みなさんには、こんな経験がないだろうか。
「指輪が小さくなった」
正確には
「指が太くなって指輪が入らなくなった」
ということなのだけれど。
結婚したときの私は華奢だった。
でも、年月を重ねるごとに、体重は増え続け、指も太くなった。
結婚して5年目くらいに、指輪屋さんにお願いして、1サイズ大きくお直ししてもらった。
旦那さんは、
「幸せ太りだね♪」
と本気で嬉しそうに言った。
それからも、ほぼ5年ごとに指輪のサイズは、更新され続けている。
去年、3月の始めに旦那さんが言った。
「そろそろ指輪のサイズ、調整した方が良くない?」
プールに行くために指輪を外そうとしたら、これがなかなか外れず、
悪戦苦戦している私を見てそう言って笑った。
それから数日後の3月10日、祖母が天国へと旅立った。
私は、祖母にとって初孫だった。
おまけに、唯一の女の子の孫だった。
どれくらい可愛がられていたか、書かずにもおわかりいただけると思う。
でも、今、みなさんが想像された100倍以上、私は可愛がってもらった。
祖母はサービス付き高齢者住宅で暮らしていた。
その部屋の荷物のほとんどは、母と伯母が処分した。
荷物は多くはなかったが、だからこそどれも思い出の残るものばかりだったろう。
辛いことは、みんな二人が引き受けた。
母と伯母は、
「二人で相談した」
と言って、私に祖母の指輪とネックレスを渡してくれた。
「あなたが使わなくなったらSapoちゃんに渡してあげて」
と。
今、私の左手の薬指には祖母が最期までしていた指輪がある。
旦那さんは、
「指輪のサイズ、調整したほうが良くない?」
ともう言わない。
祖母の指輪は、私にはまだ少し大きいから。
祖母のおかげで私は安心して幸せ太りできるというものだ。
ありがとう、おばあちゃん。
祖母の一周忌に寄せて