信じられないような話です。やめさせて欲しいがやめさせてもらえない。こんなことが労働相談窓口に入っている、しかも、その件数が増加している。ロックアウト解雇などが問題となっていますが、やめたいがやめさせてもらえない。なんともいえない労働相談です。
規制緩和による正規労働者の削減、非正規労働の拡大、長時間残業の野放し、解雇権の乱用など、労働者の基本的な権利があらゆる面から制約、攻撃される様は異常であり、子どもたちへの「いじめ事件」とともに、深刻な社会問題となってきています。大手企業などは労働法規、労働基本法などを知った上で、違反行為を行っています。しかし、中小零細企業は企業経営者自身が、労働法規、団体交渉などの基本的な権利を知らないことから来る違法行為などが発生しているのではないかと思います。
1つはこの間の自民党型政治により、労働者の権利無視、基本的権利攻撃などを受けて厚生労働省が、企業に対する法律遵守、違法行為の摘発、指導を行わないか、著しく後退させていることが背景にあるように感じます。
2つ目は、これらの企業に労働組合が組織されていないか、または、労働組合自身が、経営者側に立ち、労働者の労働条件改善、違法な雇用実態の摘発、基本的な権利擁護の運動を行っていないかのどちらかの状況があること。そのような事態を受けて、さらに労働組合加入者、組織率の低下が拍車をかけている側面があるのではと考えられます。
いずれにしても、働く労働者の賃金水準を引き上げ、正規労働者数の拡大、労働条件の改善を進めない限り、デフレの克服、日本経済の立ち直りも出来ないことは確かです。このような労働者いじめ、際限のない人件費の削減による企業利益の拡大が行き着く先は、犯罪の爆発的な増加、家族の崩壊、離婚の増加、社会基盤の崩壊、治安の悪化、自治体、国の財政基盤の崩壊につながることを知るべきです。
<横暴な企業行動>
精神的に追い込む「追い出し部屋」など、さまざまな形で正社員のリストラが進められる中、労働相談の窓口には「辞めさせてもらえない」という相談も急増している。リーマン・ショック後の過度なリストラの反動で、会社は残った社員を囲い込み、過酷な労働を強いる。労使の力関係の差は広がるばかりだ。
「退職させるつもりはない」。神奈川県内の建築士の男性(49)は上司の言葉に恐怖を感じた。「辞めたい」と申し出たために、寝間着姿のまま会社に連れてこられ、長時間怒鳴られていた若い同僚の姿が頭をよぎった。
経営していた設計事務所の資金繰りが悪化し、昨年十一月に閉めた。
所員二人の就職先を探し、自分も一級建築士の資格が生かせる会社に入った。
だが、すぐに「設計をやる会社の雰囲気じゃない」と感じ始めた。工事の遅れなど客からの苦情が多く、営業担当はそのたびに自分たち設計担当のところに「謝って来い」と怒鳴り込んできた。
それでも五十歳を目前に見つけた職場。何とか続けたかった。だが五月、深夜の会社で突然激しい腹痛に襲われトイレで吐いた。持病の腸閉塞(へいそく)を十年ぶりにぶり返した。
入院中、「辞めさせてほしい」と会社に電話した。だが、社長は「辞めないでくれ」「人が足りなくなり困る」の一点張り。退職届を郵送し、保険証も返して離職票の発行を頼んだが、「勝手に保険証返しちゃだめじゃん」「引き継ぎもあるから一度会社に来て」と電話がかかってくるだけだった。
「途方に暮れ、眠れない日々だった」。NPO法人労働相談センター(東京)に間に入ってもらい、十月下旬に会社はようやく退職届を受理した。
センターに寄せられる「辞めさせてくれない」との相談は、二〇〇六年に四十六件だったのが昨年六百七十一件に。今も毎日のようにある。社長が土下座して若い社員の自責の念を誘うなど、やり方はさまざまだ。
矢部明浩副理事長は「過度なリストラの穴埋めとして、残った社員の引き留め工作が出てきた」とみている。「業務量が増え、辞めたいと思うまでに追い詰められた社員を辞めさせないというのは、究極のパワハラだ」
安倍政権下で検討が進む「限定正社員」は、業務や勤務地を限定する代わりに、解雇しやすい正社員をつくることになると懸念されている。
「解雇がしやすくなる一方で、手放したくない、安く従順な労働者を経営者が囲い込む動きがさらに増えてくるはずだ」。矢部さんは「無限定」に働かされる人たちの増加を懸念している。
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