佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

『恋におちて』 -Falling in Love -

2024-08-06 12:08:11 | 日記

 

 

クローゼットの前に立って、迷う。
何を着ていこう、今宵の逢瀬
にふさわしい洋服は、どれ?

あれこれ取り出して、身に着けて
は、むしり取る。「これでよし」
と思った直後に「ああ、違う!」
とつぶやいて、また、一からや
り直し。

我ながら「馬鹿みたいだ」と思う。
この「ひとりファッションショー」
をやっていると、いつも、古い映画

『恋におちて』の中で、メリル・スト
リーブがデ・ニーロに会いに行くた
めに、ベットルームの鏡の前で洋服を
取っ替え引っ替えしているシーンを
思い出す。

想いを寄せている人の手で、あとで
脱がされるために着るドレスを選ぶ
・・・なんて骨の折れる、なんて心
心躍る時間。

さんざん迷った挙句、わたしが選ん
だのは、ラベンダー色のシルクの
ワンピース。胸もとと背中が大きく
開いている。アクセサリーは、何も
つけない。

このドレスにはなぜか、香水だけが
映る。ストッキングと靴は黒。バック
は濃い紫の薔薇の花を飾ったものに
する。 

これで決まり。
彼が代官山駅に着くのは七時半
になるだろう。


電話がかかってきたのは、午後
四時二十分だった。
わたしはちょうど、今日の仕事に
一区切りつけて、そろそろ夕食の
支度にとりかかろうと思いながら、

受話器を取ると、彼の声が飛び込
んできた。

「夕方のアポがひとつ、急にキャン
セルになって今夜どこかで一緒に
食事をしよう。翔子の好きな店で
いいよ」

彼ったら、なんて、嘘が下手なの。
そんな見え透いた嘘をついて、ほ
んとに、可愛い人。

「了解。じゃあ、お店はわたしの
ほうで予約しておく」
彼はわたしが、もうすっかり忘れて
いると、思っているのだろうか。

忘れるわけがない。きょうが何の日か。

   


わたしはその日、ニューヨークに
向かう飛行機に乗っていた。今から
三年前のきょうだ。

あとはもう離陸をするだけ、という
状態になってから、大慌てで駆け込
んできたのが彼だった。
いかにも「ニッポンの企業戦士です」
といった風情の人、苦手なタイプだ、

隣の席に来なければいいけれどと、
思いながら眺めていると、案の定、
客室乗務員が彼の搭乗券を見ながら
指し示したのは、わたしの隣だった。

彼とは笑顔と目配せでわたしに挨拶
をしてから、窓際の席に腰掛けた。
笑顔はなかなか素敵だ。と思った。
でも、それだけ。

食事が終わり、映画の上映が始ま
った。

いかにも飛行機の中で上映される
映画としてふさわしい、他愛のない、
犬猫の冒険物だった。

かずかずの危険と困難をかいくぐ
って、最後には無事に自分の家ま
で戻ってくる、そんなストーリーだ。

やがて、クライマックスがやって
きた。今でも、わたしはあの「場面」
を思い出すと、頬がゆるんでしまう。

背景は、機内の暗闇。登場人物は、
頭の切れる辣腕ビジネスマン。そ
してわたしが目にしたのは、彼の
頬を伝う、ひとすじの涙だった。

彼は泣いていたのだった。動物たち
が飼い主と再会する感動の場面で。
なんて可愛い人なの!

忘れもしない、彼を好きになった
のは、その瞬間だった、恋の神さま
がわたしのために、彼の最も愛され
るべきチャームに、ぱっと光を当てて
くれたんだと思う。  

今から三年前に、この、広い広い、果
てしない宇宙の中で、混沌とした世界
の中で、わたしたちは巡りあった。

きょう八月六日は、ふたりの
恋の誕生日

電車はあと五分もすれば、到着
するだろう。思い切りお洒落し
た彼は、きっと、深い紫色の
薔薇の花束を手に電車から降り
てくるだろう。

駅から出て、わたしを探す彼の姿が
見えたなら、わたしはまっすぐに
駆けて行く。

世界で一番愛している。
世界で一番素敵な人の、
両腕に抱かれるために。


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「ある日、ある午後」

2024-08-06 12:05:42 | 日記

人生はたくさんの「さよな
ら」で成り立っている。

けれどもその一言がスマートに言え
たためしはなく、惨めにすくみあが
ってばかりいる。

「さよならに乾杯」と、さりげなく
言えたら、どんなにいいだろう。
別れをそんなふうに優雅に茶化すこ
とができたら・・・・・。

いさぎよくできないのならいっその
こと、女ならなりふりかまわず泣き
喚き、

別れたくないのだ、さよならなんて
いやだとすがりつけば、まだ可愛ら
しいものを、

そんなふうに姿勢を崩してしまうく
らいなら死んだほうがましと、笑え
もしないお粗末なユーモアを一席
披露して、結局泣きたくなるのが
セキのヤマ。

あぁ人生はなんとまあよく、
ウッディ・アレンの映画の世界と
似ていることか。ドジで、哀しくて、
滑稽で・・・・。

 


