さらに、信じがたいことではあり
ますけれど、そのような愛が美し
く輝いていることさえある。
世間の常識、倫理、モラル、それ
らと同様に、そこから逸脱したも
の、そこからはみ出してしまった
ものにも、美や荘厳さは在る、と
いうことです。
こうした矛盾、不条理を含めて、
人はすべてを受容しなくてはな
らない。すべてを受け入れ、す
べてに感謝する。その上で、握
りしめているものすべてを解き
放つのです。
清らかなか魂に近づいていくた
めには、それしか道はないよう
に思えます。
途方もなく長い年月を、ベット
の上だけで、まるで生ける屍の
ように、ぶざまな格好を人様に
晒しながら、寝たきりの生活に
耐えてきた人間が言うのですか
ら、間違いあいませんよ。
ずうっとこのことだけを、考え
続けてきたのです。だって、わ
たしにできることと言ったら、
考えることしか、なかったので
すから。
生まれた瞬間、あなたは一点の
曇りもなく澄み切った、鏡のよ
うな心を持っていました。
どうしてそれが壊れてしまった
のか、それはわたしには、わか
りません。あなたの気持ちは、
あなたにしか、わかりません。
だけど、きっとまた、取りも
どせます。誰よりも澄み切っ
た心を。
わたしにはわかるのです。誰
よりもあなたがそのことを求
め、願っていると。
あなたは裁判において、意図
的に自分に不利な証言をし、
その結果、普通ならつくはず
の執行猶予がつかず、刑期も
長くなった。
あなた自信が望んでいたこと
といえ、あなたのお母さんか
ら事情を聞いた時、わたしは
号泣してしまった。
つらかったね、音羽さん、つ
らいね。
ますけれど、そのような愛が美し
く輝いていることさえある。
世間の常識、倫理、モラル、それ
らと同様に、そこから逸脱したも
の、そこからはみ出してしまった
ものにも、美や荘厳さは在る、と
いうことです。
こうした矛盾、不条理を含めて、
人はすべてを受容しなくてはな
らない。すべてを受け入れ、す
べてに感謝する。その上で、握
りしめているものすべてを解き
放つのです。
清らかなか魂に近づいていくた
めには、それしか道はないよう
に思えます。
途方もなく長い年月を、ベット
の上だけで、まるで生ける屍の
ように、ぶざまな格好を人様に
晒しながら、寝たきりの生活に
耐えてきた人間が言うのですか
ら、間違いあいませんよ。
ずうっとこのことだけを、考え
続けてきたのです。だって、わ
たしにできることと言ったら、
考えることしか、なかったので
すから。
生まれた瞬間、あなたは一点の
曇りもなく澄み切った、鏡のよ
うな心を持っていました。
どうしてそれが壊れてしまった
のか、それはわたしには、わか
りません。あなたの気持ちは、
あなたにしか、わかりません。
だけど、きっとまた、取りも
どせます。誰よりも澄み切っ
た心を。
わたしにはわかるのです。誰
よりもあなたがそのことを求
め、願っていると。
あなたは裁判において、意図
的に自分に不利な証言をし、
その結果、普通ならつくはず
の執行猶予がつかず、刑期も
長くなった。
あなた自信が望んでいたこと
といえ、あなたのお母さんか
ら事情を聞いた時、わたしは
号泣してしまった。
つらかったね、音羽さん、つ
らいね。
男の人はいとも簡単に
騙されます。だって、
彼らは自分の欲望に忠実
だけど、相手の感じてい
ることには、ほとんど無
関心だから。
彼らはその行為の最中、女
の人の頭の中で生まれ、膨
らんでゆく、豊饒(ほうじ
ょう)な「物語」の存在を
知らないし、知ろうともし
ない。
鈍感な男と嘘つきの女が営
んでいる—それが結婚生活
なのだとしたら。
結婚とは愛から、最も遠い
ところにあるかもしれません。
夢をみる。
深い夜に、レールの向こうで
たくさんの蛍が光る。
そのうちにそれが、紫の羽を
持った無数の蝶に変わり、
なぜか白いシーツをバックに
舞っている。
それを小さな少年が、瞳をこら
して見ている。
横に、なぜかお下げ髪の少女に
なっている私がいて、怖くてそば
へ行けない。
「帰ってきて、帰ってきて」と、
叫ぶだけだ。
目覚めると、寝返りをうった彼
の寝息がかすかに聞こえる。
その体を、私はしがみつくように
抱きしめた。
朝、彼を送り出すときの、背中を
見るのがつらかった。
彼に妻子がいようがいまいが
どうでもよかった。
ただ、
いつも判然としない想いにおそわ
れる。
これが、最後ではないかと・・・・・。
背を向けて遠ざかる時、
一瞬、
カレの存在自体が消えるような
気がした。