佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

「若葉」 ―声を聞く―   La fine

2024-08-09 12:17:12 | 日記

――――また、会えたね。

あのひとのうしろに隠れる
ようにして、俯(うつむ)き
加減の少年が立っている。

―――驚いた!こんなことって、
あるのね?
―――僕は驚かなかった。全然。

と,あのひとは言う。その時、書棚の
陰から、ひとりの少女が小鹿のよう
に飛び出してきて、わたしの姿に気
づき、はっと姿勢を正す。あのひと
笑顔を向けながら、話しかける。

―――ほら、章子ちゃん。ご挨拶して。
この人が『はるになったら』のお姉さん
だよ。

―――こんにちは、高田章子です。この
子は、弟の登です。
―――ああ、ほんとに、驚いちゃった。
こんなことって、あるのね

―――さっきから、驚いてばかりいる。
そう言って、あのひとは笑う。

―――あなたはどうして、驚かないの?
―――驚かないよ。だって、絶対
会えるってわかってたから。

―――どうして、わかるの、そんなこ
とが、
―――理由なんて、ないよ。ただ、わかっ
ただけ。決まってたんだよ。ここで、
こうしてまた会えるって、最初から
決まってた。

それからあのひとは、わたしの胸
もとに、まっすぐ右手を差し出す。
大きな手のひらだ。わたしは知って
いる。

大きくて、ごつごつしていて、温
かい。

わたしに手紙を書いてくれた手。
電話をかけてくれた手。あの日、
成田で、わたしを抱きしめてくれた
手だ。

そう、これがあのひとの「忘れ物」
だった。

わたしは繰り返す。

強く、強く、もう絶対に離さないと、
自分に言い聞かせながら。

 


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「誰かの人生を変えるきっかけ」

2024-08-09 12:13:26 | 日記

たまたま巡り会った一冊の
本で人生が変わったという
人がいます。
自分の仕事が誰かの人生を
変えるきっかけになるかも
しれない。

そう考えたらやりがいも出る
んじゃないでしょうか。
とはいえ、それはそんなに
特別な事じゃないと思います。

たとえば、美容師さんだっだら、
自分が髪を切ってあげた人が
その日のパーティで、誰かに
見初められて結婚することに
・・・。
なんてことになるかもしれ
ないし。

たぶん、どんな職業にもきっと
それはある。
そういうふうに考えると、
いまの仕事がもっと楽しくなり
ます。


YouTube
MIki Matsubara - 真夜中のドア / Stay with me

https://www.youtube.com/watch?v=k-KAY_Glmn4

 

 


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「ふるえる瞳」

2024-08-09 12:11:37 | 日記
心がひきあっているなら
どんな障害があっても
自然とあゆみよっていくもの
です

そこには 
内気さや躊躇や策略は
はいりこむスキがないのです
どうしてもすれちがってしま
うとか

相手を思いやるばかりに強気
にでれないというのなら
それはやはりお互いに
それほど求めあっているのでは
ないのでしょう

恋する少女を力づけるどんな
言葉もありません

彼があなたを心の底からほし
がっているなら
あなたがあれこれ考えるヒマ
もないほど
あっというまにさらわれてい
るはずなのです


YouTube
Michel Petrucciani-september second

https://www.youtube.com/watch?v=HqRAwbDP290



 

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昼間のカクテル  

2024-08-09 12:10:18 | 日記

アガバンサスは、ギリシャ語で
「愛」を意味する「アカベ」と、
「花」を意味する「アンサス」
をつないだ言葉。だから
この花は、

―――愛の花なんだよ。

と教えてくれた人の声が、そよ風に
乗って、耳もとまで届いた気がした。
耳上がりの森のように、たっぷり
湿った、柔らかい低い声。

あ、彼だ。
と、思った。彼が飛んできた。
たった今、彼の魂の粒子が宇宙の
彼方から飛んできて、わたしの心
の扉をノックした。

―――知ってる?この花の別名は
ね、リリー・オブ・ナイルってい
うだ。むかしむかし、あるところ
に、ひとりの旅人がいました。

男は旅の途中で、ナイル河のほ
とりにひっそりと咲いているこ
の花を見つけて、愛する妻のた
めに持ち帰ろうと、一輪だけ、
摘み取りました。

ところが、あとほんの少しで
家にだどりつけるというところ
まで来て、男は醜い戦争に巻き
込まれ、大怪我を負って、死ん
でしまったのです。

血だらけの手に、しっかりと花を
握ったまま・・・・。男は息絶え
ましたが、花はなぜだか、枯れま
せんでした。

それから花はすべての蕾を開き、
実をつけ、種をつくっていったの
です。やがて、はらはらと大地に
零れ落ちた種から、新しい芽が
出て、根を張り、葉を広げ、いつ
のまにか、

