ブレーメンにも、赤ちゃんポストがありました。
設置場所は、「St.Joseph-Stift病院」です。
ブレーメン中央駅から路面電車1,1e,3,4で、7分くらいです。
地元のローカルな民間総合病院という感じでした。
でも、結構大きな病院でした。
路面電車の駅の名前も、ずばり「St.-Joseph-Stift駅」です。
下車した人はみんな、病院に向かって歩いていっていました。
さて。
赤ちゃんポストはどこにあるんだろう?!
大きな病院だし、探すのが大変だろうな、、、
と思いつつ、病院の敷地に入ります。
まず、目に入ってくるが、この古くて立派な建物。
レンガでできた、歴史的建造物。
病院の敷地すぐのところにあるこの建物こそ、この病院で最も古い施設なんだとか。
1878年~1880年頃に、最初のカトリック病院として建てられたものらしいです。
しかも、Vereinだったんですね。
1880年頃の病院って、いったいどんな病院だったんだろう!?
想像もつきませんね。
いずれにせよ、この病院はカトリック系の病院ということになります。
***
さぁ、
どこに赤ちゃんポストはあるんだ?!
気合い入れて探すぞ!
と、思った矢先、、、、
この建物のすぐわきに、、、
あれ!?
あれれ?!
Babykörbchen?!
あ、
赤ちゃんポスト、あった…(苦笑)
一応、赤ちゃんポストの研究をやっている人間なので、すぐにわかりました。
Babykörbchenは、Babyklappeの別称なんですよね。
こんなにすぐに見つかるとは、、、
路面電車を降りたら、1分で到着です。
いや、30秒か。。。
こちらが、ブレーメンの赤ちゃんポストの正面。
Klappe(扉)があり、その横に、「お母さん宛のパンフレット」があります。
それとは別に、「お母さんへの手紙」も扉の内側にあるそうです。
こちらが、Klappe(Zoom up)。
「理由なく開けないください(Bitte nicht unbefugt öffen)」
と書いてあります。
2002年に設置されているので、少し歴史を感じる扉です。
もう13年ですからね。
ベッドはこんな感じです。
意外とシンプル、というか。。。
***
こちらの赤ちゃんポストは、病院内にあるSozialdienstと連動しています。
主にソーシャルワーカーや社会福祉教育士(社会教育士)が在中しています。
このSozialdienstという概念、訳すのがとても難しいんです。
「社会福祉サービス局」?
「(非政府系の)福祉事務所」?
あるいは、
「福祉事務所×ソーシャルワーク課」?
病院内に設置された社会福祉の専門部局なんですけど、
病院の「傘下」ではないっていうか。
・・・
日本にない制度・システムになっています。
その隣には、なんと「両親学校」がありました。
Elternschule=Parent school。
助産師の先生が妊婦や新しいお母さん/お父さん向けに教育活動を行っている施設です。
日本だと、「親学校」とかいうと、なんか、悪いイメージがありますが、、、
(親教育を言い出すのが、だいたい保守派のおっさん連中ばかりなので、、、)
こっちでは、病院内に、新米の親/妊婦向けのあらゆる講座を設けていて、
いつでも、相談やアドバイスを受けることができます。
日本だと、地方自治体がなんとなくやっている、しかも、たまにしかやっていない講座しかないですよね。
(月一で、しかも平日の昼間、という、、、汗)
日本の病院でも、こういうのをやっている病院はありますけどね。
でも、名前は、「母親学校」。
お母さん向けなんですよね。
お父さんもお母さんも「親」なのに、、、
ドイツがうらやましい限りです。
Elternschule@Bremenについてはこちらをチェック!
妊娠~出産~育児を、総合的にケアし、教育するのが目的だそうです。
それが、病院内にあるんだから、驚きですよね。
僕がいる最中も、一人お母さんが赤ちゃんを連れてやってきていました。
「育児に関するちょっとした相談をしに来た」、と言っていました。
写真奥に見えるのが、路面電車の駅です。
で、右手に見える青い看板が赤ちゃんポスト/両親学校です。
ホント、近いんです。
さらに進むと、メインエントランスがあります。
なかなか立派でした。
こちらが、正面玄関です。
中に入ると、受付があり、この建物の3階に、Sozialdienstが入っています。
赤ちゃんポストからは歩いて1分程度です。
Sozialdienstには、数名のスタッフがいました。
色々とお話を伺いましたが、それについてはまた別の場所で書きたいと思います。
病院と教会(カトリック/プロテスタント)と助産師が連携して運営している赤ちゃんポストでした。
なお、現在では、「合法」の「内密出産」も行っています。
すでに数件、行っているんですって。
その先に行くと、静かな住宅街。
ブレーメンの普通の日常生活がここにありました。
これまで、色々な場所の赤ちゃんポストを見てきました。
ブレーメンにも、同じように、静かに赤ちゃんポストが存在していました。
ブレーメンといえば、日本人にも馴染みのあるドイツの町ですけど、
そんなブレーメンでも、赤ちゃんポストを必要とする女性はいるんです。
いや。
世界中、男女がいる限り、赤ちゃんポストが必要となる人はいるんです。
たとえもし、数として本当にごく少数であっても、
そのごくわずかな少数の人のために、待ち続けているのが赤ちゃんポストなのかな、と。
選択肢は増えて、内密出産は合法化されましたが、、、
それでも、赤ちゃんポストを必要とする人はきっといるんです。
人間って、、、
そんな僕らが描くような綺麗な存在じゃない。
もっとぐちゃぐちゃっとしていて。
自分でも、どうしてこんなことをするんだろうってことをしちゃってて。
そういう存在なんだろうな、と思います。
日本にはまだ一つしか赤ちゃんポストはないけれど、
その一つの赤ちゃんポストに120人以上の赤ちゃんが預けられています。
とんでもないニーズ(預け入れ数)です。
でも、
行政や政府も含め、この問題には、本当に深くコミットしてくれません。
世論もマスコミも、なかなか真剣にこの問題には向き合いません。
(一部で頑張っている人はいるんですけどね)
本気で、子育てを支援しようというなら、
ただ「建物(保育園等)」を作らせるだけじゃなくて、
もっと、一人一人の親に届くような支援を、
そして、
もっと、緊急下の女性に届くような支援を行ってほしいものです。
***
ドイツも、一度は(ドイツ倫理評議会によって)廃止しようとする声も上がりました。
が、現場の「プロ」の支援者たちが、それにNoを突き付けました。
支援者たちの水面下での努力というか、
支援者たちのプライドというか、
支援者たちの熱い思いが、赤ちゃんポスト廃止を阻止したんだと思います。
このブレーメンの赤ちゃんポストも、絶対に廃止しないという信念をもっていました。
僕もあきらめないで、自分のやれる範囲で、この問題にしぶとく向き合っていきたい、
そう思いました。
それと同時に、
僕だけじゃダメで、もっともっとこの問題に関心をもつ人とつながっていかなければ、と。
そう思いました。
力のない、行き場のない、絶望的な状況の母子を救えないで、
先進国なんて、言えたもんじゃないです。
たしかに日本は経済的には(ある一面で)恵まれていますが、
「命」、「生命」、「生活」という点では、まだまだすべきことはあります。
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