和2年4月より、すべての幹部職・基幹職を対象に、パワーハラスメント防止の教育を再度実施しております。また、評価基準を見直し、今まで以上に「人間力」のある人材、周囲へ好影響を与え信頼される力を持つ人を評価します。加えて、役員、幹部職・基幹職を対象に、360度アンケートを導入いたしました。対象者の強み・弱みに関する周囲の声を集め、本人にフィードバックすることで、自らの行動を振り返り、改善につなげてまいります。

5. 休務者の職場復職プロセスの見直し
令和2年5月より、休務者の状況把握、復職可否判断、職場復帰後の職場環境面を含むケアについて、産業医、人事労務スタッフ・職場がこれまで以上に緊密に連携し、本人のコメントや主治医の意見も踏まえ、円滑な職場復帰をサポートする体制を構築してまいりました。

また、産業医が、休務者のサポートや職場復帰後のフォローを適切に行うため、令和2年12月より、精神科専門医が常駐する相談センターを開設しました。対面又はオンラインによって、メンタル不調者や上司との面談を行い、その結果に基づいて、産業医に対し、専門的立場からのアドバイスを提供しています。

今後も、体制改善に向けて努力してまいります。(トヨタ自動車公式サイトより)


労務問題の再発防止に向けた取り組みについて(トヨタ自動車公式サイト)

パワハラ(パワーハラスメント)禁止規定およびパワハラ(パワーハラスメント)を行った際の懲罰規定を就業規則に明記
再発防止に向けたトヨタ自動車の取り組みの中に「パワーハラスメント(パワハラ)に対する厳格な姿勢を就業規則に反映」という項目があるが、トヨタ自動車は2020年4月に就業規則を改定し、「パワーハラスメントの禁止、およびパワーハラスメントを行った際の懲罰規定について、より明確に記載」したとのこと。

トヨタ自動車パワハラ(パワーハラスメント)とパワハラ防止法
東京新聞(デジタル版)は「パワハラで社員自殺のトヨタ、遺族と和解で改善誓う 人事制度など組織風土にメス」という改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の問題点にもふれている。

トヨタ自動車の男性社員=当時(28)=が、パワーハラスメントが原因で自殺したことを巡り、トヨタと遺族側で和解が成立した。豊田章男社長自ら遺族に謝罪して約束した再発防止策には、人事評価のあり方など、組織風土の根本に踏み込む内容が盛り込まれた。過去のパワハラに関する情報共有の欠如など、浮き彫りになった致命的な課題の解消も急ぐ。(安藤孝憲)

・「起こる前に止める」社長が決意
「2度とこうしたことを起こさせない、起こる前に止めるということをやりとげるまで頑張っていく」。和解が成立した4月7日、豊田社長は男性社員の遺族宅を訪ね、そう話した。遺族には、自殺を報道で知った2019年11月にも直接謝罪。その直後からトップ主導で調査徹底と再発防止策の検討を進めてきた。

再発防止策は相談体制の強化など大きく5項目。社内の相談窓口は従来もあったが、メールアドレスの暗号化などで完全な匿名性を担保し、パワハラを目にした第三者も声を上げやすくした。兆候を早く発見できる仕組みを整え、人事制度改革など組織風土の改善にも同時に取り組むとした。

・社内の連携不足を反省
男性社員にパワハラをした上司は、過去に別部署でのパワハラ事例があったことも職場で認識されていた。加えて、男性社員は自殺する前に、産業医らにパワハラ被害を訴えて休職しているが、問題の上司のさらに上役の管理職らは、男性社員が自殺するまで、休職の理由がパワハラだと認識していなかった。

こうした社内の情報共有や連携の不足は遺族が特に問題視した点で、トヨタ幹部は「異動時などに評価情報をしっかり引き継ぐなど対策の徹底を約束した」と話す。また、別の幹部は、調査の中でこの上司について「上位者(上司)と下位者(部下)では評価が違うことに驚かされた」とも述べ、評価のあり方自体を見直す必要性を強調した。

・課長級以上1万人の適性判断
トヨタの従業員は単独で約7万人、連結で約36万人に上り、課長級以上の管理職は約1万人いる。トヨタは昨年から、この約1万人を対象に「360度評価」を実践。上司や部下、関係する他部署の社員、場合によっては社外も含め十数人から評価を聞き、仕事上の能力に限らず「人間力」を重視した評価基準に改めた。適性がないと判断すれば昇格を見合わせたり、管理職から外したりする場合もあり、関係者によると、実際にそうした事例が既に出ているという。

今後5年間、男性社員の遺族に再発防止の取り組み状況を報告するとトヨタは約束した。遺族は7日、代理人を通じて「トヨタが本当に変わったといえるのか今後も注視したい」とコメントした。

・10年で2倍…パワハラ増加の一途 防止法1年、効果に限界も
職場でのパワハラは今も後を絶たない。厚生労働省によると、全国の労働局に寄せられたパワハラに関する相談件数は右肩上がりに増加。2019年度は8万7570件で、10年度(3万9405件)の2倍超に達した。(岸本拓也)

政府は20年6月に改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)を施行。大企業にパワハラ禁止を就業規則に示すことや、従業員の相談窓口の設置、予防のための研修を義務づけた。22年4月には中小企業にも拡大される。

違反企業には行政が是正指導や勧告し、従わない場合は企業名が公表される。ただ罰則や禁止の規定はなく、ハラスメントを刑事罰などの制裁付きで禁じる諸外国と比べると「甘い」運用と言える。19年には三菱電機の新入社員がパワハラを苦に自殺。さらなる規制を求める声は根強い。

パワハラの労働相談を受ける「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」(東京)には、防止法施行後も相談が相次ぐ。新型コロナウイルス禍でのテレワークの普及などで、対面でのパワハラに関する相談は減ったが、テレワークのテレビ会議中に上司から私生活のことを聞かれるなど、新たな相談事例も出ている。

センターの千葉茂代表は「法律でパワハラの社会的な認知が深まったことは前進だ。一方で何がパワハラに当たるかが依然として曖昧で、居直る企業もある。法改正で罰則規定を盛り込み、抑制効果を高める必要がある」と指摘する。(東京新聞「パワハラで社員自殺のトヨタ、遺族と和解で改善誓う 人事制度など組織風土にメス」2021年6月8日配信)


パワハラ(パワーハラスメント )はトヨタだけの問題ではない。トヨタ就業規則にパワハラ禁止規定・懲罰規定が明記されるだけでなくパワハラ防止法・パワハラ防止指針に明記する改定を期待する。





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