Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

Babyklappe(赤ちゃんポスト)は法律違反か?(1)

先日、日本初の赤ちゃんポストに【想定外】の子どもが預けられた。3歳児はまさに想定外だっただろう。僕もかなりビックリした。今後予想されることとして、【親の養育権】の問題がある。これは、ドイツでも議論されていることであり(しかも2006年!)、今後、日本でも議論になり得る大問題である。というわけで、昨年のドイツの【赤ちゃんポスト】をめぐる議論の一部をご紹介♪ ドイツでも、やはり【赤ちゃんポスト】をめぐって激しい議論が行われているのである。赤ちゃんポストの行方はいかに?!


赤ちゃんポスト(ウィーン)の入り口

*Klappeは、ハンブルク地方の方言(口語表現)で、「窓(Fenster)」という意味の名詞形である、と言われている。なお、Klappeの一般的・辞書的意味としては、①ふた、跳ねぶた、②はえたたき、③口(zB.zwei Fliegen mit einer Klappe schlagen(二匹のハエを一叩きで叩き殺す:一石二鳥)、④ベッド/寝床、といった意味の女性名詞である。独独辞典によれば、このKlappeは、低地ドイツ語(標準語ではない)であり、①開け閉めできる可動式の装置(bewegliche Vorrichtung zum Schliessen einer Öffnung)、②ベッド、③口、弁才、④内線電話、接続、通話、乗り継ぎ、電話機、電話口、といった意味である。Babyklappeは、低地ドイツ語(もちろんハンブルク生まれなので・・・)で、「赤ちゃんを繋ぐ、開け閉めできる可動式装置」といった意味と解釈できるだろう。日本語の辞書にはこうした意味合いは書かれていないので注意!


赤ちゃんポストは法律違反か?

(2006年7月の記事)引用元


【赤ちゃんゆりかご:Babykörbe】、【赤ちゃんの窓:Babyfenster】、【赤ちゃんの巣:Babynester】、いずれの名称であれ、現在、母親が自分の子を匿名で託すことのできる施設は、ドイツの全州に存在している。この発想は、2000年4月にハンブルクで、ドイツ初の赤ちゃんポストを創設したシュテルニパルク(SterniPark)というハンブルクの地域団体(フェアアイン⇒こども園、母子生活支援施設も併設)によるものである。現在までのところ、ドイツ全土には、80以上の赤ちゃんポストがある。この施設は、女性たちが、意に反して生まれてきた子どもを殺してしまうことを阻止してくれる、と言われている。

【赤ちゃんポスト】という施設を規定する法律は今のところ存在しない。この施設の法的規定はただちにすべきだ、というのが多くの法律家たちの意見である。というのも、親が子どもを養育する責任を破棄する際、法に従って、親に子どもを養育する義務を与え、また、処罰可能にする必要があるからだ。また、当該する公的機関も、子どもの個人的状況を一週間以内に公表しなければならない。すべての匿名で置き去りにされた子どもに対して、検察庁は、処罰すべき行為であるのかどうかを明らかにしなければならない。それゆえに、ハンブルクでは非常に多くの訴訟が起きているのである。ノイス、ブッパタール、マンハイム、ケルンでもまた、個人的立場の偽造の疑いと養育義務違反の疑いのため、検察官たちが詳しく調査を行っている。この調査は、子どもを置き去りにした不明の人間に対して行われるが、一部では幇助として匿名の申し出を行った人間に対しても行われている。しかし、このポストのもろもろのケースにおいては、検察庁の大部分は、「赤ちゃんの母親は極めて厳しい状況にあった」という前提から出発している。(親の)罪過(罪や過失)に乏しいので、もろもろの調査はすぐに打ち切られるし、それどころかまずもって全く受け入れてもらえないのである。

生まれ(血筋)を知る権利
こうしたケースにおいては、適法性原則に対する過失であるかどうかを調査することはできないのではないか、と法律家たちは専門誌の中で議論している。また、憲法学者(そして政治家(CDU)、元連邦最高裁判所総長
)のエルンスト・ベンダ氏も、検察庁が何もできないというのは問題だと考える。赤ちゃんポストは、いかなる理由であろうとも子どもを守るよう、人を迎え入れる場所である。ゆえに、困窮する女性に赤ちゃんポストを使ってもらうのは、(女性を救う)様々な可能性の一つにすぎない。ベンダ氏は、女性が子どもを託すよう強要されるケースや、自分の意思に反して子どもを赤ちゃんポストに入れてしまうケースも想定することができる、と考えている。彼は、「一つのケースの様々な背景が解明されない限り、検察官は、この問題を解決するための義務を負わないだろう」、と言う。ベンダ氏にしてみれば、赤ちゃんポストを今後もグレーゾーンとして容認することはもはや無理なのである。

だが、匿名で母親の権利を法的に保障し、赤ちゃんポストを合法化することは非常に難しい。すでに、数々の法の企図が、憲法学者たちの反論によって失敗に終わっている。問題はこうだ。親を知る権利は、基本権の一つであり、いかなる場合にもこれは制限されてはならない。赤ちゃんポストが明らかに(明証的に)子どもの命を助けた時にのみ、合法化が可能となる。この場合には、生きる権利が優先され、最終的にはこれもまた基本権なのである。

しかし、エルンスト・ベンダ氏の見解によれば、「赤ちゃんポストは子どもの死を止めることができる」ということは、未だなお証明されていない。彼の意見に従えば、児童相談所の児童福祉司らが出してくるあらゆる周知の統計や確信こそが、「赤ちゃんポストは目的を取り違えている」ということを言い当てているのである。

赤ちゃんポストは本当に絶望した母親の助けになるのか?
どれくらいの子どもがこれまでに赤ちゃんポストで発見されたかについての正確な数字は分かっておらず、おおまかな見積もりしか出ていない。バンベルクの社会科学者、ソニァ・クーン氏(Babyklappe研究の一人者(HERE)の研究では、「軽く100人以上の子どもが赤ちゃんポストに預けられている」、という結果が出されている。ハノーファーの社会科学者、クリスティーネ・スヴィエンテック氏は、この7年間に匿名で預けられた子どもはおおよそ200人だという結論を出している。その中には、単に新生児だけでなく、生後数ヶ月になる子どももいたし、最も年齢の高かったのはおよそ二歳になる子どもだった。また、赤ちゃんポストに預けられた子どもの中に、重度の障害児の子どもも数人いたこともよく知られている。「これらすべてのケースにおいて、子どもたちはもしたしたら死んでいたかもしれない」と考えることについては、すべての反論者が疑っている。反論者たちは、これらの赤ちゃんポストは、自身のターゲット層(Zielgruppe=ポストに預けたいと思う親たち)にたどり着いてしまうことに対して異論を唱え、そして、ポストの乱用を恐れている。彼らは、「女性は優位の立場に立てずに、子どもの社会的な困窮から切り離したのではないか」、ということを考慮するよう訴えている。

(2)はこちら(クリック!)

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