働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

黒川検事長に訓告 国家公務委員法等改正法は廃案方針

2020年05月22日 | 検察庁法改正問題
黒川検事長の賭博(賭けマージャン)訓告は法的無処分

昨日(2020年5月21日)5時45分頃、森雅子(まさこ)法務大臣が安倍晋三内閣総理大臣(首相)との「黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する処分などの協議」を終えた後、官邸で記者会見した。

森雅子(まさこ)法務大臣記者会見では、黒川検事長と産経新聞記者らとの賭博(賭けマージャン)問題の黒川検事長を訓告処分にした旨が発表された。「訓告」は国家公務員法・地方公務員法の規定による懲戒処分ではない。法的には処分しなかったことに等しい。黒川検事長・賭博(賭けマージャン)訓告は法的には無処分で、軽すぎる、ありえない処分。

人事院・懲戒処分の指針では「賭博をした職員は減給又は戒告。常習として賭博をした職員は停職」と規定されているが、黒川検事長と産経新聞記者らとの賭博(賭けマージャン)は「コロナ禍」の緊急事態宣言下の東京都内で5月1日と13日に行われたと報道されているから詳しく調査すれば「常習性」も認められるから、黒川検事長の産経新聞記者らとの賭博(賭けマージャン)は懲戒処分の指針の既定のままだと「停職」となる。

また、懲戒処分の指針は参考目的で作成されたものであり、特別公務委員かつ高位の検察官でもある黒川検事長の場合は、免職処分も可能ではないか。

常習が疑われる賭博(賭けマージャン)で黒川検事長・懲戒免職は可能
今回、賭けマージャンを認めた黒川検事長に対し懲戒免職を求める声も多い。だが、人事院の「懲戒処分の指針」標準例には「賭けマージャン」つまり「賭博」は「減給」または「戒告」、常習性が認められる場合でも「停職」とあり、「免職」とは書かれていない。

懲戒処分の指針
第2 標準例
3 公務外非行関係
(9)賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。


しかし、人事院事務総長発通達「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)
「任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました」とあるように指針は「参考」にすぎない。

検察官は、安倍内閣が言っていたように単なる行政官ではなく、逮捕・監禁することもできる「特別公務員」であり、検察庁法によると「公益の代表者」。さらに黒川検事長は高位の検察官。そのような特に公平・公正さが求められる黒川検事長が「賭博罪」を犯し、しかも常習性まで認められるとするなら、停職よりも重い「懲戒免職」も可能ではないかと思う。

検察庁法改正案を含む国家公務委員法等改正案廃案方針を産経が報道
昨日(2020年5月21日)、森雅子(まさこ)法務大臣が安倍晋三内閣総理大臣(首相)との黒川弘務検事長・賭博(賭けマージャン)問題に関する処分などの協議を終えた後、官邸で記者会見したが、その後、産経新聞が国家公務委員法等改正案(検察庁法改正案を含む)廃案方針と報道した。

政府は(5月)21日、検察官を含む公務員の定年延長を盛り込んだ国家公務員法改正案を廃案にする方針を固めた。検察庁法改正案の今国会での成立見送りを受け、秋の臨時国会での継続審議を目指していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で雇用環境が急速に悪化する中、公務員の定年延長の必要性は薄れたと判断した。

黒川検事長の訓告処分また黒川検事長辞任を受け入れる旨と森法務大臣が会見で公表後、即座に検察庁法改正案を含む国家公務委員法等改正案廃案方針が報道され、「新型コロナウイルスの感染拡大で雇用環境が急速に悪化する中、公務員の定年延長の必要性は薄れた」という廃案理由は取ってつけた言訳としか聞こえない。正直、安倍内閣にはあきれた。

なお、国家公務委員法等改正案は正式には「国家公務員法等の一部を改正する法律案」。検察庁法改正案(検察庁法改正法案)は国家公務員法等の一部を改正する法律案の第4条(検察庁法の一部改正)のことになり、国家公務員法等の一部を改正する法律案の衆議院議案受理年月日は2020年3月13日、衆議院付託年月日は4月16日、衆議院付託委員会は内閣委員会。

参考「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68、人事院事務総長発)
人事院では、この度、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました。

職員の不祥事に対しては、かねて厳正な対応を求めてきたところですが、各省庁におかれては、本指針を踏まえて、更に服務義務違反に対する厳正な対処をお願いいたします。

特に、組織的に行われていると見られる不祥事に対しては、管理監督者の責任を厳正に問う必要があること、また、職務を怠った場合(国家公務員法第82条第1項第2号)も懲戒処分の対象となることについて、留意されるようお願いします。以上


参考「懲戒処分の指針」抜粋
第2 標準例
3 公務外非行関係

  (1) 放火
    放火をした職員は、免職とする。
  (2) 殺人
    人を殺した職員は、免職とする。
  (3) 傷害
    人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
  (4) 暴行・けんか
    暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
  (5) 器物損壊
    故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
  (6) 横領
   ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。
   イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。
  (7) 窃盗・強盗
   ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
   イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
  (8) 詐欺・恐喝
    人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
  (9) 賭博
   ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
   イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
  (10) 麻薬等の所持等
    麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。
  (11) 酩酊による粗野な言動等
    酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
  (12) 淫行
    18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
  (13) 痴漢行為
    公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
  (14) 盗撮行為
    公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。


追記(2020年6月3日)
日刊ゲンダイ電子版(6月3日配信)は「黒川弘務前東京高検検事長の賭けマージャン問題をめぐり、市民団体『安倍首相による検察支配を許さない実行委員会』が2日、黒川氏に対する告発状を東京地検に提出」と報じた。

追記(2020年6月5日)
共同通信(6月5日配信)の報道によると,森雅子法務大臣は6月5日の参議院本会議で、法務省に設置予定の「法務・検察行政刷新会議(仮称)」に関し、賭けマージャン問題で辞任した黒川弘務前東京高検検事長の定年延長や訓告処分、検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案について、協議対象には含めない意向。森大臣は3点を列挙し「黒川氏の勤務延長や処分は適正に行われた。検察庁法改正案の内容も適切で、これらの適否を同会議の議題とする考えはない」と明言。


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