LA VIE EN ROSE、BASILISKの二枚、
そして、LAZZAROthe price of being a rose is loneliness、
と合計4枚のアルバムをリリースしてきたデランジェ、、、
と、書くとなんてことないんだけど、
その間がとにかくあいているデランジェ。
(ま、いまさら書くことではないが・・・)
だが、今回のアルバムは、ある意味すごく重要な一枚となる。
1990年、デランジェは彗星の如くにシーンを駆け抜けて、
解散していった。あっという間だった。
LA VIE EN ROSEは激しくてCOOLでキャッチーなアルバムだった。
それに対して、BASILISKは難解でダークでひねったアルバムだった。
それから18年の時が過ぎ、奇跡的な復活を経て、
LAZZAROをリリースした。
このLAZZAROはLA VIE EN ROSEのような激しさのあるアルバムだった。
そして、印象深いメロディー、シンプルでエッジのきいたリフ。
全体的には非常にポップで聴きやすかった。
それに対して、前作のthe price of being a rose is lonelinessは、
非常に難解でダークで凝りに凝った一枚になっていた。
どことなく、19年前の変化と同じ変化を繰り返しているように感じるのだ。
激しくてキャッチ―な一枚目、そしてダークでひねった二枚目。
だから、今回のアルバムはデランジェにとっては、
新たな世界への突入を意味しているのだ。
19年前に止まった時計が再び動き出すとしたら、
まさに今回のアルバム、ということになるのだ。
きっとメンバーにとっても、今作は「産みの苦しみ」の一枚だっただろう。
前作まではなんとなくの「青写真」があったはずだ。
だが、今作には、その青写真は存在しない。
完ぺきな新しいオリジナル作品となるのだ。
だが、本作全体の「匂い」は、これまでの匂いと変わらなかった。
デランジェという「世界観」がまさに完成されたようなアルバムだった。
「淫らな誘惑」というコンセプトをそのまま音で表しているようだ。
そう、だから、今回のアルバムは「D'ERLANGER」なのだ。
まさに、聴き手であるわれわれに「淫らな誘惑」をしてくる作品となっている。
1枚目のもつ激しさとキャッチーさ、
2枚目のもつ難解さとダークさ、
この二面性をうまく合わせて、
デランジェという世界観を最大限に示したアルバムになっていた。
1 11loss
これぞ、デランジェのSE!というようなSE曲。なんとも言えない退廃感が出ていて、クールでかっこいい。マニアックに言えば、初期DIE IN CRIESのNothingness to Revolutionに通じるSE曲。あるいはOptic Neaveか(!?) 作曲を見るとなんとそこには・・・!?
2 デラシネ
今のデランジェの究極をそのまま音にしたようなサウンド。SADISTIC EMOTIONのようなイントロが強烈でかっこいい。AメロはLAZZAROとthe price of being a rose is lonelinessのちょうど間くらいのテイストのメロ。ちょっとセクシーでダーク、だけどものすごくポップでメランコリック。サビのDarln'...と連呼するところでは、もうノックダウン。Kyoのセクシーさと情熱がガツンと伝わってくる。そして、サビ後のCメロ(?)がなかなかこだわっていて面白い。サイファギターに注目です! あと、裏で流れているシンセ音がなんとも言えない情緒感を出している。文句なしの一曲であります!アウトロもやっぱりSADISTIC... そして、最後の××××・・・
3 Masquerade
この曲は一見地味なんだけど、すごく味のある曲だ。SEELAさん大活躍です。ベースが暴れまくり。うねりまくり。SEELAのベースプレイの安定感は本当に素晴らしい。この曲はもう熟達したバンドサウンドそのものだ。楽曲的には前作の大人のエロさ、セクシーさが存分に出ている。まさかデランジェでKyoが「シャンパンの泡が…」とかって歌うことになるとは・・・ あと歌詞に関して言えば、本当に大人の関係を歌っているような・・・ なんか40代の男性の歌には思えない。けど、こういう「嘘」に溺れるのはやっぱ40代の男性が多いのかしら?!・・・(汗)
4 Angelic Poetry
既にYouTubeで公開されていた話題曲。これまでのデランジェではありえないくらいにキャッチーな曲になっている。80年代ROCKの王道をゆくポップなロック。彼らのこれまでのキャリア全部が出ているような曲。デランジェのみならず、DIE IN CRIESやBODYやCRAZEまでもを感じさせる極上ソング。これ、ライブで聴きたいなぁ。
5 13 段目の陶酔
ここでまったりとした曲。こういうまったりとした曲の場合、メロディーがすごく単調でチープになっちゃうのがこれまでのデランジェだったんだけど、この曲はメロディーもとても心地よい。なんか、CRAZEで聴いたことのあるメロディーのような・・・ ま、それはそれとして。イントロ、サビのコード進行は僕のa boring girlと似てる!!(Am-G-G-Amみたいな) あと、裏で響いているキーボードの音がすごく切なくて心地よい。あと、ドラムのフィルとかはさすがで、これを聞いて勉強させてもらいます!!TETSUドラムはやっぱり素晴らしいです。タイトルを見てBUCK-TICKを思い浮かべてしまうのは僕だけ!?
