働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

黒川検事長 賭博(賭けマージャン)で懲戒免職は可能?

2020年05月21日 | 検察庁法改正問題
報道によると「東京高等検察庁の黒川弘務検事長が緊急事態宣言中に新聞社の社員らと麻雀をしていた問題で、辞任の意向を固め、総理官邸に伝えたことがわかりました。」「官邸幹部によりますと黒川氏は、(5月)21日までに辞任の意向を固め、総理官邸に伝えました。政府は、後任人事を含め、21日中に決着させたい考え」(日テレニュース24)とのこと。

報道にあるとおり官邸は「辞任」で早期決着したいのであろうが、黒川検事長の賭けマージャンは刑法に規定された「賭博罪」にあたる可能性があるにもかかわらず、早々と本人からの申し出による「辞任」として処理し、高額な退職金を税金から払うようなことが許されるのだろうか。

しかし、人事院「懲戒処分の指針」では、常習として賭博をしていたとしても停職。懲戒免職は難しいという指摘もあるが、黒川検事長の懲戒免職は可能かどうか、もう少し検証したい。

賭けマージャン・黒川検事長の懲戒免職は可能か?

今回、賭けマージャンを認めた黒川検事長に対し懲戒免職を求める声も多い。だが、人事院の「懲戒処分の指針」標準例には「賭けマージャン」つまり「賭博」は「減給」または「戒告」、常習性が認められる場合でも「停職」とあり、「懲戒免職」とは書かれていない。

懲戒処分の指針
第2 標準例
3 公務外非行関係
(9)賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。


賭博のように公務外非行関係で「免職」となるケースは、放火した職員、人を殺した職員、自己の占有する他人の物を横領した職員、他人の財物を窃取した職員、人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員、18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員に限られている。

しかし、人事院事務総長発通達「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)に「任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました」とあるように指針は「参考」にすぎない。

検察官は、安倍内閣が言っていたように単なる「行政官」ではなく、逮捕・監禁することもできる「特別公務員」であり、検察庁法によると「公益の代表者」。さらに黒川検事長は高位の検察官。そのような特に公平・公正さが求められる黒川検事長が「賭博罪」を犯し、しかも常習性まで認められるとするなら、停職よりも重い「懲戒免職」も可能ではないかと思う。

追記(2020年5月21日)
本日(5月21日)5時45分頃、森雅子法務大臣が安倍首相との協議を終えた後、官邸で会見し、黒川検事長を訓告処分にした旨が発表された。訓告は国家公務員法等の規定による懲戒処分ではないから、法的には処分しなかったことに。人事院懲戒処分の指針では「賭博をした職員は減給又は戒告。常習として賭博をした職員は停職」。これは参考であって黒川検事長の場合は免職処分も可能。

追記(2020年6月3日)
日刊ゲンダイ電子版(6月3日配信)は「黒川弘務前東京高検検事長の賭けマージャン問題をめぐり、市民団体『安倍首相による検察支配を許さない実行委員会』が2日、黒川氏に対する告発状を東京地検に提出」と報じた。

追記(2020年6月5日)
共同通信(6月5日配信)の報道によると,森雅子法務大臣は6月5日の参議院本会議で、法務省に設置予定の「法務・検察行政刷新会議(仮称)」に関し、賭けマージャン問題で辞任した黒川弘務前東京高検検事長の定年延長や訓告処分、検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案について、協議対象には含めない意向。森大臣は3点を列挙し「黒川氏の勤務延長や処分は適正に行われた。検察庁法改正案の内容も適切で、これらの適否を同会議の議題とする考えはない」と明言。


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