18歳総進学主義をぶっこわす!
日本の教育の根本問題を考えると、18歳でみんなが横並びで大学に進学することに一番の闇を感じている。
なぜ18歳で大学進学しなければいけないのか。
どうしてそうなってしまったのか。
今年はそれを大真面目に考える1年にしたい。
For a fallen and corrupt Japan.
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①筒香選手からの警告
今日、筒香選手が地元の和歌山に自費でスタジアムを建設しているというニュースが飛び込んできた。
この記事の中で、筒香選手が「勝利至上主義の撤廃」を呼び掛けているという話が出ていた。
◆筒香のアマチュア野球界への提言
★勝利至上主義の撤廃 指導者や親が、子供に勝利を求めすぎる。「楽しいはずの野球なのに、子供が大人の顔色をみて怒られないようにプレーしている」と指摘。
★答えを与えすぎない 技術や動き方など教えすぎるため、指示待ちの子供が増加。「大人が見守ってあげることも必要」。
この筒香選手の提言を見た時に、この提言と「18歳総進学主義」の関係があることを感じた。
大人たちは、子どもに「勝利」を求めているのだ。別に18歳で進学しなくても全く全く問題ないのに、大人たちが「試験に勝て!」と騒ぎ立てているんじゃないか。
子どもが大人の顔色を見て、怒られないように、という指摘もそのまま、日本の大人の子どもへの働きかけに通じるものがある。失敗したら怒る。エラーをしたら怒る。怒らないにしても、冷淡する。
勝つこと、負けないこと、勝ち上がること、戦いに勝つこと、それだけが「大人の悦び」になっているのかもしれない。そうだとしたら、日本の教育の諸悪の根源は、大人の側にある、ということになる。
技術や動き方にうるさい大人たちというのも、よく分かる。先日、BiSHのパフォーマンスについてあれこれ(評論家のように)文句をいう風潮に異議を申し立てたら、それに対する批判(主に技術的な点)が殺到した。
これが日本なんだ。
ふと、前に読んだこの本を思い出す。
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②東大前で殺傷事件を起こした少年
この筒香選手の警告を踏まえた上で、先日起こった東大前殺傷事件について考えると、やはり根っこに同じ病理がありそうなことが分かってくる。
少年は「医者になるため東大を目指していたが、1年くらい前から成績があがらず自信をなくした。人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと思った」などと供述。関係者によると、少年は、学校での進路に関する面談の際にも「自分の目指すところに自分の成績が追いつかない」と打ち明けていたという。
また、捜査関係者によると、面談の際のやりとりで志望する東大への進学が難しいという話になり「心が折れた」などと供述しており、少年事件課は事件の背景に受験をめぐる悩みがあったとみている。
17歳の少年が、成績が上がらずに自信をなくし、そして心が折れ、罪悪感を背負って、死のうとしたのだ。
この事件に対して、橋下徹氏は、「自己責任論」の観点から次のようにコメントしていた。
「ただ、あまりにも身勝手過ぎて…。やっぱり自己責任とか言うとすごく批判される風潮があるんですけど、基本的には人生は自己責任が原則であり、ただ家庭の経済環境とか虐待の親とかそういうのもあって、そこはしっかり社会がサポートしなきゃいけないけど、自分の人生を歩む上でいろんな悩みはあるかも知れないけど、それを全部、社会の責任にするというのは違うよというのは明確に言っていかないといけない」(引用元)
彼の言いたいことは分かるけれど、この考えは少し浅い。
なぜ社会の責任にしたのかを考えなければいけない。「社会が悪いからだ」ともし少年が思っていたとしたら、なんでそんな考えに至ったのか、なんでこんな事件を起こすまでに少年を追い詰めたのかを論及しなきゃいけない。
きっと、少年は、周囲から、親から、メディアから、本から、「東大に入らなければならない」という考えを学んだんだと思う。「東大」は、日本では、「成功者」の一つの象徴になっているからだ。
筒香選手の世界である野球界でいえば、「甲子園に行かなければならない」という考えと重なる話でもある。
人を刺した少年の罪は決して軽くない。
でも、この少年のように追い詰められて無差別的な殺傷・殺害事件を起こした人を、僕ら大人は無数にたくさん知っているではないか!!
少年や少女を過度な競争にさらし、「18歳で何が何でもいい大学に入れ!」という間違いに満ちた要求を子どもたちに課しているのは、いったい誰だ?!
その一翼を、「東大賛美」を繰り返すメディアも担っているはずだ。高校の先生も(東大だけではなく)いい大学に18歳で進学することを「よいこと」と暗に思って、生徒たちに(意識的・無意識的に)言っているはずだ。親も親で、「とりあえず大学に行け」と折に触れて言っているはずだ。
大人たちは、こう少年や少女たちに言うべきだ。
「勉強が嫌いなら、大学なんかに行くな。まずは働こう」
「東大に入りたいという動機だけで東大を目指すことに、なんの意味がある?」
「東大なんて、世界でみたら最新ランキングでも35位に過ぎない。世界を見ろ」
「18歳で進学しろなんて、誰も言ってない。迷信だ」
「大ざっぱに言って、世界の大学1年生の平均年齢は22歳だ」
「遊びたくて大学に行くなら、まず遊べ。そして遊びの虚しさを分かった上で、進学を考えろ」
「お金が欲しいなら、まずは働け。働くことの虚しさや侘しさを知ってから、学問を志せ」
小さい頃から繰り返し繰り返し、大人たちがこう言えば、社会は変わるはず。
誰も急がなくなる。結果、子どもたちも追い込まれなくなる。
それでも、勉強したい子、学問したい子は出てくる。そういう子は迷わずに18歳で大学に進学して、フルに学問に打ち込めばいい。そういう子たちが、きっといい成果をもたらしてくれるだろう。
何かを学ぶこと、何かを知ること、何かを疑問に思うこと、何かについてとことん知りたいこと、何かをどこまでも突き詰めたくなること、そういうことがあって初めて、勉強も学問も本当に楽しいものになる。
…
筒香選手は「楽しいはずの野球なのに、子供が大人の顔色をみて怒られないようにプレーしている」と訴えているという。同じように、僕も訴えたい。「楽しいはずの大学(勉強・学問)なのに、子供が大人の顔色をみて怒られないように勉強をしている」、と。
昔も今も、必要なのは、言われたことを言われた通りにやるロボット人間じゃない。自由な発想で、常識にとらわれないで、好奇心旺盛で、人にやさしくて、社会のことを考えながら、(考えが似ている人も考えが違う人も含め)具体的な他者と共に生きることのできる人間だ。そこに、理系も文系もない。18歳でいい大学に合格するかどうかも関係ない。
日本はこれから落ちぶれていく国になることが、もうかなり強く指摘されている。
大人たちは警戒心をもった方がいい。
これ以上、日本の未来を壊さないためにも、まず大人たちが変わらなければならない。
まずは、18歳の「総進学主義」を壊すことが、大人たちに課せられた責任ではないか、と思う。