6 Your Funeral My Trial
かつてのファンなら誰でも知ってる名曲中の名曲。音源としては、LAST LIVEのLIVE CDに収録されていた、、、ような(汗)。でも、全然雰囲気が違うんですけど。。。ヘビーさだけじゃない魅力がサウンドのあちこちにあって、聴いていて面白い。ギターの音や入れ方もさすが!神!っていう感じだ。歌詞もかつてと違うような、似てるような。サビの部分も変わったんじゃないかな~。定かじゃないけど。でも、こうやって改めて20年以上前の曲を「新曲」で聴くと、なんか変な気分になるなぁ。今の若い子たちって、こういう曲を聴くとどう思うんだろうな~…
7 Singe et Insecte
これもまたなんとも言えない・・・ キャッチーな一曲になっております。So...とかとは違うテイストで、陰りのあまり感じないポップさがこの曲にはある。KyoソロやCRAZEの要素もちらりほらりと見られる感じ。歌詞もそれほど退廃感はない。「美し過ぎる世界は眩し過ぎて大キライだから」って。大キライって言わないで~みたいな。これもまた新たなデランジェワールドと理解しておこう。4とこの7は新たなデランジェの要素となりそうな予感。。。もっとキャッチーな曲があってもいいかも!? そう言えば、ララバイってこの曲くらいあかぬけてたよな~~・・・と。
8 Rose of Thanatos
本作の中で一番気に行った曲がこれ。タナトスの薔薇・・・ カラーとしては前々作のLAZZAROに近いテイストで、カルメン調というか、スペイン風というか。でも、柘榴の進化バージョンとも言えなくもないかな。いずれにしても、今のデランジェの王道をゆくカッコいい曲。Bメロ~サビの展開は結構激しくて、二転三転する感じ。きっとこれまでのデランジェのファンなら気に入るであろう名曲に! 僕個人的にはAメロのKyoの歌が新鮮でカッコ良かったわ~~ ただ歌詞の内容は、結構大変な感じ。「タナトスの薔薇を咲かせて 愛を夜に探す」って。愛を夜に探しちゃダメ!!って思ってしまう僕はもうダメ?
9 LOVE/HATE
復活後のデランジェの作品の中には、よく分からない曲がぽつぽつ入る。なんともえいない感じの曲が… 前作はその傾向が強くて、わけのわからない曲が何曲か収録されていた。ただそれはBASILISKの頃から見られた傾向と言えばそうかなとも思う。激しさとひねくれ感とちょっとした悲しみを感じるけだるい曲だ。タイトルが示すとおり、愛と憎しみの葛藤を描いた作品。「貴女の顔は好き 心は嫌い」というのがなんとも。。。歌詞と曲が見事に一致しているというか、美しい対極を描いている。それは、収録時間7分を超えていることからも分かるだろう。演奏にも注目だ!
