周平の『コトノハノハコ』

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『夢馬鹿』~第4話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年08月28日 | シューピー散文クッキング
前回からちょっと間が空いてしまいましたが、決して挫折したわけではありませんよ!
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない、自分から自分への超無茶ぶりな新企画「シューピー散文クッキング」も早くも4回目。

さて、今回の材料は…

「さて」…小さじ1杯(これは使いやすい!)
「竜巻」…大さじ1杯
「留まる」…小さじ3杯
「絵本」…小さじ2杯
「本性」…小さじ2杯

今回は割と簡単なお題が多いけど、竜巻注意報発令!? 今度こそ主人公が死ぬかもしれない第4話スタート!!

『夢馬鹿』~第4話~

その後は残念ながら一度も赤信号に引っかかる事もなく、最寄り駅へと辿り着いた。

この駅に着くと必ず目に"留まる"ものがある。
駅のすぐ目の前にある毎日行列が絶えないラーメン屋である。
私の夢はあんな風に大繁盛するラーメン屋を開く事だ。

しかし、大繁盛するしない以前に店を開くまでの道のりが長い。
資金や土地の問題などではなく家内を説得する事である。

4歳の娘が毎晩寝る前に家内が読み聞かせている"絵本"の中の世界は、満天の星空のように夢で溢れている。
32歳の父親が毎晩寝る前に家内に言い聞かせている自分の夢は"竜巻"にでも巻き込まれたかのように家の屋根を突き破り、満天の星空へと呆気なく消えてゆく。

これが結婚前だったり、子供が生まれる前だったら違ったのであろう。
子供を2人も授かった後で、親馬鹿な私の中で長い間眠りについていた夢馬鹿が今更のように"本性"を現した事がいけないのだ。

それは"さて"おき、今日も私を平凡でつまらない一日を過ごす事になる会社へと運ぶ電車が駅のホームへ到着したようだ。

ここから私は毎朝毎夕、25分間満員電車に揺られる。
大切に思う家内や子供たちと、完全に捨てきれない夢との間で揺れている自分の心と同調するように。

電車は4つの駅に停車した後に、私が勤める会社まで徒歩3分の距離にある駅に到着した。

ホームに降りると、反対側の電車を待っている20歳前後くらいの女性の姿があった。
もちろん他にも何人もの乗客がホームにはいるのだが、なぜかその女性だけが気になった。
べつにその女性がタイプだからとかではなく、何かに絶望しているように見えたからだ。

「間もなく2番線に下り列車が参ります」

《第5話へ続く》


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