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『相手に合わせる力を「愛」と 言います』

2024-08-06 12:04:37 | 日記
“愛は事(じ)なり」といえり”
「愛とは、相手に合わせる心で
ある」

恋愛中は、彼女(彼氏)の
趣味や行動に自分を合わせる
ことがまったく苦ではありま
せん。

たいくつな恋愛映画を観に
行って二人で感動したり
します。

ところが、結婚して10年も
経つと、結婚当時の熱い思い
もさめてきて、お互いに相手
に合わせることができなく
なります。

「愛」とは、恋愛や夫婦愛ば
かりでなく、親子愛、師弟愛、
友愛など、さまざまであるこ
とは言うまでもありません。

また、「事」とは、同事の心です。
同時の心とは、自分の立場を
捨てて、相手と同じ境遇に
なって協調できる心のこと
です。

社会生活で言えば、立場が上
の者や弱者を守ることです。

たとえば、医者で言えば、患者
に対して専門家の義務を
果たしながら、患者の目線
になり治療をすることです。

これは、親が子に対して、
教師が生徒に対して、上司
が部下に対して、役人が
市民に対して、

あらゆる人間関係において
必要なことです。

もしも今、夫婦関係が停滞
気味でしっくりいかなくて
も、セックスレスでも

お互いに同時の心を実践す
るだけでもそれは改善でき
る。
「愛は事なり」といえり。



 

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男にとっての「寿司屋のおきて」

2024-08-06 12:03:28 | 日記
まず、初めて寿司屋を選ぶ
場合、これは池波正太郎が
書いているのだが、

台に座らず隅にあるテーブル
の椅子に腰かける。
そしてメニューを見せてもら
い、

ちらし寿司か握りのセットを
頼むのである。

つぎからは堂々と台に座る。

握る寿司に違いがでる瞬間
である。
店側は、この客はこないだ
テーブル座った客だ、と覚
えているのが普通だからだ。

基本的に、蕎麦屋などと異
なり

寿司屋は、店の主人の
方針や、やり方で値段やも
ろもろに強く反映される。

一発で気にいらなけらば
やめた方がいいのが
寿司屋選びのコツ。

YouTube
時間よ止まれ

https://www.youtube.com/watch?v=gVYCzitGN0k


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「ジンの香り」 番外編    ー想い出にしたくないー

2024-08-06 11:25:24 | 日記
目の前に、上りの電車がゆっくり
入ってきて、停まった。ふたりと
っも、まるで申し合わせしたよう
に、立ち上がらなかった。

さっきから、帰りの電車を一本、
もう一本、と、遅らせていた。
ひとたび電車に乗ってしまえば、
ふたりの時間は数分後には終わる
と、わかっていたから。

「じゃ、今から行こう」
いつになく、強い口調だった。
「今から?どこに?」

愛おしい人はわたしの手を取ると、
改札に向かってずんずん歩き
始めた。わたしの手を取ると、
改札に向かってずんずん歩き
始めた。

わたしの手は炎のように熱く、
優しい人の手は真冬の月のよ
うに冷たかった。

まるで私の欲望を鎮めようと
するかのように、優しい人は
力を籠めて、わたしの手を握
りしめていた。

わたしたちは激しく、求め合
っていた。けれどもそれを言
葉で確かめるということは
しなかった。確かめなくても、
わかり過ぎるほどに、わかって
いたから。

入ったばかりの改札を通り
抜けて、わたしたちは駅の
外に出た。

駅前の大通りまで出てから、
優しい人は右手を上げて、
流しのタクシーを拾った。
タクシーに乗り込むと、優
しい人は運転手に向かって
告げた。

「休めるところまでお願い
します。できるだけ、遠い
ところで」

そんな言い方をしても、運転
手は一組の男女をどこかに
連れていってくれるものなの
だということを、わたしは初
めて知った。

ひとつしか年の違わない優
しい人が、ひどく大人びて
見えた。
車のなかでも、わたしたち
は固く、手を握り合ったま
まだった。

YouTube
シャドー・シティ

https://www.youtube.com/watch?v=8cb5QRsi-B0



 