10 EASY MAKE,EASY MARK
9からこう来るか!!みたいなすごい変化を感じる。本作で一番激しい曲と言っていいのかな。ま、an aphrodisiacに近い存在かな。この曲のデモテープも聴いたことがあるが、インディーズの頃の名曲ですね。福井さん時代の曲で、ライブハウスで大爆発できる必殺技曲。こうやって改めて収録された音を聴いてみると、サイファのギターリフがとんでもなく先鋭的だったことが分かる。80年代メタルと90年代以降のサウンドが融合しつつある原型をこの曲に見ることができるだろう。あと、やっぱりホッピーさんのシンセがデランジェの楽曲の良さを俄然引き出している。今作へのみんなの意気込みがひしひしと伝わってくる。
11 Love me to DEATH
デランジェの最後の曲って意外と地味、というか、他のバンドと違ってあんまりがちっと終わらせないところがある。最後の最後にSEが入るところも20年前からのこだわり。DIE IN CRIESだと最後の曲って完ぺきに「泣き」、あるいは「別れ」を感じさせる極上ロックだった。デランジェはなんかいつも謎が残る終わり方なのだ。この曲も、ちっとも「終わり」を感じない曲というか… この曲、普通なら最後の二曲目でしょ!みたいな。。。歌詞はなんか・・・ ちっともよくわからない(苦笑) デランジェらしいといえばデランジェらしいけど、歌詞がよく分からないところは20年前と本当に一緒!これ、共感できる人いるのかな~ 「Seriousな月影が愛してる」って、いったいどんな月影なんだ?!?!みたいな。。。 でも、シリアスさと愛が重なるところにKyoの美学を感じるんだな。「愛」と「性欲」、その狭間で揺れる人間の真実。。。
12 LOVE me to Death (In the Air)
美しいピアノの旋律にただ耳をすませたい。11のサビのメロをピアノ・シンセでアレンジしたもの。せっかくならバラードバージョン作ればいいのに! そう言えば、最近のディルアングレイは事あるごとに超バラードバージョンの音源を出してくるが、そのバラードバージョンにこだわっていたのもデランジェだった。ララバイのバラードバージョンは僕にとっては神でした。
【総評】
前作the price of being a rose is lonelinessを聴いた時、僕はすぐにBASILISKと重ね合わせてしまった。今思えば重なるわけもないのに、LAZZAROからの変化をかつてのデランジェにあてはめてしまったのだ。だから、デランジェを聴くのが恐くなった。また同じように解散してしまうのではないか?と。19年前のクリスマスに一枚のカードが届き、そこでデランジェの解散が知らされた。15,6歳だった僕はただただ途方に暮れて、かなりショックを受けたのを覚えている。大好きだったから。
だから、また19年前と同じように、the price of being a rose is lonelinessを出してしばらくしたら解散するんじゃないか、という恐怖がどこかにあった。これまで色んなバンドを応援しては、いつも解散してしまい、さみしい気持ちを感じ続けてきた。デランジェとジキルは僕の永遠のスターであり、この二バンドの解散は恋人との別れ以上の悲しさがあるし、今もこうして「未練」を引きずっていたりする。
だが、そんな懸念は、この作品を聴いて、まったくの思い込みであったと気づかされた。デランジェは、確実に今を生きている。そして、新たなデランジェの扉を開こうとしている。かつてのどのバンドにも似ていない唯一無二のデランジェサウンドを。今作はSEを除けば、すべてCIPHERの曲となっている。たった一人の人間なのに、色んな感情、色んなテイストをもった曲がずらりと並んでいる。CIPHERという人間の多様性が見事に反映されたアルバムなのだ。また、Kyoの言語世界の独自性がフルに発揮されている。
デランジェって、最初から大人のバンドだったのだ。この年になって、ようやくデランジェはデランジェらしい音楽を奏でることができるようになったのだ。夜の世界、あるいは、不倫の世界、許されない関係の世界、秘話の情事、わけありの関係、逃れられない現実、悪夢に近い人間間の情緒関係etc。きっとそれって、(今になってみると)CIPHER自身の生き方に関係しているんだろうなって(邪念ながら)推測してしまう。いつかどこかでCIPHERは「バンドがなかったらきっと夜の世界で裏の仕事をしていただろう」って言ってた気がする。
デランジェは、カッコよさとかじゃなくて、生き方としてCIPHERのバンドだった。彼は十分にカッコいいし、センスもいいし、楽曲も突出している。だけど、それ以上に、CIPHERの人生観や、あるいは厭世感や悲壮感が反映されることでこれだけの魅力が発揮されることになったのだろう。ただ、それだけではない。本作のAngelic Poetryのような「優しさ」に包まれた歌もある。ただ、太宰治の「走れメロス」のような位置づけだとしたら、この曲自体が「皮肉」になってしまうんだろうけど・・・
改めて、CIPHERという人間の魅力について考えてみたくなった。なぜ彼はこれほどに人を引き付けるのか。なぜ彼はここまで人を魅了させるのか。人を引き付ける力という点では、他の誰をもしのぐだろう。マジョリティー的な意味でのポピュラリティーはさすがに今はそれほど凄くはないが、CIPHER信者はどこまでも熱狂的だ。彼のギターを心待ちしている人は今もなお増殖中、と言っていいだろう。若い子たちでも、彼の魅力は知っている。
本作のタイトルがバンド名となった意味はこの作品の中にある。