たまに、雇入れ時に就業規則を交付すればいいか、という質問を見かけます。求人条件の提示とその異同を見てみましょう。
求人票 | 雇入通知書 | 就業規則 |
職業安定法5条の3,規則4条の2第3項 | 労基法15条1項、規則5条 | 労基法89条 |
従事すべき業務内容※ | 従事すべき業務内容※ | |
契約期間 | 契約期間 | |
有期の場合更新基準 | ||
試用期間 | ||
就業場所※ | 就業場所※ | |
始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日 | 始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換 | 始業終業時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換 |
賃金額(臨時の賃金賞与を除く) | 賃金の決定、計算、支払い方法、締め日、支払日、昇給 | 賃金の決定、計算、支払い方法、締め日、支払日、昇給 |
退職(解雇事由を含む) | 退職(解雇事由を含む) | |
退職手当(範囲、決定、計算、支払い方法、支払い期) | 退職手当(範囲、決定、計算、支払い方法、支払い期) | |
臨時の賃金、賞与、最低賃金 | 臨時の賃金、賞与、最低賃金 | |
労働者負担とする食費、作業用品 | 労働者負担とする食費、作業用品 | |
安全衛生 | 安全衛生 | |
職業訓練 | 職業訓練 | |
災害補償、業務外傷病扶助 | 災害補償、業務外傷病扶助 | |
表彰制裁 | 表彰制裁の種類程度 | |
休職制度 | ||
適用される社会保険 | ||
労働者を使用する事業者名 | ||
派遣労働者として雇用する旨 | ||
受動喫煙防止措置 | ||
労働者すべてに適用される定め |
就業規則に、たとえば就業場所の明示がありませんが、事業所単位でそこに働く労働者に集団的に規律する規則ですので、性格を異にしており、明示の必要はないわけです。雇入れ時に就業規則を交付してすますには、あなたを労働者として雇う旨、従事させる業務内容、契約期間に関する事項、就業場所、賃金額といった個別に適用される項目を補充する必要があります。中には就業規則でなく、求人票交付でいいかという質問も同様に、雇う旨、中列にあって左列にない事項の補充が必要でしょう。
労働条件の相違
求人票と雇入れ通知書の相違は、職業安定法違反虚偽求人企業として、刑事処罰の対象です(懲役6カ月、罰金30万円)。
65条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
八 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
九 虚偽の条件を提示して、公共職業安定所又は職業紹介を行う者に求人の申込みを行つた者
ところが雇入れ通知書と事実の相違は、刑事処罰の対象でなく、即日退職の権利を労働者に付与しているだけです。通知書そのものの不交付は30万円の罰金です。
(2022年5月22日投稿、2024年10月1日編集)