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「愛をめぐる随想」

2024-08-06 11:23:17 | 日記
木という字を一つ書きました
一本じゃかわいそうだから
と思ってもう一本ならべると
林という字になりました

淋しいという字をじっと見て
いると

二本の木が
なぜ涙ぐんでいるのか
よくわかる

ほんとに愛しはじめたときにだけ
淋しさが訪れるのです



YouTube
思い出せなくなるその日まで - Ms. OOJA

https://www.youtube.com/watch?v=3bYI44z_IFQ



 

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「恋の闇」

2024-08-06 11:20:37 | 日記

新月の夜に現われるのは
きみの姿をした魔物かも
しれない

それでもぼくは 抱くだろう

闇と手を組み 堕ちるだろう






『恋のために理性を失った状態』

「恋の闇路」ともいい、恋のために
心が乱れて、理性を失った状態を
闇にたとえて言った言葉です。

恋をすると周囲のことが何も見え
なくなってしまいます。

心のコントロールもままらなく
なり、感情が激しく揺れ動きます。

われを忘れて嫉妬に狂ったりする
のも、まさに「恋の闇」の中に
迷い込んでしまうせいでしょう。

分別を失っている点では「恋は
盲目」も同じですが、こちらは
ぐんと明るい印象。

恋一筋で、恋人の欠点がまるで
見えなくなっている娘たちに、
「恋は盲目だね」と冷やかして
いったりする言葉です


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「たからもの」

2024-08-06 11:18:58 | 日記
君のため
しまい忘れたふりをした
あげたい品を
ついでのようにさしあげる
手にとって大事そうにあち
こちひっくり返して
  ながめている
   君の
  横顔を胸に深くきざむ

これかぎり
失ってしまうもののように


 

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『ベルベットハンマー』 Ⅲ

2024-08-06 11:15:48 | 日記
空になったグラスを手に、あなたは
ベットから抜け出して、裸足でキッ
チンへと向かう。溶けかかっている
氷の山にウオッカをつぎ注ぎ足した
あと、思いついて、生クリームを
少しだけ、加えてみる。

「意外だと思われるかもしれませ
んが、ウオッカみたいな強いお酒
と生クリームって、相性がいいん
ですよ。美女が生クリーム、野獣
がウオッカでしょうか」

いつだったか、どこかのバーで
飲んでいた時、若くてハンザム
なバーテンダーが、
「試作品ですが、よろしければ
どうぞ」

と、差し出してくれたカクテル。
名前は忘れてしまったけれど。
ひと口含んで、舌の上で転がす
ようにして味わいながら、あなた
はその場面を思い出す。

そうだった。私はあの夜、学生
時代の友人、純子と一緒に飲ん
でいた。どこから、そういう
話しになったのか、前後のいき
さつは覚えていないけれど、
私たちはふたりで「不倫談義」
に花を咲かせていた。

「不倫なんて、絶対にいやよ。
断じて許せない。不倫している
人とは友だちでいたくないし、

できれば仕事も一緒にしたくな
いわね。だって、なんだか心の
底からその人を信頼できない気
がするもの。それに、誰かを裏
切ることでしか手にできない恋
なんて、悲し過ぎる」

鼻息も荒くまくし立てた私に、
アメリカから一時帰国した女
はふんわりとベールをかぶせる
ように言った。

「そうね、私もそう思う。悲しい
恋は、できればしたくないなって。
でも、そうは思っていても、思って
いるからこそ、人は時々、思ってい
ることとは正反対のことをして
しまうこともあるものよ。

あなただって、いつか・・・・・」

私は女の言葉を明るく笑い
飛ばして、そのつづきを遮った。
「馬鹿なこと、言わないでよ。そん
なこと、私には金輪際、ありえない
わ。あるわけないじゃないの」

そう言って、会話の糸をそこで
断ち切ってしまった。
けれども今、あなたは痛いほど、
認めている。友だちが言っていた
ことは、正しかった。

もしかしたら彼女にもそんな経験
があったのだろうか。

好きになってはいけないと
思っているからこそ、好きに
なってしまう。まるで自分の
人生からしっぺ返しを受けて
いるような、

あるいは、ふいに自分の人生
が宙吊りになってしまったよ
うな状態に、もしかしたら
あの頃、陥っていたのだろうか。
彼女も、今の私と同じように。

声が聞きたいと、あなたは思った。
切実に、彼女と話しがしたい、
今こそあのつづきについて、語り
合いたい、と。

アメリカ東海岸は今、何時なの
だろう。思いながら、あなたは
グラスに残っていたお酒を飲み
干した。



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