Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

保育所設置等、親から子どもを離すことばかりの「子育て支援」でいいの?

今日、ふとネットニュースをみたら、こんな記事がありました。


 2014年4月から消費税率が8%に引き上げられるのに伴って政府が実施する14年度社会保障の充実策の原案が4日、明らかになった。

認可保育施設の設置など子ども・子育て支援に3000億円、在宅医療の推進など医療・介護サービスの提供方法の見直しには1000億円を投じることなどが柱だ。

政府は消費増税に伴う14年度の増収額を5兆1000億円程度と見込んでいる。このうち4兆6000億円は、年金や診療報酬など現在の社会保障制度を維持するための費用に充てることにしており、新たな施策による社会保障の充実には5000億円が充てられる。

子ども・子育て支援では、小規模保育所などが認可保育施設に移行するための支援、児童養護施設の受け入れ人数の拡大などが盛り込まれる見通しだ。医療・介護サービスの提供方法の見直しに関しては、発症直後の急性期からリハビリが必要な回復期まで、病院の役割分担を進めるほか、医療機関と介護施設の連携強化に向けた支援を行う。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131004-00001583-yom-pol

(*赤字=筆者)


きっと、普通に読んだら、「そうなんだ」といって読み過ごされる文章だと思います。

でも、「子育て支援って誰を、どのように支援することなんだろう?!」という疑問をもって、これを読むと疑問がわきます。

保育所の増設、児童養護施設の受け入れ人数の拡大、さらには、学童保育の充実、保育士養成の強化等々、、、

これらはすべて、親以外の人間による子育ての強化、なんです。

子育て支援というのは、子を育てる親の支援ではないのでしょうか。上のプランでは、子育てに苦しんだり、悩んだりしている人の支援は想定されておらず、「働きたい両親」の家庭の支援=労働支援になってはいないでしょうか。

厚生労働省の子育て支援では、家庭での子育ての支援もきちんと想定されています。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dl/kosodate_sien.pdf

「地域子育て支援拠点事業」と言われているものの中には、「相談等機能」が想定されており、子育てに悩む人への相談を念頭に置いたプランが立てられています。

それは、子ども・子育て支援新制度の説明にも示されています。

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/pdf/leaflet.pdf

「すべての家庭を対象に、親子が交流できる拠点を増やすなど、地域のニーズに応じた多様な子育て支援を充実させるため、財政支援を強化します」

「子育ての相談」がここでも掲げられています。

しかし、現与党である自民党は、厚生労働省が掲げるような複合的で、包括的な子育て支援ヴィジョンと異なり、かなり偏った子育て支援イメージをもっています。

以下、首相官邸ホームページより。


Q 2017(平成29)年度までに、どのように保育の受け皿を約40万人分確保するのですか?

A 「待機児童解消加速化プラン」により、「緊急集中取組期間」(2013・2014(平成25・26)年度)で、約20万人分の保育を集中的に整備できるよう、以下の5つを柱として取り組んでいきます。

賃貸方式や国有地も活用した保育所整備(施設整備費を積み増して保育所整備を推進)
保育の量拡大を支える保育士確保 (保育士資格保有者の復帰促進、保育士の処遇改善、認可外保育施設で働く無資格者の資格取得支援など)
小規模保育事業など新制度の先取り(小規模保育、幼稚園での長時間預かり保育への支援など)
認可を目指す認可外保育施設への支援(認可保育所への計画的な移行への支援など)
事業所内保育施設への支援(助成要件の緩和)

また、「取組加速期間」(2015~17(平成27~29)年度)で、上記と合わせて、約40万人分の保育の受け皿を確保できるよう、子ども・子育て支援新制度により、以下の施策を中心に取り組んでいきます。

幼児期の学校教育・保育・子育て支援について共通の仕組みを構築
小規模保育等の新設 (待機児童が集中する0~2歳に対応する小規模保育の制度化など)
認定こども園制度の改善(認可、指導監督の一本化など)
利用者支援等の市町村事業化(利用者が保育施設・事業を利用しやすいよう、地域の保育情報を紹介する「利用者支援事業」など)

(*赤字=筆者)

http://www.kantei.go.jp/jp/headline/syakaihosyou2013.html#c3-2


上の首相官邸HPの中身を見ると、厚生労働省が描く子育てプランよりも極めて偏りのあるプランとなっていることが分かると思います。

この計画を立案した政府与党の人は、子育て支援の中身を深く理解しているとは思えません。上の赤字の部分を見ると分かると思いますが、そのすべてが、子育ての外注化、あるいは子どもを親から切り離すためのプランです。これでは、子育て支援ではなく、子離し支援ではないでしょうか?!

子育てを支援するのではなく、子育てを親にさせないプランになっている、とも言えましょう。

もちろん保育機能の充実は大切なことです。(根本的に「働きたい(want to)」と思う人はおらず、必要に迫られて(お金がほしくてやむなく)働かねば、という人が圧倒なはずです。そういう人のための支援は確かに大切です。

が、しかし、その一方で、子育てに苦しみ、悩み、不安をかかえ、虐待の一歩手前まで来ている人や、孤立している母子はたくさんいるわけで、そういう人のためにも、社会的に何かをしなければならないわけです。

例えば、児童相談所の機能強化のためにお金を使うことはできるはずです。ドイツでは、児童相談所が地域子育て支援のための公的資金を自由に使うことができるというのです。児童相談所は、まさに子育てに関する様々な相談を専門的・公的に行う場所です。

日本においても、全国津々浦々に児童相談所が設置されていますが、児童相談所の発信力や認知度はとてもよいとは言えません。知っている人すら少ないわけです。最近、漫画で児童相談所を舞台とした作品がありますが、それにしても、知られなさすぎます。子育て支援を普通に考えれば、児童相談所の強化は必須だと思います。

やれることはたくさんあります。24時間の電話相談、緊急支援スタッフ(すぐに相談にかけつけられる人)の配置、パンフレット等による社会的啓蒙(あるいは情報サービス)… これらの徹底のための予算がやはり必要です。

特にパンフレットや宣伝のための費用は必要ではないでしょうか。すべての子育て家庭に、「何かあれば、児童相談所へ!」というメッセージを発信する必要があります。もちろん児童相談所が何なのかをもっと簡素に丁寧に示す必要もあります。

子育て支援に用いる3000億円のうち、少しはこういう方向にもお金を流してもらいたい、と思うのです。

3000億円のすべてが、保育園等の設置=箱モノのために使われると思うと、僕はぞっとしてきます。

(箱モノの設置となると、そのお金はその建設会社にお金が流れます。保育士を増やすお金はあっても、今働いている人の給与は上がりません。子育てに苦しむ親(特に母親)にももちろんお金は流れません。新たに何かをするだけでなく、今ある子育て支援そのものを強化させることこそ、最もすべきことなんではないでしょうか)

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