さちぶーの眼線

何事も、コツコツ・・・地道に・・・できたらいいいのですが、根が横着もので。 ^_^;

Aの字の歌

2005-01-24 | 与謝野晶子あれこれ
Aの字の歌 与謝野晶子作

Ai(愛の)頭字、片仮名と
アルハベットの書初め、
わたしの好きなAの字を
いろいろに見てうたひましょ。

飾り気の無いAの字は
掘立小屋の入り口、
奥に見えるは板敷か、
呉座か、囲炉裏か、飯台か。

小さくて華奢なAの字は
遠い岬に燈台を
ほっそりとして一つたて、
それを繞るは白い波。

いつも優しいAの字は
象牙の琴柱、その傍らに
目には見えぬが、好い節を
幻の手が弾いてゐる。

いつも明るいAの字は
白水晶の三稜鏡(プリズム)に
7つの羽の美しい
光の鳥をじっと抱く。

元気に満ちたAの字は
広い砂漠の砂を踏み
さっく、さっくと大足に、
あちらを向いて急ぐ人。

つんとすましたAの字は
おりんぷ山の頂に
槍に代へたる銀白の
鵞ペンの尖をたててゐる。

時にさびしいAの字は
半身だけを窓にだし、
肱をば突いて空を見る
三角頭巾の尼すがた。

しかも威のあるAの字は
埃及の野の朝ゆふに
雲の間の日を浴びて
はるかに光る金字塔。

そして折折Aの字は
道化役者のピエロオの
赤い尖った帽となり、
わたしの前に踊りだす。


http://www.kinet-tv.ne.jp/~tam-y/anojinouta.htm

与謝野晶子の恋の歌もいいけれど、案外童話や子供向けの詩に晶子の優しさや想像力の豊かさが素直に現れていて感動します。
与謝野晶子の「乱れ髪」に代表されるような、初期の短歌ばかりに世の中の注目は集まりがちですが、違った意味での評価をもっと受ければいいなぁと、最近特に思います。(晶子は死後50年以上たっているので、著作権は消滅かと思い、おそれおおくも自分のブログに書き込みました。