戦場跡にはこの美しい愛の花
が毎年、そこら中に、咲き乱れ
るようになりました。それまで
戦いに明け暮れていた人々は、

この可憐な花の姿に胸を打た
れて、無意味な争いをやめる
ことにしたのです・・・・と、
まあ、そんな謂(いわ)れの
ある花なんだ。

――きっと、愛が在ったから、
花は枯れなかったのね。

――その通り。植物って、偉大だ
よね。蘇生することを知って
るから。

――でも、さっきのは、彼の創り
話しでしょ。

――そうだよ。文句ある?
――ない。
――この話し、信じる?
――もちろん、信じる。



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T T 

2024-08-09 12:08:42 | 日記
淡い想い出として

あの人の心に残ればいい



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あゝ月は女ですか

2024-08-09 08:57:29 | 日記

十三夜で逢い、

十四夜で燃え、

十五夜の夜に激しく
愛されても、


十六夜がくれば、

めくるめく時も、
少しずつ欠けていく
習わしなのです。


YouTube
JUJU 『Distance』

https://www.youtube.com/watch?v=aJq6N0cuqrI




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昼間のカクテル  -2- 

2024-08-09 08:54:29 | 日記
打ち合わせを終えたあと、わたし
たちははごく短い時間、たわいな
い世間話しを、カフェを出た。腕
時計を見ると、三時過ぎ。まるで
冬の幕間のような、ぽかぽかと
暖かい午后だった。わたしは、

「ちょっと散歩してから、帰り
ます」
と、本多さんに言って、駅の近く
の横断歩道の手前で、彼女と別
れた。

新宿の街を歩くなんて、久しぶり
だった。わたしの足は自然に西
新宿へ、新宿中公園の方へ向い
ていた。

西新宿は、アラシといっしょに
暮らした街だった。

そこで出会いがあり、そこで、
別れがあった。恋と愛が出会
って、
すれ違って引き裂かれた場所。
一生分の涙を、わたしはそこで
使い果たしてしまった。

今はさらさらと流れる砂のよう
な記憶に包まれて、ひっそりと
たたずんでいる街、涙も、心の
痛みも、傷も、情熱も、おそらく
この世には、何ひとつとして、
同じ形で同じ場所にとどまる
ことのできるものなど、ない
かもしれない。

公園に着くと、わたしは陽あたり
の良いベンチに腰かけて、鞄の
中から、うす茶色の封筒も取り出
した。ついさっき、本多さんから
から受け取ったばかりの、封筒。
中には仕事の資料が入っている。

企画書やあらすじをまとめた
文章やあらすじをまとめた文章
や構成案や、誰かの過去の作品
のコピー。
わたしは、封筒を膝の上に乗せ
てその重みを、てのひらでその
厚みを、味わった。

愛おしさにも似た感情が、山奥
で人知れず湧く泉のように、
あとからあとから、あふれ出し
てくりのがわかった。

アラシ、また会えたね。
わたしたち、また、つながった
ね。
カフェで読んだその文章を、わ
たしはもう一度、ゆっくり読んだ。
なつかしい、アラシの声が、愛
した人の魂が、粒子になって飛
んできた。
       *
これは、風に聞いた話しです。
柳の木の枝を揺らし、白樺の
木の葉を踊らせ、

アザミの綿毛を見えない手で
掬い上げながら、
静かに草原を通り過ぎてゆく、
風に聞いたお話。

仕事にも暮らしにも、人を愛す
ることにも疲れて、
何も信じることができず、自分
さえ信じることができず、
すべての希望を失い、立ち上が
る元気もなくし、

悲しみだけを抱えて、絶望の谷
底を眺めていた僕に、
風がそっと、囁いてくれた物語。
 

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「遣らずのあめ」 -やらずのあめ -

2024-08-09 08:53:01 | 日記

“心から好き

空からふる

ふるえる涙“

<行かせたくない人を引きとめる雨>
恋する男女が久しぶりに会えました。
けれど男はすぐ出立しなければなり
ません。

短い時間を惜しむ二人。

男が「さあ行かなければ・・・」と
立ち上がったとたん、まるでそれに
合わせたかのように激しく降り出す
雨。

このように、行ってほしくないのに
行かなくてはならない人を引き止める
雨が、「遣らずの雨」です。

「遣る」とは、人を行かせること。
同じ意味で「遣らずの風」という
言葉もあります。

いっときでも長く、好きな人を引き
止めておきたい。そんな切なくいじ
らしい女心を表す言葉です。




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「生きるかげん」

2024-08-09 08:49:20 | 日記

あまりうちとけ過ぎる
人間は
尊敬を失いますし、
気やすい人間は
馬鹿にされますし、

むやみに熱意を見せる
人間は、
いい食い物にされてしま
います。

肩の力を抜いて、
生きましょ・・・・。




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