先日、マクドナルドが自社で働く職員に対して、フードスタンプ受給への誘導をしているとして、批判されたと書きました。本来、企業が働く職員が十分に生活できる賃金を支給するのが当然です。しかし、その企業の責任を果たさずに年収200万以下の家庭に支給されるフードスタンプを使って、補填させるかの一部企業行動はアメリカ社会の病んだ姿、企業の経営モラル崩壊を示しています。
一方で、アメリカは世界最大の軍事大国です。その軍事費は13年度6620億ドル、14年度予算要求ベースで5266億ドルです。1ドル100円として換算すれば、日本の年間税収をはるかに超える額が軍事費として使わる軍事大国です。そのギャップの大きさにはあきれるばかりです。現在、アメリカのフードスタンプ受給者が3600万人以上いると報じられています。また、その受給者が急速に増えているとのことです。アメリカ社会の貧困拡大、失業者数の拡大、低所得者の拡大と中間層の没落を象徴する政治、経済構造を示しています。このような新自由主義社会、市場経済至上をまねする自民党政権の政治姿勢は、将来の日本社会もアメリカのようなその日の食事にも困る家庭を大量に作り出すことつながることをどう考えているのでしょうか。そんなことは知るものかと思っているのかもしれません。以下は、アメリカ社会の状況を報じた記事です。
<1日2万人のペースで増え続ける。「フードスタンプ」受給者の衝撃>
どれだけ頑張っても、食べるものさえ買えない――。
豊かな国だったはずの米国で進行する、静かなる食料危機の実態。
急増するフードスタンプの受給者
地元産業が不況でダメージを受けた地域ほど、増加率が高くなっている。
米国では、フードスタンプ(食料配給券)の受給者数が過去最高に達し、さらに毎月増え続けている。フロリダのリゾート地からベーリング海沿いのアラスカの村々にいたるまで、フードスタンプの受給者は現在、1日あたり約2万人のペースで増加している。ミシシッピ川周辺のセントルイスやメンフィス、ニューオーリンズといった大都市では、子供の半数がフードスタンプの受給者だ。
現在フードスタンプを受け取っている人は、米国民の12%近くに及ぶ。黒人の28%、ラテン系の15%、白人の8%が受給者だ。フードスタンプによる補助額は、それぞれの住宅事情や家族構成にもよるが、1人あたり1ヵ月で130ドルが平均だ。
フードスタンプは、全米各地域で急速に増えており、もはや珍しい存在ではない。荒廃した街や差し押さえ物件が目立つ郊外で、3600万人以上の人が、人目を引くこともなく、カードを読み取り機に通すことで、牛乳やパン、チーズといった食料品を手に入れている。
貧困ラインは、4人家族で年収約2万2000ドル(約200万円)とされているが、補助を受けている人の9割近くがこれを下回る生活をしている。
「貧困大国」は変わったか?
最後のセーフティネット
実に多様な人々が、食欲を満たすことに苦労している。シングルマザーもいれば夫婦もいる。最近職を失った人もいれば、生活保護を長年受けている人もいる。給料が下がったため、満足に食べられない人もいる。
昨今の不況で貧困層の人口は大幅に増えたが、そもそも、フードスタンプが拡大し始めたのはブッシュ政権時代だった。当時、フードスタンプを「福祉」ではなく「栄養補助」と呼び、申請しやすくしようとする超党派の動きがあった。政権末期、ブッシュはフードスタンプの受給資格を拡大する法案に異議を唱えたが、議会は圧倒的大差で法案を可決。2008年には、フードスタンプという名称も変わった。大半の人は依然としてフードスタンプと呼び続けているが、現在の正式名称は「補完的栄養支援プログラム(SNAP)」である。
この制度の利用者は記録的な勢いで増加しているが、プログラムを担当している政府当局者は、さらにペースを加速すべきだと考えている。農務省の次官のケビン・コンカノンは「大恐慌時代を除き、私たちの世代で、これほど食料支援が急務となったことはありません」と語る。
「今こそ、富める国・米国でも空腹の人が多数いるという事実を直視すべきです」
フードスタンプのコストは連邦政府が全額負担している。それに対し、現金を支給する生活保護については、支給件数を増やすための費用を最近までは州が全額負担しており、受給者は全国的にほぼ横ばいとなっている。また、失業手当の申請件数は急速に増えているものの、実際の失業者の半数しか手当を受け取れていない。しかも、その金額は元の給料の半分程度だ。よって、フードスタンプこそ、多くの人が受け取っている唯一の補助制度であり、最後のセーフティネットというわけだ。
侮蔑感とニーズの衝突
ワシントン大学セントルイス校のマーク・R・ランク教授による最近の調査では、およそ半数の米国民が、20歳になるまでに少なくとも1度はフードスタンプを受けていることが明らかになり、一部の政治家を驚かせた。黒人の子供に限ると、その比率は90%に跳ね上がる。
フードスタンプ受給者に関する統計を見ると、いかに米国の経済が病んでいるかを読み取ることができる。
自動車製造の中心地デトロイトが不景気だと、自動車部品が生産されているオハイオ州北西部も影響を受ける。たとえば、自動車の防振装置を作っているエリー郡では、この2年でフードスタンプ受給者が約60%増加し、フロアマットの製造を手掛けるウッド郡は77%、シフト部品と冷却ファンのヴァン・ワート郡は84%増えた。そのすぐ西に位置するインディアナ州のエルクハート郡では、国内のRV車の大半が製造されているが、不況により売上高は半分以下に減少し、子供の30%近くがフードスタンプを受けている。
フロリダ州南部の病原菌は、住宅バブルの崩壊だ。住宅差し押さえ率の高さが全米でもトップクラスのフォート・マイヤーズに隣接する地域では、フードスタンプ受給者が2倍以上に増えている。
オハイオ州南西部シンシナティ近郊の地域では、共和党が幅を利かせており、ブルーカラー労働者たちはフードスタンプを怠慢の印だと考えがちだった。ここでは、フードスタンプに対する古くからの侮蔑感が、新たに生じたニーズと衝突している。オハイオ州で2番目に裕福なウォーレン郡では、政府助成への抵抗感が強く、連邦政府による景気刺激策の助成金を辞退したほどだ。だが、郊外の高級住宅市場は低迷し、失業率が急上昇。そして今、フードスタンプの受給者は50%以上増えている。
お隣のクリントン郡は、さらに痛手を負っている。最も多くの雇用をもたらしていた国際宅配便大手のDHLが保有する大規模な飛行場の大半が閉鎖され、約7500人が失職したのだ。失業率は14%を超え、従来の3倍近くに拡大している。
オハイオ州レバノンにあるフードスタンプの申請事務所の所長、ティナ・オッソは、「これまでは考えられなかったような人が、フードスタンプを受けるようになっています」と語る。
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