注文は一瞬、買い物は即決。
レストランで何を食べようか
迷うこともないし、買い物で
どの服にするか悩むことも
ありません。
はじまりはたぶん、幼い頃。
絵が好きな子どもだった
僕をデパートの美術展に
連れて行くたびに、母はこ
んなことを言いました。
「さあ、どの絵がいいか選んで
みなさい。買っておうちに飾る
つもりで」
もちろん手が届く値段ではあり
ませんが、自分の部屋に飾ると
思えば、真剣になります。
100点の作品を漫然と眺める
より、たった一枚を選んで自分
のものにするという目で見て
いれば、好き嫌いを超えた判断
基準が研ぎ澄まされます。
知らぬ間に親が施してくれた、
ものを選ぶ訓練。これは大人に
なってからの財産になっていま
す。
暮らしも仕事も、選択の連続です。
誰かとランチに行くか行かないか
でさえ、選ばないで保留にしている
と、自分にも相手にも負担になります。
イエスもノーも抱え込んだまま一人で
考えていたら、心地よいズムで生きる
のはむずかしくなります。
これは選ぶ訓練であると同時に、直観
もきたえられ、想像する訓練にもなり
ます。
暮らしのなかに選ぶ訓練をする材料は
あふれています。見つけて試してみて
はいかがでしょうか。