Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

第三日曜日の会(第八回) 今回は『こどもの世界』?!

毎月、第三日曜日は「第三日曜日の会」。

今回で8回目。今日は10人集まり、ほどよい人数で4時間半くらいやりました。毎回、なぜだかテーマが出てくる。前々回は「あまえ」、前回は「共感/ラポール」。今回はどういうわけか「こどもの世界の理解」というのがテーマになった。でも、こういうテーマ設定は面白い。自分の見方、視点の幅が広がるからだ。カオスのような現場の中で、どのような視点でどのような見方で解釈するのか、そういうことも合わせて学んでいきたい。

今回の発表は以下の通り(参加する人の多くが発表してくれる。それだけでも珍しいことだと思う。また、発表したら参加者全員からレスをもらえるっていうのも、小規模の研究会ならではかな、と思う・・・)

①保育園観察の在り方と記録について(kei)
先回観察にいった保育園でのエピソードを紹介させてもらった。実践の切り取り方、見方みたいなものを提示できたらな、と思い、やってみた。記録を書くことは特別なことではなくて、普通にできること。でも、どう切り取るか(どう描くか)はなかなか難しい。

②保育士Oさん 『こどもの世界』 ピリピリから理解へ
最近ピリピリしている、というOさん。仕事をしているとどうしても余裕を失ってしまう。忙しいという理由で、子ども一人一人へのまなざしが手薄になってしまうこともある。しかし、そんな自分のピリピリに気付き、どうしていいか分からなくなるOさん。そんな中、彼女は子どもが素朴に遊んでいるシーンを見て、はっと気付く。一人の女の子がトイレから出てきた。そのとき、その子が「もーいーかい!?」と言い出した。そうしたら、テラスで遊んでいた子どもたちが彼女の声を真似して「もーいーかい?!」と応答した。さらにそれを聞いた女の子がさらに「もーいーかい?!」と応じた。なんてことない風景なのだが、これが「こどもの世界なんだ」ということに気付く。大人の側から見れば何も出来ない子どもだけど、その当の子どもは子どもなりに一瞬一瞬を精一杯楽しく生きている。その「生」に気付いたOさん。

③保育士Kさん 4歳の「性同一性障害」?! 他3つのテーマ
久々の参加のKさん。待ってました。いくつか報告してくれたんだけど、一番衝撃的だったのが、4歳の男の子の話。その子は紛れもなく男の子。「おちんちん」はしっかりついている。けれど、自分が男の子だという自覚がないという。むしろ女の子だという意識が芽生えつつある、と。このデリケートな問題にみんなで考えあった。とても難しい。小さいのだから、「キミは男の子だよ」としっかり教えていかなければならないのだけれど、その一方で、その言葉がその子をさらに追いつめる可能性もある。かといって、「女の子なんだね」と安易に同意することもできない。かといって、強制的に「男だぞ!オマエは!」と押し付けることもなかなかできない。Kさんはまだ両親にもそのことを伝えていないという。悩ましい問題だ。

④保育士Kさん 「バカ」を連呼する中国のこどもとのかかわり
ぷかぷかって感じのKさんの記録。もはや連載ものになっているほど。毎回内容が面白いので、聞いているだけでも色々と考えさせられる。今回はこの夏に中国からやってきた男の子。父親は日本人らしいがすでに離婚していて、そばにいない。母親はとても上品で言葉遣いも丁寧。子育て・勉強熱心でまさに真面目なお母さんというイメージ。だがその子はとてもたいへん。友だちのおもちゃは壊すし、謝らない。さらには「オマエバカだろ」、「ばーか」、と悪い言葉を連呼する。/・・・

⑤保育士Sさん 嫌われても頑張って関係作りをし続ける
二年目のSさん。まずは記録の出来のよさにみんなも驚く。二年目だってことより、記録に対するSさんの向かい方が素晴らしいのだと思う。丁寧に書こうと思えばいくらでも丁寧に書けるのが記録というものだ。/今回の記録は、なかなかSさんに懐かないFちゃんのお話。SさんはなぜFちゃんが自分に懐かないのか、懐けないのか、どうしてこうも自分を避けようとするのか、を内省する。そして、いろいろと試してみるがどれもうまくいかない。そのまま二週間が過ぎる・・・//Sさんの記録はとてもいいのだが、結論が甘かった。「信頼関係が大切」、そりゃそうなんだけど、それ以上のことが記録には書いてある。SさんはFちゃんとの関係を良好にしようとあらゆる手を使ってかかわろうとするがダメだった。しかし、その意識を捨てて、ありのままのFちゃんを見つめると、「私がFちゃんを見るよりも以前にFちゃんのほうが私のほうをよく見ている」という事実に気付く。自ら見ることをやめることで、見られている自分に気付いたのだ。そして、それを素直に受け止めることで、自然とFちゃんに歩み寄ることができた。ここが今回の記録の醍醐味のように思えた。

⑥幼稚園教諭Sさん ドッジボールで当たった?当たってない?困惑するSさん
どんな時でも子どもと向かいあうことを一番に考えるSさん。本当に職人肌の先生だ。色んな思いをもっているにせよ、それを一切外に出さないところも素敵。そんなSさんの最新レポ。/今回は、ドッジボールでボールに当たったか当たっていないか微妙な場面での報告。記録がすごく丁寧に書けているので、それを読めばだいたいの流れはつかめるだろう。すごいのは、あらゆる視点を考慮したうえでSさん自身の考えが述べられているというところと、単なる美談/成功談話になっていないところだ。/今回のこのケースは、K先生という第三者が入ることで一層複雑なケースになっている。現場はどこもそうだが、色んな思いや関係が重層的に折り重なってその瞬間を迎えている。複雑になればなるほど、介入するのは難しい。でも、出来ることはあるし、すべきこともたくさんある。Sさんはそのすべきことのタイミングを逃したのか、最後まで歯切れのよくない報告になっていた。が、逆に今後の実践に生きるようなポジティブな視点がたくさん盛り込まれていた。

それから乳児院のIさん、家庭支援センターのHさんが、不参加ながらに、記録をメールで送ってくれた。感謝感謝。

●だんだんいい感じになってきました。常連さんはだいたいやるべきことを分かってくれているので、やりやすくなってきた。また、記録も毎回書いている人はだいたいコツがつかめてきているので、ポイントをしぼって発表してくれる。だから、とても分かりやすいし、議論もしやすい。これだけディープな事例検討ってあんまりないんじゃないかな、と。今回も13時50分くらいに始めて、終わったのは18時半過ぎ。しかも、ダラダラやるんじゃなくて、パキパキっとやってこの時間。だんだんベストになってきている。あとはこのテンションを維持して、もっとマニアックな視点へと向かうことかな、重要なのは。「一般論を超えよ。そして、個別の中に一般を見よ」、いや、「一般に自分の実践を陥れるな。個別のケースからその独自性を見つけよ」そういう精神で今後もどんどん事例検討をしていきたい。

●事例はラーメンに似ている。自分だけの味。自分だけの作品だ。心を込めて作ればいい味になるし、手を抜こうとすればどこまでも抜ける。今回も僕の心をゆさぶるほどのいい実践がいくつかあった。是非素敵な一瞬を言葉というラッピングでパッケージしてほしいと願う。来月もまた楽しみだ!

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