10年前の今日、
2013年5月30日に、
赤ちゃんポストと緊急下の女性
-未完の母子救済プロジェクトー
を刊行したんですよね。
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あれから10年か、、、
この10年で色々と変わったような、変わらないような…。
10年経った今、「赤ちゃんポスト」を知らない若者も多数います。
学生に聴いても、「知らない」と答える子の数は年々増えていくばかり…。
その代わりに、「内密出産」という言葉はわりと知られているような気もします。
一応、内密出産のガイドラインも作られてましたね。
でも、やっぱりあまり変わってない気がします。
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この本は、今思えば…、がむしゃらで書いた気がします。
この当時、「赤ちゃんポスト」の本なんてどこにもなくて、、、
なんの先行研究もない中で、必死に書いた記憶があります。
ドイツにも何度も足を運んで、必死にBabyklappeを追い求めました。
また、この本の執筆の途中で、蓮田太二先生とも出会い、色々とお話させて頂きました。
とてつもなく色んな人に出会い、対話をしながら、作った一冊でしたね。
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サブタイトルの「未完の母子救済プロジェクト」は、ハーバーマスのパクリでした(苦笑)
ハーバーマスの著書『近代 未完のプロジェクト』をオマージュするかたちで…。
「社会の近代化が、経済成長や国家による組織的活動〔行政や福祉〕のもつ強制力に促されて、自然に生い育った生活形式の生態系に闖入してくる」
この言葉は、拙書を書く上での一つの道しるべになりました。
赤ちゃんポストを創設したのは、そのハーバーマスの影響を強く受けたユルゲン・モイズィッヒさんでした。モイズィッヒさんは、教育実践者でありながら、教育学者でもありました。
モイズィッヒさんに出会って、僕の「教育学」が見えた気がしました。
もともと「教育と福祉のあいだをつなぐ」というのが、僕の研究の出発点でした。モイズィッヒさんはまさに「教育と福祉をつなぐ実践者・研究者」でした。
この人に出会わなければ、僕はまだ路頭に迷っていたと思います(苦笑)。
モイズィッヒさんの教育学は、僕の師匠の教育学ともつながっているな、と思いました。
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あれから、10年…。
まだ、僕の「教育学研究」は終わっていないどころか、まだまだこれからだなって思っています。
これからが本当の意味での研究のはじまりだろうな、とも思っています。
赤ちゃんポスト、アウシュヴィッツ以後の教育、民主主義への教育、青少年支援、反権威主義的教育、難民児童支援など、これからの日本の教育学にとっても必要なことがいっぱいあります。
それをどう統一的にまとめていくか…。
ホントにこれからの10年がとても大事だなって思っています。
でも、いずれにしても、この本が僕の研究人生にとっての「出発点」であることは間違いないし、またきっと、この本が僕の「到達点」なんだろうな、とも思っています。到達点、というと言い過ぎかな? ここに僕の研究の「終わり=目的」も入っているんだろうなって思っています。
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学術書なので、一般の人に多く読まれた本ではありませんが、、、
本当に多くの人に読んでもらえました。
たくさんの心ある人に読んでもらえました。
頑張って書いて出してよかったなって心から思っています。
すごくボリュームのある本なので、「読んでくださいね!」って気軽には言えませんが…💦
でも、興味のある人がいたら、是非読んでみてください!!
10年経った今でも、この本はまだ輝きを失っていないなって(改めて読み直して)思いました。
この本を出した数年後に、その続編というか…
蓮田太二先生と二人でこの本を出しました。
この本もまた、僕の人生の中で最も大切な本になりました。
蓮田先生の思いも受け継いで、これからも研究に勤しみたいなって思います。