とはずがたり

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母親IgGの胎児移行に関与する因子

2020-03-13 18:31:58 | 妊娠・出産
母親のIgGが胎盤を通過して胎児に移行することは胎児の初期免疫に重要であり、母親へのワクチン投与によって胎児・新生児の感染症予防が可能になる。この論文ではHIV感染妊婦においてIgGの胎児の移行が低下していることに着目し、極めて詳細な臨床研究からIgGの胎児移行に関与する因子を明らかにした。その結果、抗原特異的なIgGが一様に胎児に移行するのではなく、様々なセレクションがかかっていること、例えばIgG FcR binding strength, IgG subclass(IgG1, G4が移行しやすい)そしてIgGのFc部分のglycan profiles(fucose, bisected, disialylated glycans)が移行に影響することが明らかになった。これだけの臨床データを細かく解析し、しかもきちんとした論文にまとめ上げたというのは驚きです。この論文とback-to-backでdigalactosylated Fc-glycansが選択的にFcRnおよびFCGR3Aに結合して胎児への移行を促進することを明らかにした論文が掲載されています。興味深いことにこのような修飾を受けたIgGはNK細胞を活性化する能力が高いそうです(https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(19)30615-4)。これらの結果は胎児の免疫という観点からも、また母親から胎児に移行しにくい抗体製剤の開発という観点からも極めて重要です。
Cell. 2019 Jun 27;178(1):190-201.e11. doi: 10.1016/j.cell.2019.05.046. Epub 2019 Jun 13.
Fc Characteristics Mediate Selective Placental Transfer of IgG in HIV-Infected Women.


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