「あ、はい…」
「あのぉ… どちらまで行かれるんですか?」
馬鹿か、もうここまで来たなら盛岡しかねぇだろ!
「盛岡までです…」
「あ、そうなんですか… 実は俺もです。」
だから、ここまで来たら当然同じ行き先だろうが!
「なんていうか… 夢が終わって実家に戻るというか…」
なんか無理に話を盛り上げようと、俺は変な事を言い出してしまった。
「そうなんですね… 実は私もそんな感じです。夢の終わり、みたいな。」
彼女はしょんぼりした様子でそう返した。
「あ、そ、そうなんですか? 奇遇ですね。でも、荷物少なそうですよね?」
「あっ、トランクにも預けてあるので…」
「なるほど…」
なんかよく分からない会話をしてしまったが、もう日の出の時間かと思うほど、一気に光が射した気がした。
「あ、そろそろバスに戻らないとですね!」
彼女が明るい声でそう言った。
「そうですね、じゃあまた後ほど…」
そう言って俺と彼女はバスへと乗り込みお互いの席に戻った。
もうあいつもいないし、ひとつ前の席、いや、なんなら俺のすぐ横の8Cの席に来ちゃいなよ!って言いたかったところだが言えるわけはなかった。
バスは再び動き出し、盛岡駅には予定通り朝6時50分くらいに到着するとアナウンスがあった。
俺には今、新しい夢ができた。
これは「夢の終わり」じゃない。
「夢のはじまり」なのだ!
お互いに夢破れて傷ついた心を癒し合いながら二人で仲良く生きてゆけば良いではないか。
この小説のタイトルも今からでも『夢のはじまりの夜行バス』に変更してしまえば良い。
運転手の素晴らしい安全運転のバスの中、彼女からしたら完全無許可である俺の新しい夢だけが時速300キロぐらいで、もうすぐ夜明けを迎えようとしている宮城県内の高速道路を暴走していた。
(最終章へ続く)
「あのぉ… どちらまで行かれるんですか?」
馬鹿か、もうここまで来たなら盛岡しかねぇだろ!
「盛岡までです…」
「あ、そうなんですか… 実は俺もです。」
だから、ここまで来たら当然同じ行き先だろうが!
「なんていうか… 夢が終わって実家に戻るというか…」
なんか無理に話を盛り上げようと、俺は変な事を言い出してしまった。
「そうなんですね… 実は私もそんな感じです。夢の終わり、みたいな。」
彼女はしょんぼりした様子でそう返した。
「あ、そ、そうなんですか? 奇遇ですね。でも、荷物少なそうですよね?」
「あっ、トランクにも預けてあるので…」
「なるほど…」
なんかよく分からない会話をしてしまったが、もう日の出の時間かと思うほど、一気に光が射した気がした。
「あ、そろそろバスに戻らないとですね!」
彼女が明るい声でそう言った。
「そうですね、じゃあまた後ほど…」
そう言って俺と彼女はバスへと乗り込みお互いの席に戻った。
もうあいつもいないし、ひとつ前の席、いや、なんなら俺のすぐ横の8Cの席に来ちゃいなよ!って言いたかったところだが言えるわけはなかった。
バスは再び動き出し、盛岡駅には予定通り朝6時50分くらいに到着するとアナウンスがあった。
俺には今、新しい夢ができた。
これは「夢の終わり」じゃない。
「夢のはじまり」なのだ!
お互いに夢破れて傷ついた心を癒し合いながら二人で仲良く生きてゆけば良いではないか。
この小説のタイトルも今からでも『夢のはじまりの夜行バス』に変更してしまえば良い。
運転手の素晴らしい安全運転のバスの中、彼女からしたら完全無許可である俺の新しい夢だけが時速300キロぐらいで、もうすぐ夜明けを迎えようとしている宮城県内の高速道路を暴走していた。
(最終章へ続く)