周平の『コトノハノハコ』

作詞家・周平の作詞作品や歌詞提供作品の告知、オリジナル曲、小説、制作日誌などを公開しております☆

コトノハラビリンス2~prologue~

2020年10月29日 | コトノハラビリンス
ごく一部の方からは大好評、参加者からは大不評をいただいた「コトノハラビリンス」の終了から1年半が経ったある日、東京都内の某コンビニエンスストアに2人組の強盗が入った。

レジには「増田」という名札をつけた若い女性スタッフが立っていた。

目出し帽を被った2人組の強盗は刃物のようなものを女性スタッフに向ける事もなく、こう言った。

「おい、二瓶を出せ!」

「え?」と女性スタッフの増田は訊き返す。

「早く二瓶を出せと言っているんだ!」強盗の1人が怒鳴る。

「レジのお金じゃなくて二瓶君を出せば良いんですか?」

おそらくアルバイトの二瓶一之がどうせまた何かをやらかして、それに対してクレームを言いに来た客がどういうわけか新型コロナウイルス感染対策に全く無意味な間違ったマスクを着けて来てしまったのだと脳内を整理した増田は、たまたまバックヤードで休憩を取っていた二瓶を呼びに向かった。

「お、おまたせしました…」

きょとんとした表情で二瓶が売場に姿を現すと、強盗の2人は無言で二瓶の体を担ぎ上げ、乗ってきた小さなワゴン車の後部座席に二瓶を突っ込んだ。
ちなみにこのワゴン車はコトノハラビリンスで、当時はまだ普通自動車第一種運転免許取得前のはずであった主催者の周平が運転していたものと同じ車種で同じナンバーだ。

強盗のうち1人が店内に戻り、増田に何やら地図らしきものを渡して言った。

「店長にこう伝えろ。これより謎解きイベント、コトノハラビリンス2を開催する。二瓶を返して欲しければ警察には連絡するな。そしてなるべく頭の良いスタッフを4名用意しろ。その4名で明日の正午に福島県のその地図の場所まで来い。もちろんマスク着用でだ。1日で終わるから、明日1日だけシフトの調整をお願い致します。以上だ。」

そしてすぐに4名のスタッフが選ばれた。全員が大学生だ。
男性スタッフの加藤、小山、そして女性スタッフの増田。
そして、これ以上スタッフを取られては店が回らないとの判断で、色々訳あってクビになり、現在は無職の手越(男性)も呼び出された。

店長は4人にこう言った。

「必ず二瓶君を取り戻してくれ。彼くらい暇で、いつでもシフト入れてOKなスタッフは他にいない。そして彼くらい貧乏でどんなに残業させても文句を言わないスタッフは他にいない。つまりうちの店にとって彼ほど都合の良いスタッフは他にいない。君たちの学業に影響が出ないためだと思って頑張ってきてくれ! もし二瓶君を取り戻せたら、手越君も特別に復帰させてあげるよ。」

翌朝、4人の勇者は不純な動機を胸に、強盗から渡された地図に書かれた福島県某所へと向かった。

「そっちが来いや! っていうか、リモートでやれや!」と思いながらも。