太陽が東の空に昇れば、儚く
消え去ってしまう、朝露の
ような、約束。
あなたは注文する。バーテンダ
ーの背中に向かって、ため息を
つく。
彼はまだやって来ない。どこか
らも、姿を見せない。エレベー
ターのと扉はさっきから何度
も、開いたり、閉まったりして
いる。が、彼は乗っていない。
あなたは気づく。やっとのこと
で、悟る。
今夜、彼は来ないかもしれない。
いや、来ない。来ないに決まっ
ている。きょうの約束は、あの
約束だったのだ。
あの約束―――
いつだったのか、このバーの
ちょうど真下にあるはずのベッ
トの上で、交わした指切り。
「いつものように待ち合わせ
をして、仮にどちらかが現れ
なかったら、それを『別れ』
のメッセージにしよう。
きれいさっぱり、あと腐れな
く、別れよう」
ついさっき見た、気持ちのいい
夢が一瞬にして、悪夢にすり替
わる。
夢のなかで、誰かの体を抱き
しめているのは夫だ。夫は
恋人の耳に囁いている。
「妻にきみのことを打ち明けた。
何もかも話した。別れるつもり
だ。俺にはもう、きみしかいな
い・・・・・」
まぶたをこすっても、こすって
も、あなたの目にはすべてが
二重に映っている。
YouTube
back number - ハッピーエンド (full)
https://www.youtube.com/watch?v=T8y_RsF4TSw
消え去ってしまう、朝露の
ような、約束。
あなたは注文する。バーテンダ
ーの背中に向かって、ため息を
つく。
彼はまだやって来ない。どこか
らも、姿を見せない。エレベー
ターのと扉はさっきから何度
も、開いたり、閉まったりして
いる。が、彼は乗っていない。
あなたは気づく。やっとのこと
で、悟る。
今夜、彼は来ないかもしれない。
いや、来ない。来ないに決まっ
ている。きょうの約束は、あの
約束だったのだ。
あの約束―――
いつだったのか、このバーの
ちょうど真下にあるはずのベッ
トの上で、交わした指切り。
「いつものように待ち合わせ
をして、仮にどちらかが現れ
なかったら、それを『別れ』
のメッセージにしよう。
きれいさっぱり、あと腐れな
く、別れよう」
ついさっき見た、気持ちのいい
夢が一瞬にして、悪夢にすり替
わる。
夢のなかで、誰かの体を抱き
しめているのは夫だ。夫は
恋人の耳に囁いている。
「妻にきみのことを打ち明けた。
何もかも話した。別れるつもり
だ。俺にはもう、きみしかいな
い・・・・・」
まぶたをこすっても、こすって
も、あなたの目にはすべてが
二重に映っている。
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